発達障害のある人の“内面”をどう理解する?心の理論とその支援

「どうして相手の気持ちをわかってくれないの?」
「友達が悲しんでいるのに、気づいていない…?」
そんな場面に出会うと、大人はつい「思いやりがないのかな?」と不安になることがあります。
しかし、それは「わからない」のではなく「気づきにくい」「想像が難しい」だけかもしれません。
今回は、発達障害のある子どもたちの“内面の理解”を深めるキーワード、「心の理論」に注目して、その支援方法についてお伝えします。
「心の理論」ってなに?
「心の理論(Theory of Mind)」とは、
✔ 他者にも自分とは異なる考えや気持ちがあること
✔ それを想像し、理解し、予測する力
のことを指します。
たとえば、相手が驚くようなサプライズを考える時、他人の考えを想像して行動することになります。
この「人の心を想像する力」は、人との関係を築くうえでとても大切なスキルなのです。
発達障害と「心の理論」の関係
特に自閉スペクトラム症(ASD)を持つお子さんの中には、「心の理論」が発達しにくい傾向があると言われています。
そのため…
✔ 相手の表情や声のトーンから気持ちをくみ取るのが難しい
✔ 「○○ちゃんが悲しんでいる理由」がわからない
✔ 自分の気持ちと他人の気持ちの区別がつきにくい
✔ 相手の立場を想像した行動(順番を譲る・謝るなど)が自然にできない
という場面が起こりやすくなります。
これは「わざと」「冷たい」のではなく、「情報処理の仕方」が少し違うからなのです。
見えにくい困難が、誤解を生む
「空気が読めない」
「わがまま」
「自己中心的」
といった誤解を受けやすいのも、こうした特性からです。
特に集団生活の中では、「相手の立場を考える」「協調する」「ルールを守る」ことが求められるため、社会的なつまずきにつながることもあります。
だからこそ、周囲の理解と支援がとても重要です。
幼児期からできるサポートの工夫
「心の理論」を直接育てることは難しいですが、経験の積み重ねによって「人の気持ちを想像する力」を少しずつ育てていくことは可能です。
ここでは、家庭や療育、保育の中でできる支援のヒントをご紹介します。
✔︎ 気持ちを「見える化」する
・絵カードや絵本、感情シールを使って「この顔はどんな気持ち?」とクイズ形式で遊ぶ
・「うれしいときの顔」「怒ったときの顔」を鏡で見てまねしてみる
・写真やイラストで気持ちの違いを視覚的に伝える
→ 抽象的な感情を「具体的なイメージ」に置き換えることで、理解しやすくなります。
✔︎ 自分と相手の気持ちを区別して言葉にする
・「Aちゃんが泣いてるけど、どうしたのかな?」
・「Bくんはどう思ったか聞いてみようか?」
・「○○くんはこう思ったけど、△△ちゃんはどうだったかな?」
→ 相手の視点に気づくきっかけを増やし、自然なやりとりの中で「違いがある」ことを体感していきます。
✔︎ ごっこ遊びや物語で「気持ちのやりとり」を練習
人形やぬいぐるみを使ったごっこ遊び、絵本の読み聞かせなどは、「他者の立場」や「気持ちの変化」を安全に体験できる良い機会になります。
「この子はどう思ったのかな?」
「次にどうするのがいいと思う?」
といった問いかけを通して、感情理解と想像力を育てましょう。
保護者ができること
✔︎「気持ち」に名前をつけて伝える
✔︎ 子どもが自分の思いを表現できたら、しっかり受け止める
✔︎ 怒る前に「どうしてこうしたのか?」を一緒に考える
感情や思考を丁寧に言葉にして伝えていくことで、「自分の気持ちも、相手の気持ちも大切なんだ」と少しずつ学んでいけます。
まとめ
「心の理論の発達」は目に見えにくいけれど、子どもの社会性やコミュニケーション力の基盤になります。
発達障害のある子どもたちにとって、
✔︎ 感情を理解するきっかけ
✔︎ 他人との違いを知る経験
✔︎ 共感ではなく、理解を目指す関わり
が何よりの支援になります。
ゆっくりでも、少しずつ積み重ねていけば、子どもたちは確実に「他者とつながる力」を育んでいけます。
保護者の方へのご案内
大阪府池田市にある療育センターエコルドでは、乳幼児期を専門とする児童発達支援を中心に、1日20名の乳幼児に対して、集団活動や個別支援を通じて、専門性ある早期療育を提供しています。
また、送迎も施設から30分圏内を目安に実施しています。
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