“ずっとしゃべってる”子どもへの心配…言語発達と自己調整の視点で考える

「静かにしてって言っても、ずーっとしゃべり続けるんです…」
「一人ごと?それとも誰かに話してるの?」
「おしゃべりが止まらないけど、これって大丈夫…?」
こんなふうに、「しゃべりすぎ?」「お話が止まらない…」と感じる子どもに戸惑っている保護者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、「多弁さ(ずっと話し続ける)」という子どもの行動の背景について、「言語発達」や「自己調整(セルフコントロール)」の観点からわかりやすく解説します。
「おしゃべりが多い」ってどういうこと?
子どもの多弁さには、さまざまなタイプがあります。
☑ 一人でずっと話している
☑ 誰かに話しかけ続ける
☑ 会話のキャッチボールにならず、自分の話ばかり
☑ 話題の切り替えが苦手で同じ話を繰り返す
☑ 周囲の状況に関係なく話し続ける
一見すると「元気で明るい」「お話好き」とも受け取れますが、時に「周囲と噛み合っていない」「場面にそぐわない」などのズレが見られることもあります。
言語発達の観点から見ると?
言葉が豊かに出ること自体は、発達のひとつのステップです。
ただし、「話す力(表出)」が育っていても、「聞く力」「理解する力」「相手とのやり取りの力」が同じように発達しているとは限りません。
たとえば…
- 単語や文を多く知っていても、会話の順序や相手の反応を読めない
- 自分の思考を整理するために“独り言”が多くなる
- 不安なときほど、言葉で埋めようとする
というように、言葉の“量”だけでなく“質”や“使い方”に注目することが大切です。
背景にある「感覚のズレ」や「不安」
多弁の背景には、次のような要素が関わっていることもあります。
① 感覚処理特性
ASD(自閉スペクトラム症)などの特性がある子どもは、外からの刺激に過敏だったり、鈍感だったりすることがあります。
「音が不快」「周囲のざわめきが気になる」などの不快感を、言葉で紛らわせているケースもあります。
② 自己調整の難しさ
自分の気持ちを切り替える、落ち着かせる、行動をコントロールする力(実行機能)が育っていないと、不安や興奮状態が続き、おしゃべりが止まらないことがあります。
③ 社会的コミュニケーションのズレ
「相手が退屈している」「話が通じていない」といった“相手の気持ち”を読む力が弱い場合、自分の話を一方的に続けてしまうことがあります。
保護者ができる関わり方の工夫
☑ 一方的に「静かにしなさい」と言う前に、「何を伝えたいのか」に耳を傾けてみましょう。
☑ 子どもが不安を言葉で埋めようとしているときは、抱きしめたり、一緒に深呼吸したり、言葉以外の安心材料を増やしてみてください。
☑ 落ち着いて話すタイミングや場所を一緒に確認する「会話のルール」を家庭でつくることも効果的です。
☑ “お話を聞く”練習として、「話を最後まで聞いたら自分の番」といった簡単な交代ルールも有効です。
療育でできるアプローチ
療育の場では、以下のような方法で多弁傾向のある子どもへの支援を行います。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)による会話のやりとり練習
- 「気持ちが高ぶった時にどうする?」を事前に学ぶ情動コントロール支援
- 自己表現の幅を広げるビジュアルツールの活用
- ワーキングメモリや実行機能の育成を通じて、話のまとまりを持たせる練習
「しゃべりすぎをやめさせる」ではなく、「どうすれば伝わるように話せるか」「どうすれば気持ちを落ち着けられるか」を一緒に探していくことが大切です。
まとめ
「たくさん話す=言語発達が進んでいる」とは限らず、
多弁さは時に「不安」や「感覚の調整の難しさ」「社会的なズレ」を伝えているサインでもあります。
☑ 量ではなく質を見る
☑ “伝えたい気持ち”に寄り添う
☑ 言葉以外の自己表現の方法も育てていく
そんな視点で関わることで、「話すこと」が子どもにとって“安心”や“つながり”につながるようになっていきます。
保護者の方へのご案内
大阪府池田市にある療育センターエコルドでは、乳幼児期を専門とする児童発達支援を中心に、集団活動や個別支援を通じて、専門性ある早期療育を提供しています。
また、送迎も施設から30分圏内を目安に実施しています。
池田市・箕面市・豊中市・吹田市の一部地域で、早期療育が必要なお子さんの保護者の方は、ポータルサイトの療育センターエコルドにお気軽にお問い合わせください。