“やってみたいけどできない”——トライできない子の“挑戦不安”とは?

「ママ、ここ、やってみたい」
幼児がそう言ってきた瞬間は、とても愛おしく感じるものです。けれど、次の瞬間に壁のほうへ恐る恐る近づき、手が止まってしまう。遊びの材料を目の前にしても、一歩を踏み出せずに戸惑う子どもの姿を見ると、胸が締めつけられるような気持ちになりますね。
保護者としては、「やってみたいという気持ちがあるのに、どうして動けないんだろう?」と悩んでしまうこともあるでしょう。やる気ではなく、「何かが怖い」という声に耳をすませる視点が、ここではとても大切です。
第1章:トライの背後にある「挑戦不安」とは何か
「挑戦不安(挫折怖れ・失敗への不安)」とは、自分がやろうとしていることが「失敗するかもしれない」「うまくできないかもしれない」と不安になり、一歩を踏み出せなくなる心理状態です。これは2〜5歳の幼児にも見られ、挑戦と安心のバランスの中で葛藤することが背景にあります。
多くの研究(例:Child Mind Instituteなど)では、子どもが挑戦に踏み出せない背景には「失敗=自分の存在まで否定されるかもしれない」という感情がある場合もあるとされています。
第2章:挑戦不安が生まれる4つの背景
2-1 完璧主義・失敗恐怖の芽生え
小さな失敗や指摘で動きを止めてしまう子どもには、もしかすると「こうすれば100点がとれる」「これ以外は間違い」という思い込みがあるかもしれません。Stanford 大学の研究者たちによると、親の「失敗への反応」が子にも「失敗怖れ」を伝えることがあります。
2-2 比較や期待による圧力
「お友だちの○○ちゃんはできてるのに…」という比較や、家庭や園での期待感がプレッシャーとなり、挑戦すること自体を怖がるようになることもあります。
2-3 成功体験の少なさと自信のなさ
小さな成功体験が積み重なることで、自信が育ちます。しかし、失敗経験だけが多かったり、挑戦しても褒められない環境だと、「どうせできない」が先に立ってしまいます。
2-4 感覚や感情の調整機能(情動調整)の未熟さ
挑戦しようとすると不安になりすぎて固まってしまう子どももいます。この状態では、やりたい気持ちと不安がせめぎあい、「動けない」状態になることがあります。
第3章:親ができる関わりの3つの工夫
3-1 小さなステップで「できた!」を積み上げる
どんなに小さいことでも「できた!」を拾い、「すごいね! よくがんばったね」と言葉にすることは、自己肯定感と挑戦力の土台になります。
3-2 失敗を肯定的な学びにする語りかけ
親が失敗を経験した話を聞かせたり、「失敗って次に活かせるヒントなんだよ」と伝えることで、挑戦すること自体への安心感が生まれます。
3-3 応援の気持ちを「見える形」で伝える
背中を軽くさする、そばにいて見守るなど、言葉ではなく態度で「あなたの挑戦は応援しているよ」という安心のしるしを伝えることも大切です。
第4章:失敗への柔らかいレールをつくる具体策
- 「まずは真似して」と視覚提示する:見本を見せながら、一緒にやる時間をつくる。
- 選択肢を減らして成功しやすくする:「これならできるかも」というレベルからスタート。
- 遊びの中で失敗体験を安全に設計する:積み木を倒したり、絵を描いて汚したりする遊びで「失敗しても大丈夫」を体感させる。
第5章:支援を考えるサインとは?
挑戦不安が強く、日常の小さな動きにも固まりがちなら、早めの相談も視野に入れましょう。
- 挑戦をほとんど避ける
- 感情コントロールが難しく泣いたり固まったりする反応が頻繁に見られる
→ 療育センター、発達外来、心理相談などで評価・支援を受けるのも選択肢として考えておきましょう。
最後に:挑戦不安を乗り越えた先にある自己肯定感
「やってみたい」というその気持ちはとても大切。怖いけど踏み出したい、その小さな芽を大事に守ることが、将来の「自分で挑戦できる力」になります。
- 小さな成功体験を積ませる
- 失敗を対等な学びとして語る
- 温かく見守る関わりを重ねる
その積み重ねが、子どもの心に「挑戦する自信」へとつながっていきます。今日もその子の「やってみたい」の声に、静かに寄り添いながら応援していきましょう。