“こだわりの強さ”は育て方のせい?〜安心と秩序を守る子どもの心理〜

「これじゃなきゃイヤ!」に悩む毎日
「靴下はこの色じゃないとダメ!」
「いつもと違う道を通ると泣き出す」
「お皿の位置が変わるとごはんを食べない」
そんな“こだわりの強さ”に、日々振り回されている保護者は少なくありません。
「わがままなの?」「育て方が甘かった?」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。
けれども実は、こだわりの背景には 「安心を保ちたい」 という子どもなりの理由があります。
こだわりとは、世界を理解しようとする発達のプロセスでもあり、心を落ち着かせるための秩序なのです。
この記事では、「こだわりの強さ」を発達と心理の視点から丁寧に解説し、
家庭でできる支援の工夫と具体的な声かけのヒントを紹介します。
第1章:「こだわり」は発達の中でどう生まれる?
こだわりは“秩序の感覚”のあらわれ
幼児期の子どもは、まだ世界のルールを理解している途中にいます。
「昨日と今日」「家と園」「ママと先生」など、さまざまな変化に出会いながら、頭の中で“秩序”を作り上げようとしています。
だからこそ、環境の小さな変化にも敏感に反応し、
「いつも通り」であろうとする姿が“こだわり”として現れるのです。
発達段階の自然なあらわれ
2〜4歳頃は、脳が「予測」と「見通し」を作る力を発達させていく時期です。
「同じ」「決まっている」といったパターンを守ることで、安心を得ようとします。
つまり、「こだわる」という行為は、成長の一部なのです。
第2章:こだわりが強く見える子の心理背景
不安をコントロールするため
新しい刺激や予定の変更に不安を感じる子は、
「いつもと同じ」にすることで安心を得ようとします。
声かけ例
- 「その道が安心するんだね」
- 「同じコップが落ち着くんだね」
感覚が過敏または鈍感
特定の服の素材や食べ物の形などに強く反応するのは、感覚処理の特性によるものです。
触覚・聴覚・視覚など、感じ方の違いが“こだわり”の原因になることがあります。
声かけ例
- 「この服の肌ざわりがイヤなんだね」
- 「その音が大きすぎてびっくりしたね」
見通しが立てにくい
「次に何が起こるか」が分からないと、予測できない不安から同じ行動を求めるようになります。
声かけ例
- 「このあとどうなるか、一緒に見てみようか」
- 「次は○○に行くよ。終わったら帰ろうね」
コントロール感を持ちたい
小さな子どもにとって、世界はまだ自分の思い通りにならない場所です。
その中で「これだけは自分で決めたい」という強い気持ちが“こだわり”として現れます。
声かけ例
- 「今日はどっちの靴にする?○○ちゃんが選んでいいよ」
- 「順番は同じでも、自分でやってみようか」
第3章:こだわりにどう関わる?家庭での工夫
否定せず、まず“理解”する
「こだわり」は安心のための行動。
まずは「そのこだわりの背景に何があるのか?」を見てあげましょう。
声かけ例
- 「そうしたい理由があるんだね」
- 「○○が気持ちいいんだね」
頭ごなしに「ダメ!」「我慢しなさい」と言われると、子どもはより強くこだわりにしがみつくようになります。
見通しをつくる
こだわりが強い子ほど、「変化」に弱い傾向があります。
予定を事前に伝えたり、スケジュールを見える形にしておくことが安心につながります。
声かけ例
- 「今日はこのあと、スーパー→おうち→お風呂だよ」
- 「明日は違うお皿を使ってみようね」
変化は“小さく・ゆっくり”導入する
急に新しい方法を提示すると不安が強まるため、
「慣れてきた環境の中で少しずつ変化を取り入れる」ことが大切です。
声かけ例
- 「今日の道は少しだけ違うけど、最後はいつもの公園だよ」
- 「同じ形のスプーンだけど、色を変えてみようか」
こだわりの“範囲”を広げる
“いつも通り”が安心なら、その“通り”を少しずつ増やしていくのも方法です。
声かけ例
- 「今日は黄色のコップでも飲めたね」
- 「違う靴でもお散歩できたね」
安心できる人・場所を活用する
園や家庭で、安心できる大人が見守っているときに変化を体験すると、
「変わっても大丈夫なんだ」という実感を持ちやすくなります。
第4章:「こだわり」を力に変える視点
こだわりの強い子どもは、次のような特性を持っています。
- 細かいことに気づく観察力
- パターンを見つける分析力
- 一度決めたことを続ける集中力
これは、将来的に研究・デザイン・音楽・数学などの分野で活かされる資質でもあります。
「こだわる」こと自体が悪いのではなく、その方向性を整える支援が大切なのです。
声かけ例
- 「細かいところに気づいたね、すごいね」
- 「こだわるってことは、それだけ大切なんだね」
第5章:園や学校との連携
こだわりが強い子どもは、園や学校で「融通がきかない」「わがまま」と誤解されやすいです。
家庭からの情報共有はとても重要です。
伝えておきたいこと
- 「安心のために同じ行動を繰り返すことがある」
- 「変化の前に伝えてもらえると落ち着きやすい」
- 「安心できる人がそばにいるとスムーズに対応できる」
先生が理解してくれることで、環境の配慮や個別支援がしやすくなります。
第6章:相談を検討するサイン
こだわりがあっても、日常生活が回っていれば大きな問題ではありません。
ただし、以下のような場合は発達相談を検討してみましょう。
- 強い不安で日常生活が成り立たない
- 食事・登園・着替えなどで頻繁にパニックになる
- 周囲の変化に過敏すぎて外出が難しい
専門機関(療育センター・発達支援センターなど)では、
感覚過敏・予測困難性などの要素を整理し、具体的な支援方法を提案してもらえます。
最後に:“こだわり”は安心を保つための工夫
子どもの「こだわり」は、育て方の問題ではありません。
それは、変化の多い世界の中で「安心を守るための小さな努力」なのです。
- 否定せず、まず理解する
- 見通しをつくって安心を支える
- 小さな変化を少しずつ取り入れる
- 「こだわり」を肯定しながら広げていく
子どもにとって「いつも通り」は、心の安全基地。
その安心を少しずつ広げていくことが、社会の中で生きる力につながります。
焦らず、比べず、「その子の安心の形」を大切に見守っていきましょう。