兄弟喧嘩の後に「ごめんなさい」と言わせるべき?〜謝罪の強要と、自発的な心の変化。親が教えるべき本当の「謝罪」とは〜

兄弟が喧嘩した後、多くの親が子どもたちに言う言葉があります。それは、ごめんなさいと言いなさい、という言葉です。親にしてみれば、喧嘩の後に謝罪させることは、当然のしつけだと考えるかもしれません。
しかし、実は親が強制的に謝罪させることで、子どもが学ぶべき大切なことが失われてしまう可能性があります。本当の謝罪とは、親の指示によって生まれるものではなく、子ども自身が相手の気持ちに気づき、自発的に表現されるものなのです。親がどのような対応をするかで、子どもが学ぶ「謝罪」の意味は大きく変わっていきます。
子どもが謝罪する理由の違いを理解する
親に言われたから謝罪する
多くの場合、親が強制的に謝罪させると、子どもは親を怖れて、ごめんなさい、と言うようになります。しかし、この謝罪には、相手を傷つけたことへの気づきや、反省がありません。
子どもは、単に親に言われたからという理由で、言葉を発しているだけなんです。その結果、同じ喧嘩が何度も繰り返されることになります。
相手の気持ちに気づいて謝罪する
一方、子どもが自発的に謝罪する場合、その背景には、相手の気持ちへの気づきがあります。自分の行動によって、相手が傷つけられたことに気づいた時、子どもは自然と謝りたくなるんです。
この謝罪には、本当の反省が含まれており、子どもの行動の改善につながることが多いのです。
親に怒られるのを避けるための謝罪
子どもが謝罪する理由の一つに、親に怒られるのを避けたいという気持ちもあります。この場合、子どもは相手の気持ちではなく、親の顔色を伺いながら謝罪しているのです。
結果として、子どもは、親の前では謝罪するが、親がいない場面では、同じ行動を繰り返すという傾向が生まれることがあります。
親が強制的に謝罪させることの弊害
子どもが「相手の気持ち」を考えることから遠ざかる
親が謝罪を強制すると、子どもは、相手がどう感じているのか、という思考が後景に退き、親が何を要求しているのか、という思考が優先されるようになります。
結果として、子どもが発達させるべき、共感能力が育たないリスクが生まれるんです。
親への信頼感が損なわれる可能性
強制的な謝罪は、子どもにとって、親からの支配的な行動に感じられることがあります。この経験が積み重なると、子どもは親を信頼しにくくなり、親子関係の質が低下することもあります。
「謝罪は嫌なもの」という認識が生まれる
親が強制的に謝罪させると、子どもは、謝罪を、親の指示に従う嫌な行動、と認識するようになります。その結果、大人になった後も、謝罪することが苦手な人間になってしまう可能性があるんです。
兄弟喧嘩の後に、親が本当にすべきこと
まず「喧嘩」を止める
最初に親がすべきことは、暴力に発展していないか、どちらかが怪我をしていないか、という安全面を確認することです。もし暴力に発展していたら、そこは親が止めることが必要です。
実践のポイント
- 物理的な暴力は、親が介入して止める
- 安全が確保されたら、落ち着く時間を子どもたちに与える
- その時点では、説教をしない
両者の気持ちを、落ち着いた後に聞く
喧嘩の直後ではなく、子どもたちが落ち着いた後に、それぞれの気持ちを聞くことが大切です。
実践のポイント
- 一人ずつ、別々に話を聞く
- 話を遮らず、最後まで聞く
- どちらが悪いか、という判断をしない
親が丁寧に聞くという姿勢を見せることで、子どもたちは、親が自分たちを理解しようとしている、と感じるようになります。
相手の気持ちを、言葉で代弁する
親が聞いた二人の気持ちを、相手にも伝えることが大切です。この時、親は相手の気持ちを言葉で代弁する役割を果たします。
実践のポイント
- 兄のお話を聞いて、兄は、こう感じていたんだね、と妹に伝える
- 妹のお話を聞いて、妹は、こう感じていたんだね、と兄に伝える
- 親が中立的に、両者の気持ちを紹介する
親がこのような代弁をすることで、子どもたちは、相手も自分と同じように気持ちを持っているんだ、ということに気づき始めるんです。
相手の気持ちに気づいたか、確認する
親が両者の気持ちを伝えた後、子どもたちが相手の気持ちに気づいたかどうか、確認することが大切です。
実践のポイント
- あなたが言ったことで、お友達は、こんな気持ちになったって、どう思う、と問いかける
