言葉が詰まる・繰り返す・・・これは成長の過程?それとも支援が必要?

子どもが話す時に「ぼ、ぼ、ぼくは」と言葉を繰り返したり、「あ、あ、あのね」と言葉が詰まったりすることがあります。多くの保護者は、この現象を見ると「吃音かもしれない」と不安を感じるようになります。
吃音は「治すべき悪い癖」だと考える保護者も多いでしょう。あるいは「将来、対人関係に支障が出るのではないか」と心配する保護者もいるかもしれません。しかし、実は子どもが言葉を繰り返したり、言葉が詰まったりすることは「言語発達の過程での、自然な現象」であることが多いのです。
ただし、その全てが「自然な発達の範囲内」とは限らず「早期の支援が必要」な場合もあるのです。保護者が「発達の過程と病理的な吃音の違い」を理解することで「子どもへの対応」が大きく変わっていきます。
子どもが言葉を繰り返す、詰まる理由
思考の速度と言語表出の速度の「ズレ」
子どもの脳の中では「何か言いたい」という思考が、光の速度で処理されています。しかし、その思考を「言葉に変換し、口から出す」というプロセスは「かなり複雑」であり、時間がかかるのです。
このズレが「言葉の繰り返し」や「言葉が詰まる」という現象を生み出していくのです。言いたいことが「たくさん」あるのに「言葉にするのが間に合わない」というような状態が生じているわけです。
語彙が増えるにつれて、言語処理が複雑になる
子どもが幼い頃は「語彙が少ない」ため「言語処理は比較的シンプル」です。しかし、発達とともに「使える単語が増え」「表現が複雑になる」につれて「言語処理が複雑」になっていきます。
この複雑性の増加に「脳の処理能力が追いつかない」という状況が、言葉の繰り返しや詰まりを生じさせるのです。つまり「語彙が増えている証」でもあるわけです。
興奮状態や緊張状態での「言語の不安定さ」
子どもが何かに夢中になっている時、あるいは興奮している時に「言葉が繰り返される」ことがあります。また、緊張している時に「言葉が詰まる」ことも多いのです。
このように「心理状態に応じて、言語の流暢性が変わる」というのは、発達過程での自然な現象なのです。
文法構造の習得に伴う「言語的な葛藤」
子どもが新しい文法構造を学んでいる時に「言葉が繰り返される」ことがあります。例えば「過去形」を習い始めた時に「あ、あの時、あ、あ」というような繰り返しが見られることがあります。
これは「新しい文法構造を駆使しながら、話そうとしている」という「発達のプロセス」なのです。
発達過程での言葉の繰り返しと、病理的な吃音の違い
発達過程での繰り返しの特徴
発達過程での言葉の繰り返しには「いくつかの特徴」があります。一音や一語の繰り返しであり、比較的「リズミカル」であり、話し手が「不安そうでない」というのが特徴です。
また「特定の場面に限定される」「時間とともに自然に改善していく」「語彙の増加に伴って見られる」という特徴を持っています。
さらに「夜間や疲れた時に見られやすい」「興奮や緊張時に見られやすい」という「心理状態に左右される」特徴も持っています。
病理的な吃音の特徴
一方、病理的な吃音には「異なる特徴」があります。複数の音や語での繰り返しであり「音延長」(音を長く引っ張る)が見られることもあります。
話し手が「明らかに不安そう」「困っている様子」が見られ「どの場面でも繰り返される」という特徴があります。
また「時間経過とともに改善されず、むしろ悪化する傾向」「保護者からの指摘によって、症状が強まる」「話すことへの恐怖心が生じている」という特徴を持っています。
言語発達と吃音が出やすい時期
2~3歳:初語から2語文への移行期
この時期は「語彙の爆発的な増加」が起こり「言葉が繰り返される」ことが多いのです。これは「自然な発達現象」であり「心配の必要がない」ことがほとんどです。
3~4歳:複文構造の習得時期
この時期は「より複雑な文法構造を習得」しており「言葉が詰まる」ことが多くなります。これも「発達のプロセス」であり「時間とともに自然に改善される」ことがほとんどです。
