“じっと見つめる・動かない”子は何を感じている?——感覚鈍麻という特性

第1章 じっと見つめたり動かない子どもに遭遇したとき
公園でぽつんと座って遠くを見続ける我が子、リトミックやお遊戯の時間でまったく動かないその姿…そんな場面に遭遇すると、多くの保護者が「どうしたんだろう」「やる気がないのかな」と戸惑いますよね。特に急に動きを止めたり、人と関わろうとしなくなったりすると、「うちの子、大丈夫かな?」という不安がつい頭をよぎります。
それは「動かない=異常」でも「意地悪」でもなく、実は子どもの中で『感覚が鈍っていて反応がわかない』状態が起きている可能性があります。そんなとき、一呼吸おいて「何が見えているのかな?」と、その姿の背景を探る視点が大切なのです。
第2章 感覚鈍麻(かんかくどんま)とは何か?
感覚鈍麻(英語では “sensory under-responsivity” や “hyposensitivity”)とは、刺激に対する反応が極端に鈍い状態です。
視覚・聴覚・触覚に加え、体の位置を感じる身体感覚やバランス感覚が鈍いことも含まれます。
- 感覚鈍麻の現れ方 — 行動に表れるサイン
(1)反応がゆっくり、鈍く見える(例えば、名前を呼ばれても無表情のまま)
(1)ぶつかりやすかったり、バランスが不安定な動きが出やすい
(1)身体を振る、一定の動きを繰り返す(常同行動)
たとえば、誰かにぶつかっても気づかない、声をかけてもぼんやりしている、表情や反応が乏しい、といった行動は、感覚鈍麻傾向の典型的なサインです。
第3章 「鈍麻」に気づく視点と関わり方
「動いてくれない」=「聞こえてない」ではなく、「感じにくくて気づけていないだけ」の可能性があります。それを「無視」と決めつけず、受け止めの姿勢から関係づくりが始まります。
- 視覚や触覚を含めた工夫の実例
(1)名前を呼ぶ前にそっと肩をタッチし、視線を合わせてから話しかける
(1)感覚刺激を取り入れて“起動”を促す(音・ブランコ・触る動きをセットに)
(1)紙の指示やイラストを併用して情報をわかりやすくする
たとえば、電話で名前を呼ぶよりも、肩に軽くふれた後「ママだよ」と声をかける方が反応が出ることがあります。言葉前に“気づく準備”があることがポイントです。
第4章 保護者ができる5つのサポート
- ゆっくりとした関わりで応答を待つ
(1)すぐに反応がなくても焦らない「待ちの時間」
(1)動かないことが訴えているサインだと受け止める - 感覚刺激の種類を増やす工夫
(1)ソフトタッチ、振動、柔らかな音などを併用し刺激の入り口を広げる
(1)重いブランケット、触感のあるマットなども視野に入れる - ボディイメージを育てる遊びを取り入れる
(1)トンネルくぐり・まねっこ遊び・トランポリンなど身体の位置や動きを意識させる遊びを - 小さな反応も「できたね」とほめる
(1)じっとしただけ、目を動かしただけでも「伝えてくれたね」と喜ぶ - 繰り返しの中で習慣をつくる
(1)日常のルーティンに視覚・感覚を組み込んでいくことで、その子なりの“準備”が整いやすくなる
第5章 専門機関への相談も視野に
- 感覚鈍麻が日常生活に支障をきたしていると感じたら
(1)感覚過敏・鈍麻による落ち込みや疲労が強い
(1)集団生活での応答困難・安全確認の難しさがある
(a)早めに児童発達支援・療育センターなどへ相談
チェック表や発達相談により感覚処理の傾向が明らかになることで、個別の支援や環境調整が可能です。
最後に:動かないことは“感じているサイン”の可能性
「立たない」「反応しない」「静かすぎる」姿に、焦ったり不安になるのはとても自然なことです。
でも、それは「反応できないステージにいる」サインかもしれません。
その姿に、「どうしたの?」ではなく、「しっかり感じている姿だね」とまなざすその視線が、子どもの心が静かに育つ土壌になります。
感覚の世界とつながる第一歩は、「待つこと」と「気づくこと」です。
今日も、その子の小さな“静かな声”に耳を傾けて、大切な成長の土を耕していきましょう。