「すぐ泣く」「すぐ怒る」——“情緒が不安定”な子の心の中と関わり方

こんにちは。
子どもの感情の起伏に、こんなふうに感じたことはありませんか?
- 「すぐ泣いてしまって、なかなか切り替えられない」
- 「ちょっとしたことで怒る、叩く、大声を出す」
- 「気分の浮き沈みが激しくて、どう対応していいかわからない…」
こうした“情緒の不安定さ”は、多くの保護者の悩みの一つです。
けれども、ただ“わがまま”だからでも、“親の甘やかし”でもありません。
その背景には、脳の発達や感覚、愛着、経験の積み重ねなど、さまざまな要因が関係しています。
今回は、「どうしてそんなに泣いてしまうの?」「なぜ怒りっぽいの?」という疑問に、専門的な視点からやさしくお答えし、家庭での支援方法をお伝えします。
第1章 情緒が不安定とはどういうこと?
“情緒”とは、気持ちの揺れ動きや感情の動きのことです。
子どもは、まだこの“気持ち”をうまく理解したり、言葉にしたり、自分で調整する力が育ちきっていません。
そのため、自分の感情に振り回されたような行動が出てしまうのです。
✅ よく見られる行動
- すぐに泣く、怒る、逃げる
- 思い通りにならないと物を投げる
- 気持ちを伝えられず、パニックのようになる
- 感情の切り替えに時間がかかる
これらは“問題行動”ではなく、まだ育っていない力を表すサインです。
第2章 感情のコントロールには「脳の成熟」が関係
子どもが感情を調整できるようになるには、脳の中でも**前頭前野(ぜんとうぜんや)**と呼ばれる部分の発達が必要です。
この前頭前野は、感情や行動をコントロールする「司令塔」。
しかし乳幼児期はまだ未熟なため、感じたことをそのまま行動に出す傾向があります。
また、注意力や記憶をつかさどるワーキングメモリも未発達なため、思い出す・待つ・我慢することが難しいのです。
第3章 「すぐ泣く・怒る」の背景にある3つの要因
(1)感覚の過敏さ・鈍さ
音、光、匂い、人の声…外からの刺激に敏感な子どもは、不快感やストレスが大きく、それが感情に直結します。
→ 例:「音が大きくてパニックに」「服のチクチクで不機嫌に」
(2)言語による表現の未熟さ
「どうしたの?」と聞いても黙ったまま。
それは“言いたくない”のではなく、“どう言えばいいかわからない”という状態かもしれません。
→ 自分の気持ちを言葉で表せないと、行動で訴える(泣く・怒る・叫ぶ)という形になります。
(3)安心感の不足・不安の強さ
日々の不安、環境の変化、周囲との関係性などが「安心のベース」を揺るがすと、感情の波が大きくなりやすくなります。
→ 「次に何が起こるかわからない」「叱られるかも」などの見通しのなさが、気持ちを不安定にさせるのです。
第4章 家庭でできる「情緒の安定」を育む5つの関わり
(1)“気持ちの言葉”を代弁する
子どもが泣いたり怒ったりしているとき、「泣かないの!」と抑えるのではなく、
- 「悲しかったんだね」
- 「イヤだったんだよね」
- 「怒ってもいいんだよ。でも叩かないでね」
と、気持ちに名前をつけてあげることが大切です。
これを繰り返すことで、子どもは「これは“悲しい”って気持ちなんだ」と少しずつ理解していきます。
(2)落ち着ける「避難場所」をつくる
情緒が高ぶったときに安心してクールダウンできるスペース(お気に入りの椅子、ぬいぐるみ、静かな部屋)をつくっておくと、パニックになりにくくなります。
→ 大人が「落ち着いてから話そうね」と、選択肢として用意しておくことが大切です。
(3)スケジュール・予告で「見通し」を持たせる
「何が起きるかわからない」が不安を強めるので、1日の流れを見える形にしておくと、情緒の安定につながります。
→ 絵カード・タイマー・時計・ホワイトボードなどが有効です。
(4)“できたこと”を小さくても具体的にほめる
- 「怒らなかったね」ではなく
- 「おもちゃ貸してあげられたね」「“いや”って言えたね」
というように、できた行動を具体的に言葉にして伝えることで、情緒のコントロールが“よいこと”として実感できます。
(5)親も“気持ちを整える”練習を
子どもの爆発に向き合うのは、大人も本当にエネルギーが必要です。
「落ち着こう」「冷静に」なんてムリな日もあります。
でも、「深呼吸してから話す」「一呼吸おいてから声をかける」など、大人がまず“感情のモデル”になることが、子どもの安定に大きくつながります。
第5章 それでも困ったら、支援の手を借りてもいい
もし、
- 毎日のように泣いたり怒ったりして生活に支障がある
- 園でもパニックやトラブルが多い
- 家族関係が疲弊してしまっている
という状況であれば、児童発達支援や療育センター、心理士・医師などの専門家に相談してみることをおすすめします。
情緒のコントロール力は、“訓練”や“関わり”で育てられる力です。
必要なときに支援を受けることは、子どものためにも、家族のためにも大切な選択です。
最後に:情緒の不安定さは「育ちの途中」にあるだけ
子どものすぐ泣く、すぐ怒るという行動に向き合っていると、
「またか…」「こっちが泣きたいよ…」と心が折れそうになることもあるかもしれません。
でも、情緒の不安定さは、“まだ整える力が育ちきっていない”ということの裏返しです。
- 気持ちを感じる力
- 表現する力
- コントロールする力
——その全部が、少しずつ、子どもの中で育っていきます。
大人が怒るでも放置するでもなく、
「悲しいね」「イヤだったね」「でも叩かないで言葉で伝えようね」と、
子どもの気持ちに名前をつけ、行動の切り替えを支える——その積み重ねが、情緒の土台になります。
子どもが“自分の気持ちと上手に付き合えるようになる日”は、必ずやってきます。
焦らず、根気よく、親も一緒に育っていけるといいですね。