「何度言ってもできない…」子どもが行動しやすくなる伝え方とは?

「また同じことしてる」「さっきも言ったでしょ」——とイライラする前にできること
- 靴を揃えてと言っても毎回ぐちゃぐちゃ
- ごはんのときに席を立たないでと言ってもすぐ立つ
- お片付けの声かけに全く反応しない
「何回言ったらわかるの?」と、毎日同じ注意を繰り返し、疲れ果てていませんか?
でも実は、「子どもが聞いていない」のではなく、
「伝わり方が子どもに合っていない」だけかもしれません。
幼児にとって「言われたことを行動に移す」はとても難しい
大人にとっては何でもない行動でも、幼児にとっては意外と高度なスキルが必要です。
1. 言葉を理解する力
「靴を揃えて」と言われても、意味があいまいだったり、何をどうすればよいのかわからないことがあります。
2. 行動を切り替える力
遊びに夢中なときに声をかけられても、気持ちのスイッチがすぐには切り替えられません。
3. 記憶と実行のバランス
「覚えておく力(ワーキングメモリ)」と「実行する力(実行機能)」が、発達の途中段階にあるため、「わかっていても動けない」ということが多々あるのです。
「何度も言ってるのにできない…」と感じる3つの落とし穴
1. 抽象的な言葉を使っていない?
「ちゃんとして!」「そろそろ片付けなさい」
こうした抽象的な指示は、子どもにとっては“何をどうすればいいかわからない”場合があります。
✅ 解決のヒント:
- 「おもちゃを箱に入れてね」
- 「ブロックを青いかごに片付けてね」など、具体的な行動で伝えましょう。
2. 一度に複数の指示を出していない?
「靴を揃えて、そのあとカバンを出して、ご飯の前に手を洗って」
このように複数の指示が続くと、子どもの頭の中はパンクしてしまいます。
✅ 解決のヒント:
- 指示は1つずつ、順番に伝える
- 「まず靴を揃えよう。終わったら教えてね」→完了したら次の指示
3. 声かけのタイミングが合っていない?
子どもが集中して遊んでいるときや、気持ちが興奮しているときに注意しても、届かないのは当然です。
✅ 解決のヒント:
- 「今いいところだね。でもあと5分でおしまいにしようね」
- 「このブロックを置いたら片付けだよ」と予告を入れる
行動につながる!子どもに届く声かけ5つの工夫
1. 視覚を使って伝える
幼児は言葉だけで理解するのが難しいこともあります。
絵や写真、実物など“目で見てわかる”情報は、理解と行動に直結します。
✅ 具体例:
- 「おかたづけ」の絵カードを見せながら伝える
- 「おやつ→トイレ→おでかけ」の順番を写真で並べて伝える
- 洗面所に「手を洗う手順ポスター」を貼る
視覚情報は、ことばの理解が苦手な子にも効果的です。
2. 行動を“実況”する
「今、ブロックを片付けてるんだね。あと少しで終わるね」
「靴を揃えてくれてありがとう、キレイになったね」
このように“今していること”を言葉で実況すると、やっていることへの自信と達成感につながります。
✅ メリット:
- 子どもが「見てもらえている」と感じる
- 行動とことばが結びつきやすくなる
- 自分で行動をコントロールしやすくなる
3. 「選ばせる」ことでやる気を引き出す
「○○しなさい」より、「どっちにする?」という選択肢は、子どもに“主体性”を与えます。
✅ 例:
- 「先にお片付けする?先にトイレ行く?」
- 「このスプーンとフォーク、どっち使う?」
- 「これとこれ、どっちのおもちゃから片付ける?」
“自分で決めた”という感覚は、行動のモチベーションを高めてくれます。
4. 小さく区切って成功体験を積む
一度に「全部片付けて」と言われても、途方にくれる子も多いです。
まずは“できそうなこと”を小さく分けることで、達成しやすくなります。
✅ 例:
- 「まずはブロックだけ片付けよう」
- 「次は絵本、最後はぬいぐるみね」
- 「今日は5個だけできたらOK」→明日は6個に!
小さな成功体験を重ねることで、「やればできる」という自信が育ちます。
5. 行動できたら“即座に”ほめる
行動ができたときは、「タイミングよく、具体的に、肯定的に」ほめることがポイントです。
✅ 例:
- 「言われる前に片付けられたね、すごい!」
- 「最後まで頑張れたね、かっこいい!」
- 「お話ちゃんと聞いてくれてありがとう!」
「できたときにしっかり認める」ことで、子どもは“次もがんばろう”という気持ちになります。
どうしても伝わらないときは…
- 声をかけても返事がない
- 話している最中にどこかへ行ってしまう
- 何度も同じ説明をしても理解できていない
このような場合は、発達の特性(ASD・ADHD・言語理解の遅れなど)が関係している可能性もあります。
✅ 相談の選択肢:
- 児童発達支援センターや療育機関での発達相談
- 小児科や発達外来(ことばの遅れや実行機能の評価も)
- 園や学校の巡回相談員への連絡
「伝え方を変えても難しい」と感じたら、一人で抱えず、専門家の視点を借りることも大切です。
まとめ:「伝わらない」のではなく、「伝わり方」が違うだけ
子どもに声をかけたのに動いてくれないと、「聞いてないの?」「ふざけてるの?」と怒りたくなる気持ちは自然なことです。
でも、その多くは「伝え方の工夫」で、驚くほどスムーズに変わっていきます。
- 抽象的ではなく、具体的に
- 一度に複数ではなく、ひとつずつ
- 言葉だけでなく、視覚も活用して
- 成功体験を積ませて、自信につなげる
- 行動できたときは、すぐにしっかり認める
「伝え方を変える」ことは、「子どもを変える」ことではありません。
子どもの発達に寄り添いながら、一緒にできる方法を探っていく関わりです。
今日から、あなたの声かけが子どもに届く一歩を、始めてみませんか?