保育所等訪問支援が変える“学校教育の限界”

小学校に上がると、それまで元気に園で過ごしていた子が急に「できない子」になってしまう。療育現場で働いていると、そんな姿を何度も見てきました。
発達の特性がある子にとって、画一的な学校教育のシステムはあまりにもハードルが高いのです。教室でじっと座る、集団のペースに合わせる、空気を読んで動く――。それができなければ「落ち着きがない」「困った子」と見られてしまいます。
そんな現場で今、注目されているのが 「保育所等訪問支援」 です。園や学校に直接訪問し、子どもをサポートしながら先生とも連携する仕組み。この支援が学校教育の限界を補い、子どもたちの可能性を広げているのです。
この記事では、現場での体験や経営者としての視点から、保育所等訪問支援の意義と可能性について深掘りしていきます。
学校教育の限界とは何か?
一斉教育という構造
日本の学校教育は「一斉指導」が基本です。40人近い子どもが同じペースで学び、同じように行動することを求められます。これは効率的ですが、発達に凸凹のある子どもには大きな負担です。
個別最適化の不足
発達の特性に応じた支援や教材は十分ではなく、担任の先生が一人で抱え込むケースが多い。特別支援学級や通級もありますが、そこにたどり着くまでのプロセスで苦しむ子も少なくありません。
教師の多忙
教師は授業準備や行事対応に追われ、子ども一人ひとりを細やかに見る余裕がない。結果として、困っている子への対応が後手に回りがちです。
👉 こうした構造的な限界が、「不登校」「学級崩壊」といった社会問題にもつながっています。
保育所等訪問支援とは?
制度の概要
保育所等訪問支援は、発達に特性のある子どもが集団生活に適応できるよう、専門スタッフが園や学校を訪問して支援する制度です。
- 対象:保育園、幼稚園、小学校、特別支援学校など
- 役割:子どもの支援+先生への助言
- 財源:児童福祉法に基づく障害児通所支援
支援の特徴
- 子どもの行動を観察し、必要に応じてサポートする
- 教師に具体的な対応方法をアドバイスする
- 保護者とも情報を共有し、三者で子どもを支える
👉 子どもだけでなく、先生や家庭も含めた「環境調整」ができるのが大きな特徴です。
現場での実例から
例1:授業中に立ち歩いてしまう子
小学校に入学したばかりのA君は、授業中に席を立ち歩くことが多く、先生から毎日のように注意されていました。訪問スタッフが観察すると「座り続ける姿勢保持」が難しいことが分かり、まずは机に足台を設置。さらに、短い課題を挟む工夫を先生に提案しました。結果、A君は徐々に落ち着いて授業に参加できるようになりました。
例2:友達とのトラブルが絶えない子
Bさんは休み時間に友達とぶつかることが多く、クラスで孤立していました。訪問スタッフが間に入り、遊び方のルールを一緒に確認するサポートを行い、先生にも「事前に関わり方を伝える」工夫を助言。すると少しずつ友達と関わる楽しさを感じられるようになりました。
👉 このように、訪問支援は「子どもの行動を責める」のではなく、「環境を調整して支える」役割を果たします。
学校教育を補う存在として
教師のサポート役
担任の先生は一人で多くの子どもを見ています。そこに訪問スタッフが加わることで、子どもの困り感を具体的に把握でき、先生も安心して対応できるようになります。
保護者との橋渡し
「学校ではうまくいかない」と悩む保護者にとっても、訪問支援は安心材料です。子どもの様子を客観的に伝え、学校と家庭の橋渡しをしてくれます。
子どもにとっての安心
「自分を分かってくれる大人」が学校にいることは、子どもにとって大きな支えです。訪問スタッフの存在自体が自己肯定感につながります。
制度の課題と可能性
課題1:受け入れの差
学校によっては訪問支援を歓迎してくれるところもあれば、「他の子も同じだから」と拒否的な態度を取るところもあります。制度自体の理解がまだ十分に広がっていないのです。
課題2:スタッフの人材不足
訪問に対応できる専門人材が少なく、ニーズに応えきれていない地域もあります。
課題3:評価の難しさ
「支援の成果が数値で見えにくい」という問題もあり、制度の意義が社会全体に伝わりにくい現状があります。
可能性:インクルーシブ教育との融合
保育所等訪問支援は、インクルーシブ教育を実現する大きな力になります。単に「一緒にいる」だけでなく、子ども一人ひとりの特性を尊重し、環境を調整する仕組みを提供できるからです。
経営者の視点から見た訪問支援
私は経営者としても、この制度の可能性を強く感じています。
- 学校や園とつながることで事業所の信頼が高まる
- 子どもや家庭への支援がより包括的になる
- 地域に根差した福祉資源としての役割を果たせる
フランチャイズ本部としても、訪問支援を推進することは事業の社会的価値を高める取り組みだと考えています。
AI時代に必要な支援の形
AIやICTが教育や福祉に導入されつつありますが、環境を見て調整するのは人間にしかできないことです。子どもの特性を理解し、先生や保護者と一緒に考える訪問支援の価値は、今後さらに高まっていくでしょう。
終わりに
学校教育には構造的な限界があります。しかし、だからといって子どもを「できない」と決めつける必要はありません。保育所等訪問支援という制度を活用することで、子どもは安心して学び、先生も支えられ、保護者も希望を持つことができます。
私は現場でその可能性を何度も見てきました。
そして思うのは――これは一部の子どものための制度ではなく、日本の教育全体を変えていく力を持っているということです。
「できない子を減らす」のではなく、「誰もが学べる環境をつくる」。
その一歩が、保育所等訪問支援なのです。
👉 子どもを真ん中に置いた教育を本当に実現するために、私たち大人が制度をどう使い、どう広げていくか。今こそ考えるときではないでしょうか。
療育センターエコルドでも、保育所等訪問支援を行っています。
「うちの子も学校生活が心配…」「先生とうまく連携していきたい」と感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。小さな一歩が、大きな安心につながります。