子どもが「完璧でないと許せない」という、こだわりの強さ〜完璧主義的な思考の発達段階と、親からのメッセージ〜

「ここが違う」「これは駄目」「完璧じゃない」——。子どもが何かをする時「完璧でないと気が済まない」という態度を見せることがあります。親の目には「融通がきかない子だな」と映ることもあるでしょう。
しかし、実は「完璧さを求める」という子どもの行動は「子どもの脳が『細部に気づく力』『質の向上を目指す力』を発達させている」という側面もあります。この「こだわりの強さ」を、親がどのように受け止めるか、そして、どのようにサポートするかが「子どもの『完璧主義』が『強みになるか、苦しみになるか』を決めていく」のです。
子どもが「完璧さ」を求める理由
脳が「細部への注意」を発達させている段階
子どもが「完璧でないと気が済まない」という態度を見せるのは「子どもの脳が『細部に気づく能力』を発達させている」という側面があります。
4~5歳から、子どもの脳は「全体だけではなく、細部も認識する」という認知能力が発達し始めます。つまり「ここが少し違う」「このラインが真っ直ぐではない」という「細かい違い」に気づけるようになってくるのです。
この「細部への気づき」は「成長の証」であり「素晴らしい能力の発達」なのです。
「自分のイメージ」と「現実」の違いに気づき始める
子どもが「完璧さ」を求める背景には「心の中にあるイメージ」と「実際に作られたもの」のズレに気づき始めた、ということもあります。
例えば、子どもが「こんな絵を描きたい」というイメージを持ちながらも「実際に描いてみたら、イメージと違う」という経験をすることで「もっと、こうしたい」という「完璧さへの欲求」が生まれるのです。
「認められたい」という欲求の表れ
子どもが「完璧でないと気が済まない」という行動は「親に『これは素晴らしい』と認めてほしい」という「承認欲求」の表れでもあります。
子どもは「完璧な作品を作れば、親は自分を褒めてくれるはず」という期待を持ち、その完璧さを目指しているのです。
「自分をコントロールしたい」という心理
子どもが「完璧さ」を求めるのは「自分が『できる人』だと証明したい」という心理も含まれています。
特に、学校や園で「できていない」という経験をした子どもは「家庭では『完璧を目指す』ことで、自分の価値を保ちたい」と無意識に考えていることがあります。
「完璧主義」が、子どもにもたらす影響
では、子どもが「完璧さ」を強く求めることで、どのような影響が生まれるのでしょうか。
「細部にこだわる力」が、子どもの強みになる
一方で、完璧さを求める姿勢は「細部にこだわる力」として「子どもの強み」になることもあります。
例えば「職人的な仕事」「デザイン」「研究」など「細部が重要」な分野では「完璧さを求める態度」が「素晴らしい成果」につながることもあるのです。
「失敗への恐れ」が生まれ、新しい挑戦を避ける
しかし、完璧さを強く求めすぎると「失敗することへの恐れ」が強くなり「新しいことに挑戦できない」という悪循環が生まれることもあります。
子どもが「完璧でなければ、やらない」という思考に陥ると「新しい学習や経験」から遠ざかってしまうのです。
「できていない自分」への否定感が強まる
子どもが「完璧さ」を求めすぎると「完璧でない現実」に直面した時「自分は駄目な人間だ」という強い否定感を持つようになることがあります。
この「自己否定」が積み重なると「自信の欠如」につながり「長期的には、子どもの心の健康」に影響を与えてしまう可能性もあります。
「他者への厳しさ」につながることもある
子どもが「完璧さ」を自分に強く求めると「他者に対しても『完璧であるべき』という厳しい基準を適用する」ことがあります。
結果として「友達との関係」が上手くいかなくなったり「親との関係が緊張したり」という人間関係の問題が生まれることもあります。
