子どもが「僕は、できない子だ」と自分を否定する言葉が増えた〜自己否定感の根源と、保護者からの「別の見方」の提供方法〜

子どもが「僕は、できない子だ」「私は、ダメな子だ」というような自分を否定する言葉を繰り返すようになった。保護者にしてみれば、そんなことはないと思うのに、子どもはそう感じている。この状況に、多くの保護者は戸惑いを感じるかもしれません。
しかし、実は子どもが自分を否定する言葉を発するようになったのは、何か理由があるということなんです。その理由を理解し、保護者がどのように子どもに接するかで、子どもの自己イメージは大きく変わっていきます。子どもの自己否定感は、一時的なものではなく、その後の人生を左右する可能性さえあるのです。
子どもが自分を否定する理由
失敗経験の蓄積
子どもが自分を否定し始める背景には、失敗経験の蓄積があることが多いです。勉強についていけない、スポーツで上手くいかない、友達関係で上手くいかないという経験が積み重なると、子どもは自分のことをネガティブに捉えるようになっていきます。
一度や二度の失敗は誰もが経験しますが、それが何度も繰り返されると、子どもの心に「自分はできない」という信念が固定化してしまうんです。
保護者や周囲の大人からのネガティブなメッセージ
保護者が気づかないうちに、子どもに対して、あなたは○○が下手だね、あなたは運動ができない子だね、というような言葉がけをしていることがあります。
これらの一見、些細な言葉が、子どもの自己イメージを形作り、子ども自身が自分を否定する言葉につながっていくのです。
学校や園での評価
学校の成績、先生からのコメント、友達との比較。これらの評価が、子どもの自己イメージに大きな影響を与えることがあります。
特に、親からのメッセージよりも、学校の先生からのコメントや、友達との比較が、子どもに深い影響を与えることがあるんです。
子ども自身の完璧主義傾向
完璧さを求める傾向が強い子どもの場合、自分が完璧でないことに対して、強い自己否定感を持つことがあります。
自分のイメージと現実のギャップに苦しみ、それが自分を否定する言葉につながっていくのです。
発達段階での自己認識の変化
4~5歳以降、子どもは自分がどのような人間なのかを、より正確に認識し始めます。それまで気づかなかった自分の弱さや、友達との違いに気づき始めるのです。
この発達段階での気づきが、自己否定感につながることもあるんです。
子どもの自己否定感が生み出す影響
新しいことに挑戦しなくなる
自分はできないと思い込んでいる子どもは、新しいことに挑戦することを避けるようになります。
なぜなら、挑戦することで、また失敗して、自分はできない子だという信念が強まるのを恐れているからなんです。
学習意欲の低下
自分はできない子だという認識があると、勉強への動機づけが失われ、学習意欲が低下していきます。
この状態が長く続くと、実際に学習が進まなくなり、悪循環に陥ってしまうのです。
人間関係の問題
自分はダメな子だという自己否定感を持つと、子どもは友達と関わる時にも、その感情が表れることがあります。
積極的に関わることができなくなったり、相手の言葉を過剰に受け取ったりすることもあるんです。
心身の健康への影響
強い自己否定感が続くと、子どもの心の健康に影響を与えることがあります。
不安感の増加、睡眠の問題、身体症状の出現などが起こることもあります。
保護者が子どもの自己否定感に対してすべきこと
まず「その感情を受け止める」
子どもが自分を否定する言葉を言った時、保護者がすぐに「そんなことはない」と否定するのではなく、その感情を受け止めることが大切です。
実践のポイント
- そっか、そう感じているんだ、と子どもの気持ちを認める
- その感情は自然だ、というメッセージを示す
- 子どもが感じていることが悪いわけではない、ことを伝える
保護者が子どもの感情を受け止めることで、子どもは自分の気持ちが大事にされていると感じるようになります。
「できなかったこと」ではなく「できたこと」に焦点を当てる
保護者がすぐに直すべきなのは、子どもとの会話の中で、できなかったことよりも、できたことや工夫したことに焦点を当てるということです。
実践のポイント
- 完璧にできなかったけれど、ここは工夫してたね、と認める
- すべてが駄目ではなく、ここは素晴らしかった、という見方をする
- 子どもが見落とした「できたこと」に保護者が気づく
保護者がこのような別の見方を提供することで、子どもは自分の中に「できるところもある」という認識を少しずつ形成していくのです。
「結果」ではなく「プロセス」を褒める
子どもの自己否定感を減らすために、保護者が褒めるべきなのは、完璧な結果ではなく、そこに至るプロセスなんです。
実践のポイント
- 失敗したけれど、頑張ったね、と褒める
- 何度も試行錯誤する姿勢そのものが素晴らしい、と伝える
- 結果の良し悪しではなく、そこに向かう過程を認める
保護者がこのような褒め方をすることで、子どもは「完璧でなくてもいい」「努力することが大事」という価値観を獲得していくのです。
保護者自身の「ネガティブな言葉がけ」を減らす
保護者が気づかないうちに、子どもに対して、あなたは運動が苦手だね、というようなレッテル貼りをしていないか、確認することが大切です。
実践のポイント
- 子どもに対して、特定の能力に関するレッテルを貼らない
- 一つの失敗から、全体を判断しない
- 子どもは常に変化している、という認識を持つ
