“気持ちの切り替えが遅い…”〜後を引く子どもの情動調整〜

泣きやまない、怒りが長引く子に困ってしまうとき
「一度泣くと、なかなか泣き止まない」
「怒るとずっと不機嫌で、次の活動に移れない」
「遊びをやめるのに時間がかかって、予定通りに進まない」
子育ての中で、子どもの「気持ちの切り替えの遅さ」に悩む保護者は多いです。大人から見れば「もう終わったこと」「小さなこと」と思えることでも、子どもにとっては心が大きく揺れてしまい、長く引きずることがあります。
でも実は、この「後を引く」姿は、子どもの脳や心の発達に深く関係している自然なプロセスでもあるのです。この記事では、切り替えが遅い子どもの背景と、保護者の方ができるサポートの工夫を具体的にご紹介します。
第1章:なぜ切り替えが難しいのか?
① 脳の発達段階によるもの
子どもの脳では「前頭前野」と呼ばれる、感情や行動をコントロールする部分がまだ未熟です。大人のように「気持ちをすぐ切り替える」ことができないため、感情が長引きやすいのです。
② 感情が強く湧き上がる
好き嫌いがはっきりしていたり、感情の起伏が大きい子は、一度スイッチが入ると気持ちの勢いが強く、収まるのに時間がかかります。
③ 見通しが持ちにくい
「このあと何があるのか」がわからないと、不安や混乱で切り替えが難しくなります。
声かけ例
- 「ごはんのあとは絵本を読むよ」
- 「あと2回すべり台したら帰るよ」
④ 発達特性の影響
自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなどの特性を持つ子は、感情調整が苦手なことが多く、後を引く姿が強く出る場合があります。
第2章:切り替えの遅さは「わがまま」ではない
「いつまでも泣いているのはわがまま」「甘えているだけ」と見られがちですが、実際には脳の発達や特性に由来することがほとんどです。
保護者が「まだその力が育っていないだけ」と理解することで、子どもに優しく寄り添えるようになります。
第3章:気持ちの切り替えをサポートする工夫
① 見通しを伝える
活動の切り替えに時間がかかる子には、「次に何をするか」をあらかじめ知らせると安心します。
声かけ例
- 「お風呂のあとに、好きな絵本を読もうね」
- 「帰る時間になったら、この歌を歌うよ」
② タイマーや合図を使う
「あと何分で終わり」が視覚的にわかると、気持ちを切り替えやすくなります。
声かけ例
- 「タイマーが鳴ったらお片づけしようね」
- 「この音が鳴ったら次の時間だよ」
③ 小さなステップで移行する
急に「やめなさい」と言うより、段階的に切り替えるとスムーズです。
声かけ例
- 「あと1回遊んだら終わりにしよう」
- 「おもちゃを2つ片づけたら、次に行こうね」
④ 気持ちを言葉で代弁する
「悔しかったんだね」「もっとやりたかったんだね」と気持ちを言葉にしてもらえると、子どもは安心して落ち着いていきます。
声かけ例
- 「悲しい気持ちがまだ残ってるんだね」
- 「もっと遊びたかったんだね」
⑤ 落ち着ける場所を用意する
気持ちが爆発してしまったときには、安全に落ち着ける場所があると安心です。
声かけ例
- 「ここで少し休もうね」
- 「落ち着いたら一緒に次のことを始めよう」
第4章:保護者自身の工夫
「長引くのが普通」と受け止める
「早く切り替えて!」と焦ると、子どもの不安が増してしまいます。長引くこと自体を受け止める余裕があると、親子ともに楽になります。
自分の気持ちを調整する
子どもが切り替えられないとき、保護者もイライラしやすいです。深呼吸したり、少し距離を取ったりして、保護者自身が落ち着くことも大切です。
できたときにしっかり褒める
切り替えられた瞬間を見逃さずに褒めることで、「次もやってみよう」という気持ちが育ちます。
声かけ例
- 「泣いたけど、自分で切り替えられたね」
- 「遊びからお風呂に移れてすごいね!」
第5章:支援を考えるタイミング
切り替えの遅さ自体は自然なことですが、次のような場合は相談を検討すると安心です。
- 強いかんしゃくが毎日続き、生活に大きく影響している
- 園や学校で活動に参加できないほど切り替えが難しい
- 子ども自身も強い苦痛を感じている
療育センターや小児科で相談することで、専門的な視点から子どもに合った支援方法を見つけることができます。
最後に:切り替えの力は「育っていく」
「気持ちの切り替えが遅い」ことは、今その力が未発達なだけで、経験や関わりの中で少しずつ育っていく力です。
- 見通しを伝えて安心させる
- 段階的に移行を促す
- 気持ちを言葉で代弁する
- 切り替えられた瞬間をしっかり褒める
こうした積み重ねで、子どもは「気持ちは変えても大丈夫」と学んでいきます。
切り替えに時間がかかる姿も、子どもが一生懸命に感情と向き合っている証拠です。その努力を認めながら、成長を温かく支えていきましょう。