「完璧主義的な子ども」への親の対応
では、親は「完璧さを求める子ども」に、どのように向き合っていくといいのでしょうか。
「完璧さへのこだわり」そのものを否定しない
最初に大切なのは「完璧さを求めること」を「親が否定しない」ということです。子どもの「細部へのこだわり」は「素晴らしい能力の一部」なのです。
実践のポイント
- 「こだわりが強いね」と認める
- 「その細かさ、素敵だね」と伝える
- 「完璧さを求めることは悪くない」というメッセージを示す
親が「こだわりを認める」という姿勢を見せることで「子どもも『自分の特性は、悪くない』と感じる」ようになるのです。
「完璧さの追求」と「行動を進める勇気」のバランスを取ることの大切さを伝える
親が教えるべきことは「完璧さを求めることも大事だけど、『まずやってみる』『失敗を経験する』ということも、同じくらい大事」という「バランス感覚」です。
実践のポイント
- 「完璧じゃなくても、やってみることが大事」と伝える
- 「完璧さを目指すのも、でも挑戦するのも、両方大事」と説明する
- 親自身が「完璧ではない自分」を受け入れている姿を見せる
親が「バランス感覚」を示すことで「子どもも『完璧さと挑戦の両立』という柔軟な思考」を学ぶのです。
「失敗の価値」を、繰り返し伝える
子どもが「完璧でないから、やりたくない」と言った時「失敗することの価値」を伝えることが大切です。
実践のポイント
- 「失敗から学ぶ」という親の態度を示す
- 「ママも失敗する」という親自身の失敗経験を話す
- 「失敗なしに、成長はない」というメッセージを伝える
親が「失敗の価値」を繰り返し伝えることで「子どもの中に『失敗は悪くない』という認識が、少しずつ形成されていく」のです。
「プロセス」を褒め、「結果だけ」を褒めない
親が子どもを褒める時「完璧な結果」を褒めるのではなく「その過程での『工夫』や『努力』を褒める」ことが大切です。
実践のポイント
- 「完璧だから素晴らしい」ではなく「頑張ったね」と褒める
- 「できないところもあるけど、ここは工夫したね」と認める
- 「完璧ではなくても、チャレンジしたことが素晴らしい」と伝える
親が「プロセスを褒める」という姿勢を持つことで「子どもは『結果ではなく、過程が大事』という価値観」を身につけていくのです。
「完璧さ」を求めすぎて、苦しんでいないか観察する
子どもが「完璧さ」を求めるあまり「何もできない」「学習を避ける」「親に厳しく接する」というような「苦しみの兆候」がないか、親が注意深く観察することが大切です。
実践のポイント
- 子どもが「苦しそう」であれば「完璧さを求める必要はない」と伝える
- 親自身が「完璧さへのプレッシャー」を子どもに与えていないか、確認する
- 必要に応じて「専門家に相談する」という選択も視野に入れる
親が「子どもの心の状態」を敏感に読み取ることで「完璧主義が『強み』から『苦しみ』に変わるのを防ぐ」ことができるのです。
「良い完璧主義」と「悪い完璧主義」の違いを理解する
親が知っておくといいのは「完璧さを求めることが『必ずしも悪い』わけではない」という理解です。
良い完璧主義: 目標に向かって努力し、細部にこだわりながらも「失敗を恐れず、挑戦し続ける」という姿勢
悪い完璧主義: 完璧さを求めすぎるあまり「失敗を恐れて挑戦できない」「完璧でないから、やらない」という自分を制限する姿勢
親が「この違い」を理解することで「子どもをどのように導くべきか」が見えてくるのです。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが「これは完璧じゃないから、やり直したい」と言う場合
❌親の悪い対応: 「いいでしょ。そのままでいいよ」と、親の都合で止める