保護者の言葉がけが変わることで、子どもが自分に対して持つイメージも、少しずつ変わっていくのです。
「別の見方」を提供する
子どもが自分を否定する言葉を言った時、保護者が「別の見方」を提供することが大切です。
例えば、子どもが「僕はテストで失敗した、だからできない子だ」と言った場合、保護者は「そっか、テストで失敗した気持ちはつらいね。でも、勉強を頑張ってたじゃない。次は、ここを工夫してみようか」という別の見方を示すことができます。
実践のポイント
- 同じ出来事を、別の角度から見せる
- ネガティブな解釈だけで終わらせない
- 希望や改善の可能性を示す
保護者がこのような別の見方を繰り返し示すことで、子どもは自分の出来事を、より柔軟に捉えられるようになっていくんです。
「得意な分野」を一緒に探す
子どもが自分を否定している場合、その反対に、子どもが得意とする分野や活動を一緒に探すことが有効です。
実践のポイント
- 子どもが何に興味を示しているか、観察する
- 親の期待ではなく、子ども自身がやりたいことを尊重する
- 得意なことを通じて、成功体験を積ませる
子どもが得意な分野で成功体験を積むことで、その子の中に「自分にもできることがある」という感覚が育まれていくのです。
必要に応じて「専門家に相談する」
子どもの自己否定感が強く、改善の兆しが見られない場合、スクールカウンセラーなどの専門家に相談することが大切です。
実践のポイント
- 自分たちだけで解決しようとしない
- 専門家のサポートを受けることは、決して弱いことではない
- 早い段階での相談が、より良い結果につながる
保護者がプロの助言を求めることで、子どもへのサポートの質が向上していくのです。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが「僕はできない子だ」と言う場合
❌保護者の悪い対応: そんなことはない、あなたはできる子だ、と即座に否定する
✅保護者の良い対応: そっか、そう感じているんだ。何があったの、と子どもの気持ちを聞く。その後、ここは上手だったね、という別の見方を提供する
保護者のポイント
- 子どもの感情を受け止める
- すぐに否定しない
- 別の視点を提供する
【場面2】子どもが失敗してしまった場合
❌保護者の悪い対応: だから言ったでしょ、あなたはそういう子だ、とレッテルを貼る
✅保護者の良い対応: そっか、上手くいかなかったね。でも、ここまで頑張ったじゃない。次はどうしてみようか、とプロセスを褒めて、改善策を一緒に考える
保護者のポイント
- 結果だけで判断しない
- プロセスを褒める
- 改善の可能性を示す
【場面3】学校の先生からネガティブなコメントをもらった場合
❌保護者の悪い対応: 学校の先生がそう言うなら、あなたはそういう子なんだ、と子どもに伝える
✅保護者の良い対応: 学校の先生はそう見えたのかもね。でも、ママから見ると、ここは素敵だ、と別の見方を提供する。その後、学校の先生と子どもの状態について、詳しく相談する
保護者のポイント
- 学校の評価を鵜呑みにしない
- 保護者の視点からの見方も示す
- 学校側とも連携する
【場面4】子どもが新しいことに挑戦を躊躇している場合
❌保護者の悪い対応: やってみなさい、と命令する
✅保護者の良い対応: やってみたい気持ちもあるけど、怖いんだね。その気持ちはよく分かるよ。では、ママもそばにいるから、一緒にやってみようか、と子どもの不安を認めつつ、サポートを提供する
保護者のポイント
- 子どもの不安を認める
- 無理に挑戦させない
- サポート体制を示す
自己否定感は、保護者との関わりで変わっていく
子どもが自分を否定する言葉を言い始めたのは、何か理由がある。その理由を理解し、保護者がどのように子どもに接するかで、子どもの自己イメージは大きく変わっていきます。
保護者が「別の見方」を繰り返し提供すること、プロセスを褒めること、できたことに焦点を当てることで、子どもの中に、少しずつ「自分にもできることがある」という認識が形成されていくのです。
療育現場での実例
ある子どもは、学校での失敗経験から、自分はできない子だと繰り返し言うようになっていました。保護者は、その度に「そんなことはない」と否定していました。
保護者が、その感情を受け止め、代わりに「別の見方」を提供するという対応に変えると、子どもは保護者からのメッセージを、より素直に受け入れるようになったのです。
数ヶ月かけて、子どもの中に「自分にも得意なことがある」という認識が形成され、新しいことへの挑戦も増えていきました。
重要だったのは、保護者が「別の見方」を繰り返し示す、という根気強い対応だったのだと思います。
子どもの自己イメージは、保護者とのやりとりの中で形成される
子どもが自分をどう見るかは、保護者がその子をどう見ているか、どう言葉がけしているか、に大きく影響されていきます。
保護者が「別の見方」を提供し、プロセスを褒め、できたことに焦点を当てるという対応を繰り返すことで、子どもは徐々に、自分のことを肯定的に捉えられるようになっていくのです。
その肯定的な自己イメージが、子どもが人生で困難に直面した時に、それを乗り越える力になっていくのだと思うんです。
今日も、どこかで子どもが自分を否定する言葉を言っているでしょう。その時、保護者が「別の見方」を提供できるかどうかで、その子の人生が大きく変わっていく可能性があるのです。