子どもの「こだわり」どう受け止める? 発達に合わせた関わり方

「同じ服しか着ない」「順番が違うと泣く」…そんな子どもにイライラしていませんか?
- いつも同じ服しか着たがらない
- 食べる順番が決まっていて、変えると泣き出す
- 絵本を読む順番やおもちゃの置き場所が決まっている
- 予定が変わるとパニックになってしまう
こうした「こだわり行動」は、子育て中の保護者にとって大きな悩みの一つです。
「またわがまま言ってる」「どうして同じことばかり」と、つい叱ってしまうこともあるでしょう。
でも実は、この「こだわり」には子どもの発達の大切な意味があるのです。
「こだわり行動」ってわがままなの?
大人にとって「同じ服ばかり着たがる」や「順番が変わるとパニックになる」は、ただの“わがまま”に見えるかもしれません。
でも、子ども自身は「こうしないと落ち着かない」「不安になる」という気持ちを抱えていることが多いのです。
特に発達特性のある子ども(自閉スペクトラム症:ASD、ADHDなど)は、環境の変化に対する敏感さや見通しの持ちにくさがあり、こだわり行動で自分を落ち着かせています。
つまり、こだわりは「安心」を得るための子どもなりの方法とも言えます。
子どもの「こだわり」3つの理由
1. 見通しが持ちにくいから
新しいことや変化に敏感な子どもは、日々の生活でも「先がわからない」と不安になります。
同じ服、同じ順番、同じルーティンは、「こうすれば大丈夫」という安心材料になります。
2. 感覚の敏感さからくるこだわり
肌触りの違い、音の大きさ、においなど、大人には気にならない感覚刺激を強く感じる子どももいます。
「この服じゃないと気持ち悪い」などは、その子の感覚の敏感さが影響していることがあります。
3. 自分でコントロールしたい気持ち
「自分で決めたい」「自分のやり方でやりたい」という自立心が芽生える時期でもあります。
特に3〜5歳頃の子どもは、「自分でやる!」が強くなる時期なので、こだわり行動が増えやすいのです。
こだわり行動を否定しないで「安心感」を育てる声かけ
こだわり行動を頭ごなしに「ダメ!」と否定すると、子どもはますます不安になってしまいます。
まずは「そうしたいんだね」と気持ちを受け止めることが大切です。
✅ 例:
- 「この服がいいんだね。今日はそれを着たいんだね」
- 「順番が違うとびっくりするよね」
- 「先にこの本を読まないと落ち着かないんだね」
このように、まずは“気持ちに寄り添う言葉”をかけることで、子どもは「わかってもらえた」と安心できます。
どう対応する?保護者ができる5つの工夫
1. できる範囲で「こだわり」を尊重する
毎日同じ服を着たがるなら、洗い替えを複数用意するなど、できる範囲でこだわりを受け入れる方法を探してみましょう。
✅ 例:
- 同じデザインのTシャツを数枚用意する
- 決まった順番を守れる範囲でスケジュールを組む
「全部は無理」でも「少しでもOK」の気持ちで対応してみてください。
2. 少しずつ「見通し」を持たせる
こだわりが強い子どもは、予定が変わると不安になります。
スケジュールや順番が変わるときには、必ず「予告」してあげましょう。
✅ 例:
- 「今日はいつもの順番じゃないけど、こっちを先に読むね」
- 「あと2回滑り台をしたらおうちに帰るよ」
- 写真やイラストのスケジュール表で見通しを示す
3. 代替案を提案する
どうしても譲れない状況(洗濯中で服がない、予定変更など)では、「無理やりやめさせる」のではなく、代わりの提案をしてみましょう。
✅ 例:
- 「今日はこの服が乾いてないから、この似ている服なら着られるかな?」
- 「いつもと違うけど、この順番も楽しいかもね、一緒にやってみようか」
「代わりの選択肢」を提示することで、子どもは気持ちを切り替えやすくなります。
4. 家庭内で「練習する時間」をつくる
いきなり保育園や外出先で対応するのはハードルが高いもの。
まずは家庭の中で、小さな変化を練習してみるのも一つの方法です。
✅ 例:
- いつもと違うコップでお茶を飲んでみる
- 絵本の順番を少しだけ変えてみる
- 洗濯したばかりの服を一度袖を通して感覚に慣らす
小さなチャレンジを積み重ねることで、変化への耐性が育ちます。
5. 保護者自身も「柔軟さ」を意識する
子どものこだわりにイライラしてしまうのは自然なことです。
でも、「またこだわってる!」と感情的になってしまうと、子どもはますます不安を強めてしまいます。
「この子なりに安心しようとしているんだ」と考え、
「今日は無理でも、明日また挑戦してみよう」という気持ちで向き合ってみてください。
「こだわりが強い=発達障害」なの?
こだわりが強いと、「発達障害なのでは?」と不安になる保護者も多いです。
実際、ASD(自閉スペクトラム症)の診断基準の一つに「こだわり行動」があります。
ただし、「こだわり=発達障害」と決めつけるのは早計です。
✅ 判断のポイント:
- 日常生活全般に支障が出ているか
- こだわりが強すぎて外出できない、着替えられないなど生活が著しく制限されているか
- お友達との関係がうまくいかないなど、集団生活で困っているか
もし「困り感」が大きい場合は、療育センターや発達相談窓口に相談してみましょう。
診断そのものより、子どもに合った支援を見つけることが大切です。
まとめ:「こだわり」は子どもの“安心感”を支えるもの
子どものこだわり行動は、発達の中で「安心したい」「不安を減らしたい」という気持ちの表れです。
- 見通しを持たせる
- 気持ちを受け止める
- 少しずつ練習する
- 無理せず、代わりを提案する
- 保護者も「柔軟さ」を意識する
大切なのは、「こだわりをやめさせること」ではなく、子どもが安心できる方法を一緒に探すことです。
「今日はいつもと違ったけど頑張ったね」
そんな一言が、子どもにとって大きな自信につながります。
一緒に少しずつ、「変化」や「柔軟さ」を育てていきましょう。