“声のボリュームが調整できない…”——大声・ひそひそ声の裏にある感覚のズレとは?

声の大きさに悩む日常
「図書館で大声を出してしまう」
「公園で遊んでいると声が響きすぎて周囲がびっくりする」
「逆に声が小さすぎて、先生や友だちに聞こえない」
保護者の方から、こんな悩みを聞くことは少なくありません。
「どうして声の大きさをコントロールできないの?」
「注意してもなかなか直らない」
そう感じると、「しつけの問題なのかな」「他の子と違うのでは」と不安になることもあるでしょう。
実はこの「声のボリューム調整の難しさ」には、感覚のズレが関係していることが多いのです。この記事では、子どもが声を調整できない背景と、その寄り添い方を解説します。
第1章:声のボリューム調整はどう発達する?
自分の声を「聞いて調整する」力
声の大きさをコントロールするためには、自分の声を耳で聞き取り、「今は大きい」「今は小さい」と判断する必要があります。これは「聴覚フィードバック」と呼ばれる機能です。
発達の中で育つ力
- 2〜3歳ごろ:大声・小声の違いに気づく
- 4〜5歳ごろ:場面に応じて声を変える練習を始める
- 小学校以降:本格的に「声の調整」が安定していく
つまり、4〜6歳くらいでまだ声の調整が難しいのは自然なことでもあります。
第2章:声の調整が難しい子どもの背景
聴覚の感覚特性
- 過敏タイプ:自分の声が大きく聞こえるため、無意識に声を小さくしてしまう
- 鈍麻タイプ:自分の声が小さく感じられるため、大声になってしまう
感覚統合の課題
自分の体や声の強さを把握する「感覚統合」の力が未発達な場合、声も力加減が効かなくなります。
注意や緊張の影響
緊張して声が小さくなったり、興奮して大声になったりすることもよくあります。これは感情のコントロールと声の調整がつながっているためです。
第3章:「わざと」ではないことを理解する
「静かにしてって言ってるのに、わざと大声を出す」
「聞こえないようにしてるのでは?」
そんなふうに感じる場面もあるかもしれません。けれども多くの場合、これは「わざと」ではなく「調整が難しい」だけです。
そのことを理解してあげるだけで、保護者の心の負担も軽くなります。
第4章:家庭でできる工夫
① 見える形でフィードバックする
声の大きさを「見える化」すると、子どもが理解しやすくなります。
- 声の大きさをメーターで表したカードを使う
- 大声=ライオンのマーク、小声=ネズミのマーク、普通の声=お話し声のマークにする
声かけ例
- 「今の声はライオンさんだったね。ここはネズミさんの声にしよう」
- 「お話し声でちょうどいいね!」
② 遊びの中で声を調整する練習
声の強弱を遊びに取り入れると、自然にトレーニングできます。
- 「ささやきゲーム」:ひそひそ声で秘密を伝える
- 「声でじゃんけん」:グーは大声、チョキは普通、パーは小声
声かけ例
- 「ひそひそ声で“好きな色”言ってみよう」
- 「今度は大声で“やっほー”!」
③ 環境を整える
静かな場所では大声が響きやすく、騒がしい場所では小声が届きにくいことがあります。環境に応じて声を調整する練習をしてみましょう。
声かけ例
- 「図書館はお話し声にしようね」
- 「公園では少し大きな声でいいよ」
④ 褒めることで「ちょうどいい声」を強化
声のボリュームがちょうどよかったときに、すかさず褒めて伝えましょう。
声かけ例
- 「今の声、とても聞きやすかったよ!」
- 「先生にもしっかり届いたね」
第5章:園や学校と連携する
声の調整が難しい子は、集団生活で目立ってしまうこともあります。先生にあらかじめ伝えておくことで、理解を得やすくなります。
- 「声が大きくなりやすいので、静かな環境を意識していただけると助かります」
- 「声を調整する練習中なので、ちょうどいい声のときに褒めてください」
家庭と園・学校が一貫した対応をすることで、子どもも安心して学べます。
第6章:支援を考えるタイミング
以下のような場合には、専門家に相談することも選択肢の一つです。
- 声の調整が極端に難しく、日常生活に大きな支障がある
- 感覚過敏や発達特性が強く影響していると感じる
- 注意や感情のコントロールと合わせて困りごとがある
療育センターや発達相談窓口、小児科に相談すると、感覚面を評価した上で具体的な支援の方法を提案してもらえます。
最後に:声のボリュームも「育つ力」
声の大きさを調整する力は、大人でも場面によって難しいことがあります。まして幼児期の子どもにとっては、発達途中の力です。
- 聴覚フィードバックや感覚の特性によって調整が難しいことがある
- 「わざと」ではなく「できにくい」ことを理解する
- 遊びや工夫で少しずつ練習できる
これらを踏まえると、「声が大きい」「小さすぎる」ことも、その子の発達の一部として受け止められるようになります。
子どもにとって「声を調整できた!」という小さな成功体験は、自己肯定感を高める大切な一歩です。今日も「ちょうどいい声」を一緒に探していきましょう。