「えんぴつを嫌がる」——書くことが苦手な子の背景と支援

こんにちは。
お子さんが年中・年長さん、あるいは小学校に近づいてくると、「ひらがな」や「数字」にふれる機会が増えてきます。
でも保護者の方からは、こんな声をよく聞きます。
- 「うちの子、えんぴつを持つのを嫌がるんです…」
- 「文字を書かせようとすると、ふてくされてやめてしまう」
- 「ひらがな練習をしただけで疲れて寝てしまった」
「そろそろ練習しないと」と焦る一方で、本人は全くその気がない。
「発達が遅れてるのでは?」「学習障害かも?」と不安になる方も多いかもしれません。
でも、「書くのが苦手」な子どもには、いくつかの発達的な背景や、“できない理由”がちゃんとあります。
今回は、“書くことが苦手な子”の見えにくい困りごとを理解し、家庭でできる支援のヒントをお伝えします。
第1章 なぜ「書くこと」が苦手になるの?
「書く」という行為は、実はとても複雑な動作です。
ただ鉛筆を動かして文字を並べるだけでなく、同時にいろいろな力が必要になります。
✅ 書くときに使われる主な力
- 手指の微細運動(鉛筆を適切な力で持ち、コントロールする)
- 視覚認知(見た文字の形を記憶し、再現する)
- 姿勢保持・体幹の安定(机に向かい続ける安定性)
- 空間認識力(文字のバランス・間隔・上下の位置)
- 注意・集中力(作業に取り組み、続ける力)
これらのどれかが未熟だったり、バランスが崩れていると、「書くこと」がとても疲れる、難しいものになってしまうのです。
第2章 「書くのがイヤ」になる3つの背景
(1)手がうまく動かない・疲れる
→ 鉛筆を持つだけで指が痛くなったり、力の加減が分からずすぐに線がぐちゃぐちゃになってしまうと、「やりたくない」という気持ちが先立ちます。
(2)自分の書いた字に満足できない
→ 周囲と比べて「きたない」「違う」と言われたり、失敗経験が重なると、「やってもどうせ怒られる」と意欲を失ってしまうことがあります。
(3)じっと座る・集中すること自体が苦手
→ 姿勢保持や注意の持続が難しい場合、数分間でも机に向かうことが苦痛になってしまいます。
第3章 家庭でできる「書く力」サポートの工夫
(1)書字練習の前に、“手を育てる遊び”を
書くことが難しい子には、**「まずは手をしっかり使う経験」**が大切です。
✅ 具体例:
- 粘土あそび(ちぎる・丸める・のばす)
- 洗濯ばさみ遊び(つまむ力)
- ひも通しやビーズ遊び(両手の協調動作)
- 小さなブロックや折り紙(指の調整力)
- トングで物をつかむ(手の安定性)
これらの遊びは、“えんぴつを使うための準備運動”のようなものです。
(2)まずは「書かずにできる文字の遊び」から
文字を書くことに抵抗がある子には、いきなり紙と鉛筆を渡すのではなく、遊びの中で文字にふれるところからスタートしましょう。
✅ 例:
- 指で空中に文字を書く「空書き」
- 小麦粉粘土やお風呂クレヨンで書く文字遊び
- 砂や小豆の上に指でなぞって書く
- パズルや磁石文字で遊ぶ
「文字って楽しい」「かっこいい!」という気持ちが芽生えることで、自然と書くことにも向かいやすくなります。
(3)“環境の工夫”で姿勢を安定させよう
正しい姿勢が保てないと、鉛筆もうまく使えません。家庭でも、環境を見直してみましょう。
✅ チェックポイント:
- 足が床につく、または踏み台があるか
- 椅子と机の高さが合っているか
- 背中が丸まりすぎていないか
- 机の上がごちゃごちゃしていないか
→ 小さな違和感が、「書きたくない」気持ちにつながっていることもあります。
(4)「できた!」を積み重ねるスモールステップを
一文字ずつ、短い時間で終われる課題から始めて、成功体験を積みましょう。
✅ 例:
- 「今日は“あ”だけ書いて終わり!」
- 「スタンプ押したところだけなぞる」
- 「お絵かきの中に文字を1つ入れてみよう」
→ 書くことが「苦行」ではなく、「達成感につながる活動」になると、やる気が出てきます。
(5)「書けた字」ではなく、「がんばった過程」をほめる
字の正しさやきれいさではなく、「手を動かした」「姿勢よくがんばった」など、努力した点をしっかりほめてあげましょう。
第4章 “支援が必要な書字困難”とは?
以下のような様子が強く見られる場合は、発達性協調運動障害(DCD)や学習障害(書字障害)などが関係している可能性もあります。
- 書くことが極端に苦手で回避する
- 文字の形や配置が非常に崩れる
- 書くスピードが極端に遅く、疲れやすい
- ひらがな学習が長期にわたって進まない
- 年齢相応の他の能力と比較して、書字だけ著しく弱い
→ 心配なときは、発達相談窓口や児童発達支援、専門機関にご相談ください。
最後に:「書くこと」は、その子なりのペースで育つ力
子どもが「えんぴつを嫌がる」とき、大人はつい「練習させなきゃ」「このままで大丈夫かな」と焦ってしまいます。
でも、「書けない」「書かない」背景には、その子なりの困りごとや感じ方があるのです。
- 小さな手の動かし方を育てる
- 書くことへの“楽しさ”を伝える
- 成功体験を積み重ねる
この3つがそろえば、たとえ時間はかかっても、必ず「書く力」は育っていきます。
焦らず、比べず、
お子さんが「書くことっておもしろいかも」と思える日を、ゆっくり待ってあげましょう。