“ちゃんと聞いて”が届かない…子どもの“聞く力”はどう育つ?

こんにちは。
子育ての中で、こんなやり取りに心当たりはありませんか?
- 「ちゃんと聞いてって言ったでしょ!」
- 「今話してるのに、なんで他のことしてるの?」
- 「何回言っても聞いてない…わざとなの?」
- 「返事はするけど、内容がわかってない気がする…」
“聞く”という行為はとてもシンプルに見えますが、
実は子どもにとってはいくつもの力を同時に使う、高度なスキルです。
今回は、「子どもが話を聞いてくれない…」と感じたときに、
保護者が知っておきたい「聞く力の正体」と、「どう育てていくか」についてお話しします。
第1章 “聞く力”とは何か?
「聞く」には、さまざまな能力が組み合わさっています。
✅ 1.注意を向ける力(注意制御)
→ 話し手に視線を向けたり、声に意識を集中したりする力。
✅ 難しい子の特徴:
- すぐに他の刺激(音・動き)に注意が逸れる
- 名前を呼ばれても気づかない
- 途中で話を遮って別の話を始める
✅ 2.音を処理する力(聴覚処理)
→ 話し手の言葉を耳で聞き取り、それを意味のある単語として脳内で整理する力。
✅ 難しい子の特徴:
- 「あれ?なんて言った?」と聞き返すことが多い
- 長い指示(例:「靴を履いて、カバン持って玄関に来て」)が通らない
- 一部分だけ聞いて、行動がずれる
✅ 3.記憶する力(ワーキングメモリ)
→ 今聞いた内容を一時的に頭に留めて、行動に移す力。
✅ 難しい子の特徴:
- 一つ目は覚えているが、二つ目以降は忘れる
- 「コップをテーブルに置いて、次におもちゃを片づけて」と言われると混乱する
- 長い話を聞いた後に「で、何だったっけ?」となる
✅ 4.言葉を理解する力(言語理解)
→ 聞いた言葉の意味を理解し、正しくイメージする力。
✅ 難しい子の特徴:
- 抽象的な言葉(たとえば「しっかりして」や「ちゃんと」)が通じない
- 状況や表情から文脈を読み取るのが苦手
- 指示は通るが、内容を正しく理解していないことがある
第2章 「聞けない」子どもたちは、どう感じているのか?
子ども自身は、「わざと聞かない」「反抗している」というより、
“聞くための力が未発達”で困っていることがほとんどです。
そのため、こんな思いを抱えている場合があります。
- 「また怒られた…でもどうしたらいいのかわからない」
- 「聞いてたけど、全部覚えられなかった…」
- 「早口すぎて、何を言ってるのか分からなかった」
- 「一度にいろんなことを言われると頭がパンクしそう」
聞く力が弱いことで、「ちゃんとしてない」と誤解され、
失敗体験が積み重なって自己肯定感が下がるという悪循環にもつながります。
第3章 家庭でできる「聞く力」を育てる5つの工夫
(1)視線が合った“タイミング”で話す
→ テレビを見ている最中、何かに夢中なときは、聞く準備が整っていません。
✅ コツ:
- 名前を呼ぶ
- 肩にそっと触れる
- 「今、ちょっといい?」と一言添える
→ 注意の焦点を合わせてから話すだけで、聞き取りやすさは大きく変わります。
(2)一度に伝える情報は“1〜2つ”まで
→ 「〜して、それから〜して、あっあとで〜もね」はNG。
→ 一つ伝えて完了したら、次を伝えるのがポイントです。
✅ 例:
「コップを片づけて」→ 完了を確認 →「じゃあ次は着替えよう」
(3)“短く・具体的に”伝える
→ 子どもにとって「ちゃんと」「しっかり」「いつものように」はとても抽象的。
→ 具体的な言葉に変えることで、理解がスムーズになります。
✅ 例:
「ちゃんと準備して」→「カバンにお弁当を入れて、靴下をはいてね」
「しっかり片づけて」→「おもちゃを箱に入れて、ふたを閉めてね」
(4)イラストやジェスチャーを使う
→ 言葉の理解に不安がある場合、「見える情報」が助けになります。
✅ 例:
- 指さしをしながら話す
- 写真やカードを見せながら話す
- ホワイトボードに予定を描いて話す
→ 複数の感覚を使うことで、聞くことの負荷を下げられます。
(5)「聞けた体験」を言葉にして伝える
→ 子どもは自分が“ちゃんと聞けた”ことに気づいていないことが多いです。
✅ 声かけ例:
- 「今、ちゃんと聞けてたね!」
- 「お話聞いて動けたの、すごいね」
- 「一回でわかってくれて嬉しかったよ」
→ 小さな成功体験の積み重ねが、「聞くって楽しい」「できる」に変わります。
第4章 それでも気になるときは?
「家庭でも園でも、話しかけてもほとんど通らない」
「聞き返しが極端に多く、やりとりが続かない」
「聞いてもすぐ忘れる/間違えることが多すぎる」
こういった場合には、以下のような要因が考えられます。
- 聴覚処理の課題(APD:聴覚情報処理障害など)
- 言語理解の遅れ
- ADHDやASDの特性
- 耳の聞こえそのものの問題(中耳炎の既往など)
→ 小児科、発達外来、療育センター、言語聴覚士などの専門職に相談することで、
適切な支援やアセスメントが受けられます。
最後に:「“聞ける子”は、“理解できて安心できる子”」
「話を聞いてくれない」
「指示を無視してる気がする」
そう思ってしまう場面でも、
実は子どもの心の中では、“一生懸命がんばっている”ことが多いのです。
聞く力は、
注意を向ける → 意味を理解する → 頭にとどめて行動にうつすという、複雑なステップの連続。
だからこそ、できたときは褒めて、できないときは責めるのではなく、
“どうやったら聞きやすいか”を一緒に考える関係が、子どもを伸ばします。
焦らず、比べず、
「今できるところから一緒に育てていこう」
そんな気持ちで、聞く力の芽を育てていきましょう。