友達が欲しいのに、親に頼ってばかりの子ども〜社会性の発達と、親の「見守り」のバランス〜

「ママ、あの子と遊びたいけど、どうやって声をかけたらいい?」「ママが一緒に行ってくれないと、遊べない」——。子どもが友達を求めながらも、親に頼ってばかりいるという状況に、親は戸惑うことがあります。
一方で、親は「そろそろ自分で友達を作れるようになってほしい」「親がいなくても遊べるようにならないと」と焦りを感じることもあるでしょう。
しかし、実は「親に頼ってばかりいる」というのは「社会性が発達する前の、ごく自然な段階」なのです。親がどのように子どもの「友達関係」をサポートしていくか、その姿勢が子どもの社会性発達を大きく左右していきます。
子どもが親に頼ってばかりいる理由
「他者への関心」と「対人不安」が同時に存在している
子どもが「友達が欲しい」と言いながらも「親に頼ってばかり」という矛盾した状態にあるのは「友達への関心」と「対人関係への不安」が同時に存在しているからです。
子どもの心の中では「友達と遊びたい!」という欲求と「でも、知らない子だし、何と言ったらいいのかわからない」という不安が、同時に存在しているのです。
この「両方の気持ちが共存している状態」を、親が理解することが大切です。
「親が安全基地」だから、親に頼る
心理学の概念で「安全基地(セキュアベース)」という言葉があります。親は「子どもにとって、最も安全で信頼できる場所」なのです。
子どもが「友達関係という新しい世界」に挑戦する時「親がそばにいる」という安心感があると「少しずつ挑戦できる」という心理が働きます。
つまり「親に頼ってばかり」というのは「親への信頼が深い」という良い側面もあるのです。
社会的スキルが、まだ発達途上である
子どもが友達と関わるには「相手の表情を読む」「自分の気持ちを言葉で伝える」「相手の反応に応じて、行動を調整する」というような「社会的スキル」が必要です。
これらのスキルは「発達途上」の子どもにとって「かなり高度な認知処理」を要するのです。そのため「親の声かけやサポート」を必要とするというのは「ごく自然な段階」なのです。
過去の「失敗経験」が、対人関係への恐れを生み出していることもある
子どもが過去に「友達と喧嘩した」「仲間外れにされた」というような悪い経験をしていると「また、そうなるかもしれない」という不安を持つようになります。
この場合「親に頼ってばかり」というのは「親に守ってほしい」という心理の表れであり、親が「その子の怖さ」を理解することが大切です。
「親に頼ってばかり」の子どもが経験すること
では、子どもが親に頼りながら友達関係を築いていく中で、子どもは何を学んでいるのでしょうか。
「親のモデリング」を通じた社会的スキルの習得
子どもが「ママ、何て声かけたらいい?」と聞いた時「ママがこう言ってみようか」と親が示すことで、子どもは「対人関係での対応方法」を学んでいきます。
これは「直接教える」のではなく「親のモデル」から学ぶプロセスなのです。子どもは親の言動を観察することで「友達とのコミュニケーション方法」を、少しずつ習得していくのです。
「成功経験」を通じた自信の形成
親のサポートを受けて「友達と遊べた!」という経験を積むことで「自分にも友達と関わることができる」という自信が生まれていきます。
この「成功経験の積み重ね」が「やがて親のサポートなしでも、子どもが独立して友達と関わる」という段階へ進むための基盤になるのです。
「親の見守り」を通じた「自分は大事にされている」という感覚
親が子どもの友達関係に関心を持ち、見守ってくれるという経験が「自分は親に大事にされている」という感覚を深めていきます。
この感覚が「親子の信頼関係を深める」とともに「子どもが『人間関係は大事なものだ』という認識を持つ」きっかけになるのです。
親が「見守りながらサポート」するために
では、親は子どもの「親への依存」と「友達関係への欲求」のバランスを取りながら、どのようにサポートしていくといいのでしょうか。
「親が一緒に行く」ではなく「親が見守る中で、子どもに行動させる」
子どもが「友達と遊びたい」と言った時「ママも一緒に行こうか」と親が参加するのではなく「ママはここにいるから、頑張ってみようか」と、子どもに行動させながら親は見守る、という姿勢が大切です。
実践のポイント
- 子どもが「声をかけたい友達」の近くに「親が一緒にいる」という環境を作る
- ただし「親が話しかけるのではなく」「子どもが話しかけるのを待つ」
- 子どもが「声がかけられなかった」時に「親が代わりに声をかけるのではなく」「〇〇ちゃんは、どうしたい?」と問いかける
このバランスが「子どもの『挑戦』と『親のサポート』を両立させる」ポイントになります。
「親の言葉」を、子どもが言えるまで、根気強く待つ
子どもが「何て声かけたらいい?」と聞いた時、親はつい「こう言いなさい」と指示してしまいます。しかし、ここで大切なのは「子どもが自分の言葉で言える」まで待つことです。
実践のポイント
- 親が声かけの文言を提案した後「では、〇〇ちゃんが言ってみようか」と促す
- 子どもが「恥ずかしい」と言った場合「そっか。では、ママの手を握ってでいいよ」と、段階的なサポートを提供する
- 完璧な発話を求めず「頑張った」という行動そのものを認める
このプロセスを通じて「子どもは『自分でできた』という感覚」を得ていくのです。
失敗した時も「親がフォローする」のではなく「親が一緒に考える」
子どもが友達関係で失敗した時(例えば、声かけに応じてもらえなかったなど)、親は「それは相手が悪いのよ」と慰めるのではなく「次は、どうしてみようか」と一緒に考えるという姿勢が大切です。
実践のポイント