- 子ども自身に考えさせる時間を与える
- 無理に気づかせようとしない
子どもが自分自身で、相手の気持ちに気づく、というプロセスが、本当の成長につながるのです。
自発的な謝罪を待つ
相手の気持ちに気づいた後、子どもが自発的に謝罪するかどうか、親は、ただ待つ、ということが大切です。
実践のポイント
- ごめんなさい、と言いなさい、という指示をしない
- 親は、静かに様子を見守る
- 子どもが自発的に謝罪した時に、その行動を認める
親が、謝罪を強制しない、という姿勢を見せることで、子どもは、本当の謝罪の意味を学んでいくのです。
謝罪がなくても、責めない
もし子どもが、相手の気持ちに気づいても、謝罪しない場合もあります。その時、親は、その選択を責めないことが大切です。
実践のポイント
- 子どもの選択を尊重する
- 後に、別の時間に、もう一度、相手の気持ちについて考える機会を作る
- 時間をかけて、子どもが気づくのを待つ
親が、長期的な視点を持つことで、子どもの心の成長を支えることができるようになります。
実際の場面での対応例
【場面1】兄弟が喧嘩した直後の場合
❌親の悪い対応: 何してるの、ごめんなさいと言いなさい、と即座に謝罪させる
✅親の良い対応: お互いに冷静になるまで、別々の場所で過ごす時間を作る。その後、それぞれの気持ちを聞く
親のポイント
- 喧嘩の直後は、説教や謝罪の指示をしない
- 子どもたちが落ち着くまで、待つ
- その後、丁寧に話を聞く
【場面2】兄が妹を叩いた場合
❌親の悪い対応: 兄に、ごめんなさい、と言わせ、その後、説教する
✅親の良い対応: 兄に、妹はどう感じていると思う、と問いかける。妹の気持ちを代弁し、兄が妹の気持ちに気づくまで、待つ
親のポイント
- 兄に対して、妹の気持ちを想像させる
- 親が相手の気持ちを言葉で代弁する
- 兄が自発的に気づくプロセスを尊重する
【場面3】子どもが謝罪しない場合
❌親の悪い対応: ごめんなさいと言わないと、罰する、と脅す
✅親の良い対応: お姉さんは、今、気づくのに、もう少し時間が必要なんだね、と捉え、また別の機会に、同じように、相手の気持ちについて、考える機会を作る
親のポイント
- 謝罪を強制しない
- 子どもの成長のペースを尊重する
- 長期的な視点を持つ
【場面4】子どもが自発的に謝罪した場合
❌親の悪い対応: ああ、やっと気づいたか、と淡々と応じる
✅親の良い対応: そっか、妹の気持ちに気づいて、謝りたくなったんだね。その気持ちが素敵だ、と子どもの気づきと行動を認める
親のポイント
- 自発的な謝罪を心から認める
- その行動が大切だ、ということを伝える
- 子どもの成長を喜ぶ
本当の謝罪が育むもの
子どもが相手の気持ちに気づき、自発的に謝罪するという経験を通じて、子どもは何を学ぶのでしょうか。
それは、自分の行動が相手にもたらす影響、相手の感情を大切にすること、そして、相手を傷つけてしまった時に、自分から行動を改めたいと思う心、という、人間関係の基盤となるものなんです。
この学習を通じて、子どもは、親の指示によってではなく、自分の判断で、相手に配慮した行動が取れるようになっていくのです。
療育現場での実例
ある親は、兄弟の喧嘩の度に、ごめんなさいと言わせていましたが、喧嘩は何度も繰り返されていました。
親が、謝罪の強制をやめて、代わりに、相手の気持ちを聞き、それを代弁する、という対応に変えると、兄が、妹の気持ちに気づき始めたのです。
数週間後、兄が自発的に妹に謝罪するようになり、その後、喧嘩そのものが減少していった、と親は報告しました。
重要だったのは、親が謝罪を強制するのではなく、子どもが相手の気持ちに気づくプロセスをサポートする、という対応だったのだと思います。
謝罪は、親からのプレゼント
親が、相手の気持ちに気づくまでのプロセスを忍耐強くサポートすることで、子どもは、本当の謝罪の意味を学んでいきます。
その経験が、子どもが大人になった時に、相手の気持ちを大切にできる人間へと育たせていくのだと思うのです。
親が強制的に謝罪させるのではなく、子どもが自発的に相手を思いやる心を育てることが、親にできる最高のギフトです。
今日も、兄弟たちが喧嘩をしているでしょう。その時、親が、相手の気持ちに気づくまでのプロセスを一緒に歩む、という選択をすることで、子どもの心の中に、本当の思いやりが育まれていくと私は思います。