“同じ服しか着ない!”〜こだわりの強さと安心のサイン〜

「その服じゃなきゃイヤ!」で困ってしまう朝
「お気に入りの服ばかりで、毎日同じTシャツを着たがる」
「新しい洋服を買っても、絶対に着てくれない」
「洗濯中だと泣き叫んで着替えができない」
こんな“服へのこだわり”に困っている保護者は多いです。忙しい朝に「その服じゃなきゃイヤ!」と大騒ぎされると、登園や外出の準備も大変になり、親子ともにストレスがたまります。
でも実は、この「同じ服しか着ない」には、子どもにとっての安心や感覚の違いが隠れています。この記事では、その背景と意味、そして保護者の方ができる工夫をご紹介します。
第1章:なぜ「同じ服しか着ない」のか?
① 感覚の特性によるもの
子どもは服の「肌ざわり」「タグの刺激」「締めつけ感」などを強く感じることがあります。
- 綿素材なら安心できる
- タグや縫い目がチクチクして着られない
- 袖や首回りのゆとりが必要
このように、服の感覚の違いが大きなストレスになる子もいます。
② 見通しの安心感
「いつもと同じ服を着ている」ということが、子どもにとっての安心材料になることもあります。変化が苦手な子は「同じ服」で安心を得ているのです。
③ 自己表現の一部
「これが好き!」という気持ちを服で表している場合もあります。服を通して自分らしさを示しているのです。
第2章:「同じ服しか着ない」は問題ではない
「同じ服を着るのはおかしいのでは?」と心配になるかもしれませんが、多くの場合は発達の過程で見られる自然な姿です。
重要なのは「こだわりそのものが悪いのではなく、安心や自己表現につながっている」という理解です。
第3章:保護者ができる寄り添い方
① 感覚に配慮する
子どもが嫌がる素材やタグは避け、安心して着られる服を選びましょう。
声かけ例
- 「この服、チクチクしないかな?触ってみようか」
- 「柔らかい生地で気持ちいいね」
② 同じ服を複数用意する
お気に入りの服を洗濯して着られないと大騒ぎになる場合は、同じ服を数枚そろえておくのも一つの方法です。
声かけ例
- 「今日は同じTシャツのもう1枚を着ようね」
- 「これも○○ちゃんの大好きな服だよ」
③ 少しずつバリエーションを広げる
いきなり新しい服を強制するのではなく、「似ている色や素材」から少しずつ試していきます。
声かけ例
- 「この服、いつものに似てるよ。ちょっと試してみる?」
- 「同じ色だから安心できるね」
④ 子どもの気持ちを尊重する
「どうしても嫌な服」を無理に着せると、服=不快な体験となってしまいます。気持ちを受け止めることで、子どもは安心しやすくなります。
声かけ例
- 「この服は嫌なんだね。じゃあ別のを探そう」
- 「○○ちゃんが心地よい服を一緒に選ぼう」
第4章:場面ごとの工夫
登園前の朝
朝の忙しい時間に「イヤ!」が出やすいので、前日に服を一緒に選んでおくとスムーズです。
声かけ例
- 「明日はこの服にしようね」
- 「どっちの服を着たい?」
外出先
外出用に「安心できる服」をあらかじめ決めておくと、子どもも安心して出かけられます。
声かけ例
- 「お出かけ用のお気に入りの服を着ようね」
- 「これを着たら楽しいところに行けるよ」
第5章:支援を考えるタイミング
服へのこだわりは自然な姿ですが、以下の場合には相談を検討すると安心です。
- 服のこだわりが強すぎて生活に支障が出ている
- 感覚過敏が強く、着られる服が極端に少ない
- 着替えに強い拒否反応を示し、毎日が大きなストレスになっている
発達相談や小児科で相談することで、感覚特性に応じた具体的な支援を受けられます。
最後に:「同じ服しか着ない」のは安心のサイン
「同じ服しか着ない」という姿は、子どもにとって安心や自己表現の大切なサインです。
- 感覚の違いが影響していることがある
- 「同じ服」を選ぶのは安心したい気持ちの表れ
- 少しずつ無理なくバリエーションを広げられる
「こだわり」は育ちの一部であり、子どもの大切な個性でもあります。保護者が受け止めてくれることで、子どもは安心して次のステップに進んでいけます。
今日も「その服が好きなんだね」という気持ちに寄り添いながら、少しずつ新しい挑戦を応援していきましょう。