- 「失敗した」ことに対して「悪かった」と責めない
- 「どうすれば、うまくいくと思う?」と、子ども自身の考えを引き出す
- 親の「経験」を共有し「ママも、そういう経験があるよ」と伝える
親が「失敗も大事な学び」という態度を示すことで「子どもも『失敗を恐れない』という心構え」が育まれていきます。
「小さな成功」を見つけて、認める
親のサポートを受けながら「友達と少し話せた」「一緒に遊べた」というような「小さな成功」を見つけ、それを認めることが大切です。
実践のポイント
- 「完璧に友達をつくる」ことだけを成功と考えない
- 「声をかけようとした」「遊びに参加しようとした」という「行動」を認める
- 「昨日より、少し進んだね」という「成長」に着目する
この「小さな認め」の積み重ねが「子どもが『自分にもできる』という感覚を深めていく」のです。
親自身が「社会的スキル」を示す
実は、子どもが最も学ぶのは「親の言葉」ではなく「親の行動」です。親が「他の親と、自然にコミュニケーションしている」「失敗しても、前に進もうとしている」という姿を見ることで、子どもは「人間関係の作り方」を学んでいきます。
実践のポイント
- 子どもの前で「親が他者と自然に関わる様子」を見せる
- 「親も、新しい人間関係を作る時は、ドキドキする」という感情を、時には子どもに伝える
- 親が「失敗を乗り越える」という姿勢を見せる
親の「素の姿勢」が「子どもの社会性発達を支える」という重要な役割を果たしているのです。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが「友達と遊びたいけど、ママが一緒に行って」と言う場合
❌親の悪い対応: 「そろそろ一人で遊べるでしょ。ママは行かないよ」と、親の都合で子どもを独立させようとする
✅親の良い対応: 「友達と遊びたいんだね。では、ママも公園に行くから、〇〇ちゃんが友達に『遊ぼう』と言ってみようか。ママはベンチにいるから」と、親が見守る環境を作る
親のポイント
- 子どもの「親に頼りたい」という気持ちを否定しない
- 親が「見守る」という形で、一緒に行く
- 子どもが「自分で行動する」機会を作る
【場面2】子どもが「何て声かけたらいい?」と聞く場合
❌親の悪い対応: 「『一緒に遊ぼう』と言いなさい」と、親が言葉を指示する
✅親の良い対応: 「そっか。どう言いたい?」と、まず子どもの考えを引き出し、その後「そういう気持ちを、友達に伝えてみようか」と、子ども自身の言葉で言わせる
親のポイント
- 親の言葉を「そのまま言う」のではなく「子ども自身の言葉」を引き出す
- 子どもが「自分で考える」というプロセスを大事にする
- 「完璧な言葉」ではなく「子どもが言いたい気持ち」を優先させる
【場面3】友達が遊びに応じてくれなかった場合
❌親の悪い対応: 「それは相手が悪いのよ。気にしないで」と、問題を終わらせる
✅親の良い対応: 「そっか。残念だったね。〇〇ちゃんは、今、どう思ってるの?」と、子どもの気持ちを受け止めた上で「次は、どうしてみようか」と一緒に考える
親のポイント
- 失敗を「終わり」ではなく「学びのチャンス」と捉える
- 子どもの「悔しい」という気持ちを認める
- 次への行動を「子どもと一緒に考える」
【場面4】子どもが「ママがいないと、友達と遊べない」と言い続ける場合
❌親の悪い対応: 「大きくなったんだから、一人で遊びなさい」と、親が一方的に子どもから手を引く
✅親の良い対応: 「そっか。今は、ママがそばにいると安心なんだね。では、少しずつ『親の見守る距離』を広げていこうか。まずは、ママがベンチで見てるからね」と、段階的に子どもの独立を促す
親のポイント
- 子どもが「親が必要」という段階を受け入れる
- 「すぐに独立させる」のではなく「段階的に距離を広げる」
- 子どもの「安心感」を基盤にしながら、挑戦を促す
社会性の発達は「段階的」なプロセス
ここで大切な理解があります。
子どもの「社会性の発達」は「一気に起こる」のではなく「親のサポートを受けながら、段階的に進んでいく」というプロセスです。
親が「親への依存」を「悪い段階」と捉えるのではなく「社会性発達の通過点」と捉えることで「親の見守り方」が変わっていくのです。
療育現場での実例
ある母親は「子どもが『友達が欲しい』と言うのに、ママが一緒にいないと何もできない」ということに、いらだちを感じていました。
その母親が「今は、親に頼ってもいい段階なんだ」「親のサポートを受けながら、社会性が発達していく」という理解を持つようになると、対応が変わり始めました。
親が「見守る」という姿勢を示すようになると、子どもは「親がそばにいるから、少しずつ挑戦できる」という心理が働き始め、数ヶ月で「一人で友達に声をかける」ことができるようになっていったのです。
重要だったのは「子どもの『成長段階』を親が理解し、受け入れる」という親の心の在り方でした。
「親に頼る」ことは、実は素晴らしい資産
子どもが「親に頼ってばかり」という状態は「親への信頼が深い」という素晴らしい基盤の上に成り立っています。
親がそこを「見守る」という形でサポートしていくことで「親との信頼関係」と「友達との関係」の両方が、同時に発達していくのです。
親が「親への依存を減らす」ことよりも「親のサポートを受けながら、子どもが社会性を発達させていく」ことに焦点を当てることで、子どもの友達関係は、より良く育まれていくように思います。
今日も、どこかで子どもが「ママ、一緒に行ってくれる?」と親に頼っています。その時、親が「子どもの成長段階を理解しながら、見守る」という選択をすることで、子どもの社会性は、少しずつ開花していくのです。