「落ち着きがない」「すぐ怒る」は育てにくさ?——“衝動性”が高い子の心の中をのぞいてみよう

「うちの子、すぐにカッとなって手が出てしまうんです…」
「保育園の先生から“集団生活が難しいかも”と言われて、ちょっと不安で…」
こんな風に、子どもの“衝動的な行動”に悩む保護者の方は少なくありません。
でも実は、こうした行動の奥には、「自分をうまくコントロールできない」「でも伝えたい気持ちがある」という、大切な“心の成長の過程”があるのです。
今日はそんな「衝動性の高い子ども」の見え方と関わり方を、保育現場での実践をもとにお話しします。
「乱暴な子」ではなく「困っている子」
保育園などで、“気になる子”として見られやすいのが、「すぐ手が出る」「順番を待てない」「切り替えができない」といった子どもたち。
でも実は、彼らの多くが“言葉で自分をコントロールする力”をまだ育てている途中なんです。
つまり、感情の起伏をうまく表現できなかったり、イライラや不安を抑える力がまだ育っていなかったりするということ。
「なんでそんなことするの!」と怒る前に、「そうか、この子は“どうしていいかわからなかった”んだ」と見てあげられると、関わり方が大きく変わります。
自尊心の育ちは“仲間との関わり”の中で起きていく
児童発達支援で、衝動性の高い子ども(Dくん)を2年半にわたって見守った実践があります。
最初は、少しでもうまくいかないと暴れたり、泣き叫んだり、物に当たったりしていたDくん。
でも、保育士さんたちは、Dくんの好きなこと・得意なことを集団の中で活かすようにしました。
- みんなの前で得意なことを発表する機会を作る
- 小さなグループで成功体験を積ませる
- 「あなたは大切な仲間だよ」と伝え続ける
こうした関わりの中で、Dくんは次第に「自分で気持ちを切り替えようとする姿勢」が見られるようになったのです。
「どうしたの?」と気持ちに寄り添うことで、行動は変わっていく
衝動性の高い子どもは、時に「攻撃的」と受け取られがちです。
でも実は、「自分でもどうしていいかわからなくて困っている」ことがほとんど。
そんなときに、
✅ 「なんでそんなことするの!」ではなく
✅ 「どうしたの?何がイヤだった?」と聞いてあげる
それだけで、子どもは「わかってもらえた」と感じ、気持ちを落ち着けることができます。
そして少しずつ、「今度はこうしてみようかな」と自分で考える力が育っていくのです。
親ができる、小さなステップの積み重ね
🔸 イライラしたときに深呼吸を一緒にする
🔸 上手くできたときは、思いきり褒めて抱きしめる
🔸 何かを選ばせて「自分で決める経験」を増やす
こうした日々の関わりが、子どもの“自己コントロール力”と“自尊心”をゆっくりと育てていきます。
最後に:「乱暴な子」と決めつけず、心の声に耳をすませて
衝動性の高い子どもたちは、「どうしたらいいのかわからない」ことがいっぱい。
でも、「わかってもらえた」「信じてもらえた」という経験が、自分を好きになる力(=自尊心)を育てます。
子どもの行動に困ったときほど、「この子の中にどんな思いがあるんだろう?」と、そっと心に寄り添ってみてください。
その優しい視線が、子どもにとっての“安心の土台”になります。