「工作や絵が苦手…」——手先が不器用な子どもへの支援の考え方

こんにちは。
保育園や幼稚園、小学校などでよく見られる活動のひとつが、工作やお絵かきです。
でも、子どもの中には、
- はさみを使うのを嫌がる
- クレヨンを強く握りすぎて手が真っ黒
- 折り紙や塗り絵が極端に苦手
- 指示された通りに作業を進められない
というように、手先を使った活動が極端に苦手に見える子がいます。
保護者としては、「うちの子、不器用すぎるかも…」「他の子と比べてできていない」と心配になることもあるかもしれません。
でも実は、「手先が不器用に見える」のは、いくつかの発達的な要因が重なっている可能性もあるのです。
今回は、そうした子どもたちの“苦手”の背景と、家庭でできる支援の方法を、やさしく専門的に解説します。
第1章 「手先が不器用」とはどんな状態?
まず、「不器用さ」と一言でいっても、以下のような様々な特性が関わっている可能性があります。
✅ 手先の不器用さの背景にある発達的な力
- 微細運動(指先の筋力・調整力)
→ 鉛筆やクレヨンを上手に持つ、はさみでまっすぐ切る、などの指先操作の力。 - 視覚認知(見たものを正しく認識する力)
→ 形や位置関係を把握する、枠内に塗る、同じ形をまねて描く、などに関わる。 - 空間認識・左右の理解
→ 折り紙を「半分に折る」「角と角を合わせる」などの課題で重要。 - 姿勢保持・体幹の安定
→ 姿勢が崩れると、机に向かうこと自体が疲れやすくなる。 - 注意力・集中力・聴覚理解
→ 指示を覚えて作業を進める力にも影響する。
第2章 なぜ「できない」ように見えるのか?
(1)発達の段階にズレがあるだけかも
→ まわりの子と比べて「できていない」と見えるときも、その子の発達のタイミングが“今そこ”じゃないだけということがあります。
(2)できない経験が増えると、“やりたくない”になる
→ 一度「難しい」「失敗した」「叱られた」という記憶が残ると、苦手意識が強まり、避けるようになります。
(3)「丁寧に」が分からない
→ 大人にとって当たり前の「ゆっくり」「丁寧に」「順番に」は、子どもにとっては抽象的すぎて伝わっていないこともあります。
(4)完成のイメージがもてない
→ 折り紙や工作など、「何を作るか」「どんな形になるのか」が分からないまま進めていると、混乱や不安の元になります。
第3章 家庭でできる「手先の不器用さ」への支援
(1)「上手さ」よりも「楽しさ」に焦点をあてる
上手に塗れなくても、はみ出しても、「よくがんばったね」「色づかいきれいだね」と努力や工夫に目を向けてあげることが第一です。
(2)“遊びの中で”手先を使う経験を増やす
✅ 例:
- 粘土やスライム:握る・ちぎる・丸めるなどの指先運動
- 洗濯バサミ遊び:指先の力の練習に
- 小さなシール貼り:集中力と視覚・指先協調の練習
- ビーズ通し・ひも通し:両手を使う協調動作に
- おはじきやトング遊び:摘む・移すなどの繰り返し
→ 「遊びの中で楽しく手先を使うこと」が、意欲を高めます。
(3)作業環境を整える
- 足がしっかり床につくイス
- 机の高さと姿勢が合っているか
- 材料がごちゃごちゃしていないか
→ 「できない」の原因が、実は環境にあることも少なくありません。
(4)見通しが持てるようにする
- 作業前に完成形の見本を見せる
- 1つの動作ずつ、順番に説明する
- 必要な材料を先に用意する
→ 「どこからどう始めて、どう終わるのか」が分かると、子どもは安心して取り組めます。
(5)手の発達を助ける“体の土台”も大切に
姿勢が不安定な子は、書く・切るといった細かい作業がしづらくなります。
ブランコ・平均台・雑巾がけなど、「全身を使う遊び」も取り入れて、体幹の安定やバランス感覚を育てることが間接的に“手の動き”を支えます。
第4章 支援が必要なサインとは?
以下のような特徴が強く見られる場合には、専門的な評価や支援が役立つことがあります。
- 年齢に比べて極端に手先が不器用に見える
- お絵かきや書字、はさみ操作などを極端に嫌がる
- 簡単な折り紙や工作を“見本どおり”にできない
- 生活面(食事・ボタン・靴の着脱など)も不器用さが目立つ
- 集中できる時間が極端に短い
→ 児童発達支援などの利用で「何に困っていて、どう支援するか」を明確にすることができます。
最後に:「苦手」なことを、少しずつ「やってみよう」に変えるために
工作やお絵かきがうまくいかないとき、
「どうしてできないの?」「みんなできてるのに…」とつい言いたくなってしまうこともあるかもしれません。
でも、その子なりの発達のペースと理由があることを知ることで、見方も関わり方も変わってきます。
- 手先の不器用さには、身体や認知の要因がある
- 楽しい経験の積み重ねが、意欲と自信につながる
- 上手にできることより、「やってみよう」が育つことが大切
「できた」「できなかった」ではなく、
“一緒にやってみたね”“今日はここまでがんばったね”という経験が、子どもを前に進めてくれます。
焦らず、比べず、
その子に合った“手の育ち”を応援していきましょう。