「切り替えができない!」——こだわりや順番への固執への対応

こんにちは。
子どもと日々を過ごす中で、こんな場面に出会ったことはありませんか?
- お風呂の順番がいつもと違うと大泣きする
- お出かけ前に予定を変更すると怒り出す
- お片づけの声かけをしても全く動かない
- 好きな遊びを終わらせられずにパニックになる
このような“切り替えの難しさ”や“こだわりの強さ”に、戸惑っている保護者の方はとても多くいらっしゃいます。
一見すると「わがまま」や「頑固」にも見えるかもしれませんが、実はこのような行動の背景には、発達特性や脳の働きの個性が関係していることもあります。
今回は、子どもの「切り替えが難しい」理由と、家庭でできる具体的な支援方法をお伝えします。
第1章 「切り替えが苦手」ってどういうこと?
“切り替え”とは、ある活動から次の活動へスムーズに移るための心と頭の動きのことです。
たとえば、
- 楽しかった遊びを終わらせてごはんに向かう
- 予定していたことが変更されたときに気持ちを整理する
- うまくいかない場面で気持ちを立て直す
このような柔軟な対応は、実は高度な脳の働きが必要なのです。
✅ 関係する発達スキル
- 実行機能(考えて行動する力)
- 感情の調整力(セルフコントロール)
- 見通しを持つ力(予測・理解)
- 感覚の処理(変化に対する敏感さ)
- 不安への耐性
これらのスキルが未熟だったり、発達特性がある場合、「急に変わること」「終わること」に強い不安や混乱を感じてしまいます。
第2章 なぜ“こだわる”の?切り替えられない理由
(1)見通しが持ちづらく、変化が怖い
→ 次に何が起きるか分からない状況では、安心できずに不安になります。
(2)自分のペースや順序に“安心”している
→ 特定の順番・ルールに従うことで、世界が理解しやすくなっている場合があります。
(3)集中していることから“離れる”のが難しい
→ 楽しい・夢中な活動を中断されることが、頭の中で整理しきれないストレスになります。
(4)予定が変わること自体が“不快”
→ ASD傾向のある子には、変化そのものが強い不快感・混乱を引き起こす要因になります。
第3章 家庭でできる「切り替え支援」5つの工夫
(1)“次が分かる”ようにしてあげよう
→ 子どもは、「終わる」ときよりも、「何が次に来るのか分からない」ことに不安を感じています。
✅ 具体例:
- 「お片づけしたら、おやつにしようね」
- 「あと5分で遊び終わりだよ」
- 「今はお風呂の時間。そのあと絵本を読もうね」
→ 見通しが持てると、“気持ちの準備”がしやすくなります。
(2)視覚的に示す(スケジュール表・タイマーなど)
言葉だけでの説明では理解が難しい場合は、視覚支援が有効です。
✅ ツール例:
- 絵カードで1日の流れを提示
- キッチンタイマーで5分前をカウントダウン
- ホワイトボードで予定を一覧表示
→ 視覚で「順番」や「終わり」が見えると、安心しやすくなります。
(3)“切り替えの練習”を日常で繰り返す
小さな「切り替え成功体験」を積み重ねることが大切です。
✅ 例:
- 「あと3回すべったら終わりね」
- 「おしまいのうたを歌って終わりにしよう」
- 「手伝ってくれてありがとう」と肯定的に終われる工夫
→ 成功体験が、「次はうまくいくかも」という自信につながります。
(4)“移行アイテム”を活用する
→ お気に入りのぬいぐるみや小物を「次の活動に連れて行く」ことで、心の移行をサポートします。
✅ 例:
- お気に入りのぬいぐるみを持って食卓へ
- クッションや毛布をリラックスタイムに持っていく
- 小さな玩具を持ってお風呂へ
→ 「変わること」への不安を軽減し、“安心の橋渡し”になります。
(5)予定の変更は“先に説明・理由を添えて”
変更が必要なときは、事前に知らせる・納得感のある理由を添えることが大切です。
✅ 例:
- 「今日は雨だから、公園はやめておうちで遊ぼうね」
- 「ママの病院に行くことになったから、少し予定を変えるね」
→ 「知らなかった」「予想してなかった」という状況が、いちばん混乱を招きます。
第4章 “強いこだわり”が見られるときの注意点
こだわりは、すべてが悪いわけではありません。
安心・理解・楽しみを感じているからこそ生まれるものであり、本人にとって意味のある行動です。
しかし、以下のような場合は、専門的な視点での支援を検討することも重要です。
- 予定の変更や切り替えが毎回パニックになる
- こだわりが強く、生活に支障をきたしている
- 他児とのトラブルが頻発する
- ASDやADHDなどが疑われる
→ 児童発達支援、療育センターによる支援で、“なぜ困っているか”を一緒に整理し、支援方針を立てることができます。
最後に:「切り替えられない」のは、困っているサインかもしれない
子どもが泣いたり怒ったりして切り替えられないと、つい大人は「頑固だな」「言うことを聞いてほしい」と感じてしまいます。
でも本当は、「どうしていいか分からない」「変わるのが怖い」という気持ちがあるのかもしれません。
- 見通しを持てる環境を
- 安心できる言葉がけを
- 小さな“できた”の積み重ねを
こだわりや不安も、“発達のひとつの姿”として受け止めながら、
「少しずつでも変われたね」を一緒に積み上げていけたら、子どもはきっと自信を持って前に進んでいけます。
「切り替える力」は、焦らず育てていく力。
できなかったときほど、寄り添うチャンスです。