おもちゃを貸せない、順番を守れない…子どもの社会性はどう育てる?

「仲良く遊んでね!」が通じないのには理由があります
「貸してって言ってもダメって言う」
「順番を守らず割り込んでしまう」
「ちょっと注意しただけで怒って手が出る」
そんな姿を見て、「うちの子、友達と遊べないのかな?」「将来大丈夫かな…」と心配になる保護者は多いでしょう。
でも、社会性は「最初から備わっているもの」ではありません。
育つ環境と関わりによって、少しずつ育まれていくものなのです。
なぜ「貸せない」「守れない」ことが起きるのか?
1. 「貸す・待つ」は、発達的に難しい行動
2〜3歳頃は、「自分の物」という意識が強くなる時期。
- おもちゃを握りしめて離さない
- 使っていないのに「ダメ!」と拒否
これは“自己の確立”が始まっている証拠であり、「発達の一場面」とも言えます。
また、順番を守る行動には「見通し」や「我慢」が必要です。
これは脳の前頭前野の働きが関わるスキルで、4〜5歳ごろから少しずつ発達していきます。
2. 「他者の気持ち」を想像する力が未熟
小さな子どもにとって、「相手がどう思っているか」を考えるのはとても難しいことです。
- 「自分が使いたい=今すぐ使いたい」
- 「あの子が泣いてる=僕のせいだとは思わない」
こうした“自分中心の世界”から、“相手の立場を考える”社会性に育つまでには、多くの経験と関わりが必要です。
3. 発達特性による「社会的なズレ」もある
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの特性がある場合、
- ルールを理解するのが難しい
- 衝動的に行動してしまう
- 空気が読めないと誤解されやすい
こうした“特性”が原因で、「貸せない」「守れない」場面が目立つこともあります。
貸せるようになるには?社会性の発達ステップ
社会性は「段階を踏んで育つもの」です。
以下のように少しずつスキルを積み上げていきましょう。
【ステップ1】一人遊び
自分の世界を楽しむ時期。おもちゃを取られると強く反応するのも自然です。
【ステップ2】並行遊び(となりで同じ遊びをする)
一緒に遊ぶが、相手と関わらずに自分の遊びに集中しています。
【ステップ3】共有遊び(物の貸し借りやルールの理解)
このステップから、「貸す」「順番を守る」といった行動が徐々に見られるようになります。
今日からできる!家庭で育てる社会性の3つの工夫
1. 「代弁」と「見通し」で気持ちを整理する
貸せなかったときや、順番を待てなかったとき、子どもにいきなり「ダメでしょ!」と言っていませんか?
✅ 代弁する言葉がけの例:
- 「今、使ってたんだよね。取られたくなかったね」
- 「次の番を待つの、長く感じたんだよね」
- 「“終わったら貸す”って伝えようか」
子どもは自分の気持ちを言葉にするのが苦手です。
大人が代弁することで、少しずつ気持ちを整理する力が育っていきます。
2. 「貸す」練習は家の中でできる!
いきなりお友達相手に上手に貸すのは、ハードルが高いことです。
まずは家庭内で「貸す・借りる」の練習をしてみましょう。
✅ 例:ぬいぐるみやブロックを使って
- 「ママに貸してくれる?ありがとう、じゃあ使ったら返すね」
- 「〇〇くんが貸してくれたから、ママうれしいな」
- 「ちょっと待っててね、次は〇〇くんの番だよ」
大人とのやりとりを通して、「貸す・順番を守る」が“嫌なこと”ではなく“嬉しい経験”として残っていきます。
3. 絵本やごっこ遊びで「社会的ルール」を学ぶ
「社会性」は実際の経験に加えて、物語やロールプレイでの“疑似体験”でも学ぶことができます。
✅ おすすめの取り組み:
- 「順番を守ること」がテーマの絵本を読む
- ごっこ遊びで「今日はお店屋さんね」「今はお客さんの番だよ」と役割交代をする
- 人形を使って「こう言ったら嬉しかったね」「こうしたら悲しかったね」と気持ちを振り返る
遊びの中で、「どう言えば伝わるのか」「どんな気持ちになるのか」を疑似体験していくことで、現実のやりとりもスムーズになります。
叱るよりも、「できた」を見つけてほめる
「また貸せなかった」「今日もトラブル…」と落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
でも、そんなときこそ、「できた小さな一歩」に注目してください。
✅ ほめるポイントの例:
- 自分から「順番だよ」と言えた
- おもちゃを“ちょっとだけでも”貸せた
- 貸したあとに「返して」と言えた
- トラブルになったけど、泣かずに切り替えられた
保護者が「気づいて」「認めて」「ほめる」ことが、子どもにとっての最大のモチベーションになります。
それでも心配なときは…
子ども同士のトラブルが頻繁に続く場合や、明らかに周囲と違う行動が見られる場合には、発達支援の専門家に相談することも選択肢のひとつです。
- 療育センターや発達支援センター
- 幼稚園や保育園での巡回相談
- 小児発達外来(児童精神科や小児神経科)
診断が目的ではなく、「その子に合った関わり方」を一緒に考える場として活用してみてください。
まとめ:「貸せない」「守れない」は“まだ”のサイン
「今は貸せない」
「順番が待てない」
それは、「これから育つ力」があるというサインです。
社会性は、経験と関わりで育つ力。
焦らず、比べず、少しずつ「できた!」を積み重ねていくことで、子どもたちは自分のペースで育っていきます。
- 気持ちを代弁する
- 家の中で練習する
- ごっこ遊びや絵本で気持ちを知る
- できたことをしっかり認めてほめる
「仲良く遊べるようになったね」
そんな日がきっとやってきます。今はその“芽”を一緒に育てていく時間です。