「がんばりすぎるASDの子どもたち」:適応の裏にあるストレスとそのケア

「真面目で優等生に見えるけど、家では大荒れ…」
「集団にしっかり合わせているように見えるのに、表情が硬い…」
「“困ってない子”だと思っていたのに、突然パンクしてしまった…」
発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ子どもの中には、「外では頑張れている」と思われがちだけど、実は限界ギリギリの適応をしている子がいます。
今回は、「がんばりすぎるASD児」について、適応の裏にあるストレスとそのケアについて考えていきましょう。
「困っていない」ように見える子の中にある“頑張り”
ASDの子どもたちは、
- 変化に弱い
- 感覚過敏がある
- 他者の感情の読み取りが苦手
- 自分なりのルールや予測で安心を保っている
といった特性を持っていることがあります。
しかし、それらを表に出さず、「周囲に合わせよう」「迷惑をかけないようにしよう」と、見た目には“適応できているように”振る舞うことがあります。
周囲に合わせようとする行動の背景には:
☑ 自分の気持ちを我慢している
☑ 不安を抱えながら無理に笑っている
☑ 過剰な緊張状態が続いている
という心理的ストレスが積み重なっていることも少なくありません。
「カモフラージュ」と「マスキング」
こうした無理な適応行動は、最近では「カモフラージュ(camouflaging)」や「マスキング(masking)」という言葉で表されるようになってきました。
特にASD傾向が軽度である場合や、知的発達に遅れがない場合には、この「がんばって合わせる」行動が見逃されやすいのが特徴です。
そのため…
- 療育や支援が遅れる
- 本人の内面の困りごとに気づかれない
- 二次障害(不安障害・抑うつ・自己否定感)につながる
といったリスクが高まってしまうのです。
子どもたちからの“見えないサイン”に気づくには?
「外で頑張って、家で爆発する」
「小学校に上がってから、登校渋りや体調不良が出てきた」
「急に元気がなくなり、無気力な様子が増えた」
こうした変化は、「実はずっとがんばりすぎていた」サインかもしれません。
本人が「助けて」と言えないタイプであるほど、大人の側が“表情や様子の変化”に敏感になってあげることが大切です。
がんばりすぎている子へのケアのヒント
☑「ちゃんとしているね」より「がんばってるね」と声をかける
見た目には問題なく見える子ほど、「努力してるよね」と気づいてもらえることでホッとします。
☑「いい子」を演じさせすぎない
「お兄ちゃんだから」「手がかからなくてえらいね」と言いすぎると、我慢し続けてしまいます。
☑「困ってから」ではなく「困る前」に休憩を
学校や集団生活での緊張を“当たり前”にせず、帰宅後にしっかりクールダウンの時間を確保しましょう。
☑ 表現できる手段を増やす
言葉で言いにくい子には、感情ボードや色で気持ちを伝えるなどの非言語的な方法も取り入れてみてください。
☑ 自分の特性を知る手伝いを
「疲れやすいのは気持ちが弱いからじゃなくて、感覚が敏感なんだよ」など、自分の傾向を“知ること”が自信にもつながります。
療育や支援の場でできること
療育では、「合わせること」よりも「その子自身がリラックスできる時間」「ありのままの自分でいられる場」を大切にします。
- 自己理解を育むプログラム
- 感情表現やクールダウンの練習
- 特性に合わせた集団活動への配慮
こうした支援を通して、子どもが「無理せず過ごせる時間」が増えていくことが、安心と成長につながっていきます。
まとめ
「困っていないように見える」ASDの子どもたちの中には、「困っていることにすら気づいてもらえない」苦しさを抱えているケースがあります。
がんばり屋さんで優しくて、いつも一生懸命。
でもその分、ひとりで頑張りすぎて、限界を超えてしまうことも。
だからこそ…
☑ 「適応できている=困っていない」ではない
☑ 見えにくい頑張りやストレスに目を向ける
☑ ありのままの自分でいられる場所をつくる
子どもたちが自分らしく安心して過ごせるよう、大人が“気づき・寄り添い・支える”姿勢が大切です。
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大阪府池田市にある療育センターエコルドでは、乳幼児期を専門とする児童発達支援を中心に、1日20名の乳幼児に対して、集団活動や個別支援を通じて、専門性ある早期療育を提供しています。
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