4~5歳:表現の多様化時期
この時期に「繰り返しや詰まりが見られる場合」でも「多くの場合は自然に改善される」のです。ただし「この時期を過ぎても、繰り返しが顕著に見られる」場合は「専門家への相談」を検討する時期になります。
6歳以降:学童期への移行
この時期に「繰り返しや詰まりが見られる」場合「学校の環境による緊張」が原因であることもありますし「吃音が定着し始める可能性」もあります。
この段階で「症状が明らかに見られる」場合は「専門家への相談」を強く推奨する時期です。
保護者が「言葉の繰り返し」に直面した時の対応
「発達過程の一部」として受け入れる
最初に大切なのは「子どもが言葉を繰り返す、詰まるという現象は『多くの子どもが経験する』発達過程」だと認識することです。
実践のポイント
- 言葉の繰り返しを「悪いこと」だと思わない
- 「この子の言語が発達している証」だと認識する
- 保護者が「平常心」で対応する
保護者がこのような認識を持つことで「子どもが『親の不安』を察知する」ことがなくなり「むしろ言語発達が正常に進む」ようになります。
「否定的な指摘」は絶対に避ける
子どもが言葉を繰り返している時に「ゆっくり話しなさい」「落ち着いて話しなさい」というような指摘をしてはいけません。
実践のポイント
- 繰り返しや詰まりに対して「注意」しない
- 子どもの話を「そのまま受け入れる」
- 修正や改善を求めない
保護者が「否定的な指摘をする」と「子どもが『話すこと』に対する不安」が生じ、かえって「吃音が悪化する」可能性があるのです。
「ゆっくり話す」というモデルを示す
子どもに「ゆっくり話しなさい」と指導するのではなく「保護者がゆっくり話する」というモデルを示すことが有効です。
実践のポイント
- 保護者自身がゆっくり、はっきり話すようにする
- 子どもとの会話で「間」を大切にする
- 子どもが話すのを「急かさない」
保護者がこのような「ゆっくりとしたコミュニケーションのモデル」を示すことで「子どもは自然と、落ち着いて話すようになる」かもしれません。
「話す場面」を作り、言語活動を促進する
子どもが「楽しく話す」という経験を増やすことが「言語発達を促進し」「吃音を軽減する」ことにつながります。
実践のポイント
- 食事の時に「今日は何が楽しかった」と話させる
- 親子で対話する時間を作る
- 子どもの話を「最後まで聞く」という姿勢を示す
保護者がこのような「話す機会」を作ることで「子どもが話すことに対する自信」が生まれ「言語発達が促進される」のです。
「心理的な安定感」を与える
吃音が「心理的な不安定さ」と関連していることがあります。保護者が「親として、十分にサポートしている」という安心感を子どもに与えることが大切です。
実践のポイント
- 子どもの話を「最後まで」聞く習慣をつける
- 話の内容に「共感」を示す
- 親が「この子のそばにいる」という安定感を与える
保護者がこのような「心理的なサポート」をすることで「子どもの心が安定」し「自然と言語も安定する」ようになるでしょう。
専門家に相談するタイミングを知る
「全ての言葉の繰り返しが吃音である」わけではありませんが「支援が必要な場合」もあります。専門家に相談するタイミングを知ることが重要です。
実践のポイント
- 5~6歳を過ぎても「繰り返しが顕著」な場合は相談を検討する
- 子どもが「話すことへの不安」を示し始めた場合は相談する
- 家庭の努力では改善されない場合は相談する
- 言語聴覚士や小児科医に相談するという選択肢を持つ
保護者が「早期に専門家に相談する」ことで「必要な支援を受けることができる」のです。
「吃音についての正しい知識」を持つ
吃音に対する「誤った知識」が「保護者の不安」を増幅させていることがあります。正しい知識を持つことが大切です。
実践のポイント
- 吃音は「心理的な問題」ではなく「神経生物学的な現象」だと理解する
- 吃音は「親の育て方が原因」ではないと認識する
- 吃音は「完全に治す」ものではなく「付き合っていくもの」だと理解する
