“声が大きい・動きが激しい”子への安心できるまなざし

第1章 声が大きい、動きが激しい…それって問題?
子どもが保育園や幼稚園、家庭でもよく「声が大きい」「落ち着きがない」と言われると、親としては戸惑いますよね。
集団で静かに話を聞いている子どもたちの中で、我が子だけがひとりバタバタと動いていたり、大声でしゃべったりしている様子を見ると、「うちの子、大丈夫かな?」と心配になるものです。
「どうしてじっとできないの?」
「また先生に注意されていた…」
「私の育て方が悪いのかもしれない」
そんな思いを抱えて、毎日の保育園や園行事が、楽しみよりもプレッシャーに変わってしまうこともあるかもしれません。
でも、「声が大きい」「動きが激しい」という特徴には、子どもの発達的な背景があることが多く、親の関わり方ひとつで、ぐっと育ちやすさが変わることもあります。
第2章 「静かにできない」には理由がある
1、発達特性との関係
(1)感覚の処理、注意の偏り、情動の未成熟
a、静かにできない子が“悪い子”ではない理由
(a)理解されずに誤解されやすい子どもたち
(1)感覚刺激への反応が強い・または鈍い
「声が大きい」「じっとしていられない」という行動の背景には、感覚過敏・感覚鈍麻などの感覚特性が関わっていることがあります。
たとえば、周囲の音や光に対して鈍感な子は、自分の声の大きさに気づきにくく、自然と声が大きくなってしまいます。反対に、強い感覚刺激を求めて、動きやジャンプを繰り返す子もいます。
(2)ADHDや高活動傾向
注意のコントロールが難しく、「今」に集中しすぎたり、「次」への切り替えができない特性を持つ子は、自分を落ち着かせることが難しい場合があります。
その結果、必要以上に動き回ったり、大きな声を出したりしてしまうのです。
(3)感情の自己調整が未熟
「うれしい!」「楽しい!」という気持ちを、うまく言葉で表現する力がまだ未熟な場合、身体でそれを伝えようとする傾向があります。
つまり、大きな声や動きは、その子なりの“感情表現”のひとつでもあるのです。
第3章 「うるさい」は本当にダメなこと?
「静かにできない子=困った子」ではない
→静けさが“よい子”の条件ではない
大人の社会では、静かに、指示通りに動ける子が“よい子”とされがちです。
でも、それは本当に子どもにとって必要な姿でしょうか?
子どもの本来の姿は、「遊び」「動き」「声」に満ちたものであり、それを通して世界を感じ、学び、表現しています。
動きがあるからこそ見える景色があり、声があるからこそ伝えられる想いがある——
そう考えると、「静かにできない」ことは必ずしもマイナスではなく、その子が持つエネルギーのあらわれなのです。
第4章 家庭でできる4つの工夫
子どもが“自分を調整できる”サポート
→環境、声かけ、遊び、成功体験
(1)環境を整える
静と動の切り替えが苦手な子には、「今は動いていい時間」「今は座る時間」をわかりやすく伝える環境が必要です。
タイマー、視覚カード、色分けされたスペースなどを使い、「今なにをすればいいか」が目でわかる工夫が役立ちます。
(2)声かけの工夫
「静かにしなさい!」と命令形で言うと、子どもは反発しやすくなります。
「ちょっとお話の声にしようか」「今は小さな声で遊ぶ時間だよ」と、どうしてほしいかを具体的に提案する声かけが効果的です。
(3)動ける時間をつくる
たとえば、保育園から帰宅後にすぐ机に向かうのではなく、10分だけお布団の上でジャンプしてもいい時間をつくる。
これだけで、そのあとの静かな時間が保ちやすくなることがあります。
(4)成功体験を積ませる
たとえ3分でも、静かにできたら「がんばってたね!」と伝えてあげましょう。
静かでいられる時間を少しずつ伸ばしていくことが大切です。
第5章 必要に応じて支援を活用する
もしも、「あまりにも落ち着かない」「家庭でも困りごとが続いている」「本人も苦しそう」と感じた場合は、早めに専門機関に相談することをおすすめします。
- 小児科・発達外来
- 療育センター
- 児童発達支援施設
これらの支援は、「困った子を直す場所」ではなく、「困っている子とその家族を支える場所」です。
第6章 最後に:その子の“エネルギー”は社会を生き抜く力になる
「声が大きい」「落ち着きがない」「動きが激しい」——
大人から見ると、ちょっと困ったように感じられるこれらの特徴も、実はその子が一生懸命世界とつながろうとしている証です。
そのエネルギーを、「静かにしなさい」と押さえ込んでしまうだけでなく、
「どうしたらそのエネルギーを生かせるか?」という視点で関わることが、子どもの自己肯定感を守ることにもつながります。
毎日バタバタと走り回っている子どもを見て、「また始まった…」とため息をつきたくなる日もあるかもしれません。
でも、そんなときこそこう思い出してください。
「今日も元気に、自分らしく生きている証なんだな」
「静かじゃないって、悪いことじゃない」
「この子の声と動きが、明日の社会をつくっていく」
あなたのまなざしが、子どもにとっての「安心の基地」となり、明日もまた、自分らしく育つ力をくれるのです。