“ごっこ遊びができない”は大丈夫?想像力と社会性の発達の関係とは

「お店屋さんごっこが始まらない…」
「ままごとセットがあっても、ただ並べるだけ…」
「人形やぬいぐるみを使っても“会話”がない…」
そんな様子を見て、「うちの子、ごっこ遊びができないけど大丈夫かな?」と感じたことはありませんか?
ごっこ遊びは、子どもの想像力や社会性、言葉の力など、さまざまな発達に関わる大切な遊びのひとつ。
でも実は、発達のペースや特性によって、ごっこ遊びの現れ方には大きな個人差があります。
今回は、ごっこ遊びの発達段階やASD(自閉スペクトラム症)傾向のある子どもたちに見られる困難、そして家庭でできる支援のヒントをお伝えします。
ごっこ遊びってなに?どんな力が育つの?
ごっこ遊びとは、子どもが自分以外の誰かや何かになりきって、役割を演じたり、空想の世界をつくったりする遊びのこと。
例:
- お医者さんや患者さんになって遊ぶ
- おままごとで家族の役割を演じる
- ぬいぐるみ同士で会話をさせる
- 空のコップを「ジュース」として扱う
こうした遊びを通して、以下のような力が育ちます:
- 想像力(目の前にないものを思い描く力)
- 社会性(他者の視点を想像する力)
- 言語能力(会話を組み立てる力)
- 感情表現と理解
- 問題解決やルール理解
つまり、ごっこ遊びは「遊びながら“生きる力”を育てる学び」でもあるのです。
ごっこ遊びの発達段階
ごっこ遊びにも発達段階があります。
❶ 擬似的行動(1歳後半〜2歳前半)
→ コップを持って飲むふりをする、ぬいぐるみにスプーンを近づける など
❷ 単純な役割模倣(2〜3歳)
→ お母さん・赤ちゃんなど身近な人をまねる遊びが始まる
❸ 複数の役割とストーリーの展開(3〜4歳)
→ 「私はお医者さんね」「あなたは患者さん」など、やりとりが生まれる
❹ 想像の世界を共有(4〜5歳以降)
→ 架空の設定や出来事を友達と共有して展開する(「今日はお祭りの日にしよう」など)
このように、年齢とともに複雑さが増し、「人との関わり」や「空想の広がり」も深まっていきます。
ASD児に見られるごっこ遊びの困難
自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ子どもは、以下のような理由でごっこ遊びが苦手な場合があります。
✔ 想像の中で「何かになりきる」ことが難しい
✔ 他者の視点を想像する(心の理論)の発達がゆっくり
✔ 感覚刺激や構造化された遊びの方が安心しやすい
✔ 言葉や会話のやりとりが苦手
✔ こだわりが強く、同じ遊びばかりになりがち
そのため、ごっこ遊びが成立しにくく、「遊んでいないように見える」「1人で並べているだけ」と思われてしまうこともあるのです。
ごっこ遊びができない=問題?
結論から言うと、「今ごっこ遊びができない=将来もできない」ではありません。
大切なのは、「今その子にとってどんな遊びが心地よく、安心できるか」。
一人遊びや繰り返し遊びも、その子なりの世界の理解や安心のための大切な活動です。
無理に役割遊びをさせる必要はありません。
その子の発達のペースと興味に合わせて、段階的に関わりを深めていくことが大切です。
家庭でできる!ごっこ遊びのサポートアイデア
☑ 見本となる遊びを大人が見せる
→「お母さんがケーキ屋さんするね」「ケーキくださいな〜」など、楽しそうに見せて興味を引きましょう。
☑ 遊びの「型」を用意する
→ ごっこ遊び用の絵本やおもちゃを活用して、「遊び方の例」を見せることでイメージしやすくなります。
☑ 興味のあるテーマから始める
→ 車好きな子なら「ガソリンスタンドごっこ」、恐竜好きな子なら「博物館の先生ごっこ」など、好きな世界観で入りやすく!
☑ 1人ごっこも立派な遊び!
→ 「ひとりでぬいぐるみと話してる」もOK。言葉や想像力を育む素晴らしい時間です。
☑ スモールステップで展開
→ まずは道具でふりをする→人に渡す→受け取ってくれる→会話が生まれる…と、ゆるやかに段階を踏むとスムーズです。
まとめ
ごっこ遊びは、単なる「子どもの遊び」ではなく、社会性・想像力・言葉の力を育てる大切な営みです。
でも、「できない」ことが悪いわけではなく、その子なりの発達のプロセスがあることを忘れないでください。
☑ ごっこ遊びには発達段階がある
☑ ASDの子どもたちには苦手さの背景がある
☑ 無理にさせず、楽しさから入ることが大切
その子の“今”を受け止め、一緒に「楽しい」を育てていくことで、想像力や関わる力は自然と育まれていきます。