保護者が「正しい知識」を持つことで「不要な自責感」から解放され、子どもへの対応が「より適切」になるのです。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが言葉を繰り返している場合
❌保護者の悪い対応: ゆっくり話しなさい、落ち着きなさい、と指摘する
✅保護者の良い対応: そっか、それで楽しかったんだね、と子どもの話の内容に焦点を当て、繰り返しは無視する。その話、もっと聞かせてよ、と促す
保護者のポイント
- 繰り返しに注目しない
- 話の内容に焦点を当てる
- 子どもが話し続けるよう促す
【場面2】子どもが「話すのが嫌」と言い始めた場合
❌保護者の悪い対応: 大丈夫、頑張ればできるよ、と励ます
✅保護者の良い対応: 話すのが嫌な気持ちなんだね。そっか。ではママとの二人では、ゆっくり話そうね。無理にたくさん話さなくていい、と伝える
保護者のポイント
- 子どもの不安を受け止める
- 話すことへの圧力を減らす
- 安全な場面での対話を作る
【場面3】3~4歳の子どもが言葉を詰まらせている場合
❌保護者の悪い対応: この子は吃音かもしれない、と不安になり、子どもに指摘する
✅保護者の良い対応: このくらいの年齢で言葉が詰まるのは、自然なことだ。言語が発達している証だ、と認識する。様子を見守る
保護者のポイント
- 発達段階を理解する
- 不必要な不安を持たない
- 様子を見守る姿勢を取る
【場面4】5~6歳を過ぎても繰り返しが顕著な場合
❌保護者の悪い対応: 単なる発達の遅れだと思い込み、何もしない
✅保護者の良い対応: この子には、何か支援が必要かもしれない。専門家に相談してみよう、と判断する
保護者のポイント
- 発達段階に応じた判断をする
- 必要に応じて専門家に相談する
- 早期支援の可能性を検討する
【場面5】保護者自身が不安を感じている場合
❌保護者の悪い対応: その不安が子どもに伝わり、子どもも話すことが不安になる
✅保護者の良い対応: 自分が不安を感じていることに気づく。言葉の繰り返しは「発達の過程」だと学ぶ。その上で「必要に応じて専門家に相談する」という選択肢を持つ
保護者のポイント
- 自分の不安に気づく
- 正しい知識を学ぶ
- 落ち着いて対応する
「言葉の繰り返し」は「発達の通過点」だと認識すること
ここで大切な理解があります。
多くの子どもが経験する「言葉の繰り返しや詰まり」は「発達の過程での自然な現象」であり「多くの場合、時間とともに自然に改善される」ものなのです。
しかし「全てが自然な発達の範囲内」とは限らず「早期の支援が必要」な場合もあるため、発達段階に応じた、適切な判断が必要になります。
療育現場での実例
ある保護者は、子どもが言葉を繰り返すのを見て「吃音かもしれない」と強く不安を感じていました。その不安が子どもに伝わり、子どもは「話すことが嫌になり」「ますます繰り返しが目立つようになった」のです。
保護者が「言葉の繰り返しは発達過程での自然な現象」だと学び「子どもの話を受け入れる」という対応に変えると「子どもの繰り返しは自然と減少していった」と報告してくれました。
重要だったのは「保護者が『正しい知識』を持つ」ことだったのだと思われます。
親の「落ち着き」が、子どもの言語発達を支える
子どもが言葉を繰り返す、詰まるという現象に直面した保護者は「これは異常ではないか」と不安を感じるかもしれません。
しかし、実は「多くの子どもが経験する『発達の過程』」であり「保護者が落ち着いて対応すること」が「最高の支援」になるのです。
保護者が「正しい知識を持ち」「不安を手放し」「子どもの話を受け入れる」という対応をすることで、子どもは自然と言語が安定していきます。
今日も、言葉が繰り返される子どもの姿を見て、不安を感じる保護者がいるでしょう。その時「これは発達の過程なんだ」「このペースで大丈夫なんだ」という認識を持つことで「親の焦りは軽くなり」「子どもは落ち着いて話すようになる」という良い循環が生まれていくに違いありません。