✅親の良い対応: 「そっか。完璧にしたいんだね。その気持ちはいいね。では、どこを直したいの?」と、こだわりを認めつつ「全部やり直す」のではなく「ここだけ直す」という現実的な対応を促す
親のポイント
- こだわりを認める
- ただし「完璧さを追求する時間」に制限を設ける
- 「完璧さと現実のバランス」を教える
【場面2】子どもが「完璧じゃないから、やりたくない」と拒否する場合
❌親の悪い対応: 「そんなこと言わないで、やりなさい」と、命令する
✅親の良い対応: 「そっか。完璧にしたい気持ちがあるんだね。でもね、失敗することも、すごく大事だよ。ママもいっぱい失敗する。では、一緒に『失敗してもいい』って思いながら、やってみようか」と、失敗の価値を伝える
親のポイント
- 子どもの「完璧さへの欲求」を理解する
- 「失敗することの価値」を繰り返し伝える
- 親自身が「失敗を受け入れている」姿を見せる
【場面3】完璧さを求めるあまり、友達関係に問題が出ている場合
❌親の悪い対応: 「もっと柔軟に」と、一言で済ませる
✅親の良い対応: 「完璧さを求める〇〇の気持ちは素晴らしい。でも、お友達は違う考え方かもね。人それぞれ、違う考え方があるんだよ」と説明し、他者の価値観の多様性を教える
親のポイント
- 子どもの「こだわり」を否定しない
- 「他者も同じこだわりを持つとは限らない」という理解を促す
- 親が「多様性を認める」モデルを示す
【場面4】親が子どもの完璧さを「褒める」場合
❌親の悪い対応: 「完璧だね。さすが」と、結果だけを褒める
✅親の良い対応: 「頑張ったね。ここをこうしたい、って工夫したんだね。その気持ちが素晴らしい」と、プロセスと工夫を褒める
親のポイント
- 「結果ではなく、プロセス」を褒める
- 「完璧さよりも、努力」を評価する
- 「失敗しても、挑戦した」ことを認める
「完璧主義」は、育て方次第で「強み」にも「苦しみ」にもなる
ここで大切な理解があります。
子どもの「完璧さへのこだわり」は「育て方」によって「素晴らしい強み」にもなれば「苦しみ」にもなります。
親が「完璧さを求める子どもに、さらに『完璧であるべき』というプレッシャーを与える」と「苦しみに変わり」、反対に「親が『完璧ではなくてもいい』という許容を示す」と「子どもの『細部にこだわる力』が『良い強み』に変わる」のです。
療育現場での実例
ある子どもは「完璧でないと気が済まない」という態度が「友達との関係を難しくしていた」と、親が悩んでいました。
その親が「こだわりそのものは悪くない」と理解し「その子のこだわりを認めつつ、『人それぞれ違う』という多様性を教える」という対応に変えると「子どもが『他者を許容する』ようになり始めた」のです。
数ヶ月後「その子は『完璧さを求める自分』を受け入れながらも『他者の『不完全さ』も受け入れられる』という柔軟性が育ち、友達関係も改善していきました。
重要だったのは「親が『こだわりを否定しない』」という姿勢だったのだと思います。
子どもの「完璧主義」を「人生の力」に変える
子どもが「完璧さ」を求める姿勢は「細部にこだわる力」「質を追求する力」として「将来、子どもの『人生の武器』になる可能性」を持っています。
親がそこに気づき「その力を『苦しみ』ではなく『強み』へと変える」というサポートをすることで「子どもは『完璧さと柔軟性のバランス』を持つ、素晴らしい大人へと育っていく」のです。
親が「子どものこだわりを認め、その価値を伝え、同時に『失敗の価値』も教える」という、難しいバランスを取ろうとする時「親自身も『親として完璧である必要はない』」ことに気づくことができるといいなと思います。
今日も、どこかで子どもが「もう一度、完璧にやりたい」と言っています。その時、親が「その気持ちを認めながらも『失敗も大事』」というメッセージを伝えることで、子どもの「完璧さへのこだわり」は、少しずつ「良い力」へと変わっていくのです。