気に入らないとすぐ怒る…感情のコントロールが苦手な子への対応法

「また怒ってる…」「こんなに爆発するなんて」——と悩む前に知っておきたいこと
- おもちゃを取られると、いきなり大声で怒る
- 思い通りにいかないと床に寝転んで泣き叫ぶ
- 友達に注意されると手が出てしまう
こうした「感情の爆発」に、どう対応していいのかわからず、困ってしまう保護者は少なくありません。
中には「こんなに怒るなんて…」「この子、大丈夫かな…」と不安になる方も。
でも、まず知っておいてほしいのは、幼児の感情コントロールは、まだ未熟であって当然だということです。
幼児の「怒り」は発達の一場面
3〜5歳ごろの子どもは、自我が芽生えて「自分の思い通りにしたい!」という気持ちが強くなる時期です。
しかしその一方で、
- 自分の気持ちをうまく言葉にできない
- 相手の立場に立って考えることが難しい
- 「我慢する」力が育っていない
こうした発達のアンバランスさから、「怒り」という強い感情が爆発しやすくなります。
これは決して「性格の問題」ではありません。
子どもの脳の成長過程に起きる自然な現象なのです。
感情のコントロールは“脳の力”
感情を調整する力は、脳の前頭前野(前頭葉)という部分で担われています。
この部分は、じっくりと時間をかけて発達する場所で、完成は20歳ごろともいわれています。
つまり、幼児期の子どもが「感情的になる」「思い通りにいかないとパニックになる」のは、脳がまだ未熟で当然なのです。
感情が爆発する子どもへのNG対応
つい、大人も感情的になってしまいがちですが、以下のような対応は逆効果になることがあります。
1. 「怒るのはよくない!」と頭ごなしに叱る
- 怒ること自体は自然な感情です。
- 「怒る=ダメなこと」と否定され続けると、子どもは感情表現が苦手になります。
2. 「うるさい!黙りなさい!」と感情を抑え込む
- 感情を爆発させている子どもに、さらに強い刺激(怒鳴り声)を与えると、余計に混乱して収拾がつかなくなります。
3. 無理に話をさせようとする
- 感情が高ぶっているときは、話す・考える余裕がありません。
- クールダウンの時間が必要です。
今日からできる!感情のコントロールを育てる5つの方法
1. 「気持ちを言葉にしてあげる」代弁の声かけ
子どもが怒っているとき、まずは感情を“言葉”にしてあげましょう。
✅ 例:
- 「おもちゃ取られて、くやしかったね」
- 「やりたかったのに、終わっちゃって悲しかったんだね」
- 「言いたいこと、うまく伝えられなかったんだね」
自分の気持ちを理解してもらえたと感じることで、子どもは落ち着きやすくなります。
また、「怒っていいけど、やり方を変えようね」と学ぶきっかけにもなります。
2. 感情を整理できる“場所”や“時間”をつくる
感情が爆発している最中は、話を聞くのも難しい状態です。
そんなときは「心を落ち着ける場所(クールダウンスペース)」をつくっておくと効果的です。
✅ 例:
- 静かなコーナーにクッションやぬいぐるみを置く
- 「ここで深呼吸してからお話しようね」
- タイマーを使って「あと5分で戻ろうか」と見通しを与える
ポイントは、「罰」ではなく「気持ちを整えるための時間」として伝えることです。
3. 落ち着いた後に「振り返り」をする
怒っているときに注意しても、子どもは聞く耳を持ちません。
大切なのは、「落ち着いた後に」「短く・具体的に」話すこと。
✅ 例:
- 「怒っていたとき、手が出ちゃったね。どうしたらよかったかな?」
- 「“貸して”って言えば、順番に使えたかもね」
- 「ママに“助けて”って言えばよかったね」
“どうすればよかったか”を一緒に考えることで、次回の行動が変わっていきます。
4. 「感情カード」や「表情絵本」で気持ちを知る練習
感情を言葉にするのが苦手な子には、視覚的に気持ちを表現できるツールが役立ちます。
✅ 活用例:
- 「いまの気持ちはどれ?」と絵カードを指さしてもらう
- 絵本で「この子はどんな気持ちかな?」と一緒に考える
- 「悲しいときは青、うれしいときは黄色」など、色で表す工夫も効果的です
感情に名前をつけることで、子どもは少しずつ自分の気持ちを把握し、伝える力が育っていきます。
5. 怒らずに我慢できたら「しっかり認めて」ほめる
「怒らずに言えた」「我慢できた」という経験は、子どもにとって大きな自信になります。
✅ ほめ言葉の例:
- 「“かして”ってちゃんと言えたね、すごい!」
- 「手が出そうになったけど、止められたね」
- 「泣かずにお話しできたの、ママうれしいよ」
子どもは“怒らない方がうれしいことがある”と気づき、次もがんばろうと思えるようになります。
それでも怒りが強すぎる場合は?
- 毎日のように感情の爆発が起きる
- 友達に攻撃的な行動が続く
- 怒ると自傷的な行動(頭を打つ、物を壊す)がある
このような場合は、発達特性の影響や、環境へのストレスが背景にある可能性もあります。
✅ 相談先:
- 発達支援センター
- 児童発達支援事業所(療育センター)
- 小児神経科・児童精神科などの医療機関
診断が目的ではなく、「子どもに合った関わり方」を知るための相談として、気軽に活用してみてください。
まとめ:「怒る」ことは悪じゃない。表現の仕方を一緒に学ぼう
子どもが怒るのは、「困っている」「どうしたらいいかわからない」サインです。
- 感情を言葉で代弁する
- 落ち着ける時間や場所をつくる
- 振り返りの中で“次にできること”を一緒に考える
- 怒らなかったときの成功をしっかり認める
怒ることをやめさせるのではなく、「怒ってもいいけど、どう伝えるか」を一緒に練習していく。
その関わりが、子どもの自己コントロールの力を育てていきます。
「今日は少し怒らずにいられた」
その一歩を、一緒に大切にしていきましょう。