友達の気持ちが理解できない子の本音

学校から帰ってきた子どもが「友達が泣いていた」「先生に怒られた」という話をします。保護者が「どうして、そんなことをしたの」と聞くと「わからない」と答えるだけで「相手がどう感じていたのか」という認識すら持っていないことがあります。
このような場面で「この子は『人の気持ちが理解できない子なのか』と心配する保護者は多いでしょう。また「この子は思いやりがない」「共感能力が低い」というレッテルを貼ってしまう親もいるかもしれません。
しかし、実は友達の気持ちを理解できず、知らないうちに傷つけてしまうというのは「子どもの『心の理論』(他者の気持ちや考えを理解する能力)が『発達過程にある』」という証なのです。保護者が「心の理論の発達段階」を理解し「段階的に共感能力を育てていく」ことで「子どもは少しずつ『他者の気持ちを理解する力』を身につけていくことができます。
子どもが他者の気持ちを理解できない理由
「心の理論」は「後天的に習得される能力」である
子どもが生まれた時「世界には自分と親しい数人の人間しかいない」と認識しています。しかし「他の人間には『自分とは異なる考え』『自分とは異なる気持ち』がある」という認識を獲得していくプロセスが「心の理論の発達」なのです。
この発達なしに「友達が何を考えているのか」「友達がどう感じているのか」を理解することはできないのです。
「自分の気持ち」と「他人の気持ち」の分離ができていない
幼い子どもは「自分が嬉しいことは、みんなも嬉しいはず」「自分が嫌なことは、みんなも嫌なはず」という「自己中心的な考え方」をしています。
この段階では「友達には『自分とは異なる感情』がある」という理解がないため「友達の気持ちを傷つけることの意味」が理解できないのです。
「他者の視点」を取ることができない
友達が「それを言われたら悲しくなる」と感じることを「予測する」ためには「友達の視点から『その言葉の影響』を想像する」という「視点取得能力」が必要です。
この能力が発達していない段階では「友達がどう感じるか」を予測することができないのです。
「非表示情報」の理解ができていない
友達が「実は悲しいけど、笑顔を見せている」というような「表面と内面の違い」を理解することができない段階では「友達の本当の気持ち」を読み取ることができません。
この「非表示情報の理解」は「かなり複雑な認知能力」であり「幼い子どもには難しい」のです。
心の理論の発達段階
3~4歳:「他の人は『自分と異なる考え』を持つ」ことに気づき始める段階
この時期の子どもは「この人は、こう考えているのかもしれない」という「他者の視点」について「ぼんやりと」気づき始めます。ただし「本当に正確に理解」することはできません。
4~5歳:「他の人の考えが『間違っている』可能性を理解」し始める段階
この段階で「自分と違う考えを持つ」だけでなく「その考えが『実は間違っているかもしれない』」ということに気づき始めるのです。
ただし「感情の理解」はまだ「表面的」であり「複雑な感情」は理解できません。
5~6歳:「他の人の感情」を「ある程度、正確に」理解し始める段階
この時期になると「友達が『悲しい』『嬉しい』『怒っている』」ということを「ある程度、正確に」理解し始めるのです。
しかし「複雑な感情」(複数の感情が混在している状況など)の理解はまだ難しいです。
6~7歳:「自分の行動が『他者に与える影響』」を理解し始める段階
この段階で「自分がこの言葉を言うと、友達が悲しくなる」というように「行動と結果の因果関係」を理解し始めるのです。
これは「真の共感」へ向かう「重要な発達段階」なのです。
7歳以降:「複雑で微妙な感情」の理解が進む段階
この時期になると「相手が複数の感情を同時に感じている」「表面とは異なる気持ちを持っている」というような「より複雑な情動理解」が可能になり始めるのです。
ただし「完全な理解」には「さらに長い発達期間」が必要です。
子どもが他者の気持ちを傷つけた時の対応
「その行動を『全面的に否定』しない」
子どもが友達を傷つけるような言動をした時「あなたは意地悪な子だ」「友達を大切にできない子だ」というように「子どもの『人格』を否定してはいけません。
実践のポイント
- その行動を指導する
- 子ども自身を否定しない
- 行動と人格を分離する
保護者がこのような「分離した指導」をすることで「子どもが『自分は悪い子だ』という自己肯定感の低下」を避けることができるのです。
「友達の気持ちを『言語化』して見せる」
子どもが友達を傷つけた時「友達は『どのような気持ち』になったのか」を「保護者が言語化して示す」ことが有効です。
実践のポイント
- 友達は『悔しかったんだね』と感情を言語化する
- 友達が『その言葉を言われて、悲しくなった』という因果関係を示す
- 子どもが『他者の気持ちに気づく』手助けをする
保護者がこのような「言語化」をすることで「子どもが『友達の気持ち』に気づき始める」のです。
「友達の『視点』に立たせる」
友達が「どのような状況」にいるのかを「子どもに想像させる」というアプローチが有効です。
実践のポイント
- あなただったら、その言葉を言われたら、どう感じると思うと問いかける
- 友達の『目線』で『その場面』を想像させる
- 子どもが『視点取得』をする経験を積む
保護者がこのような「視点取得の練習」をすることで「子どもが『他者の気持ちを予測する能力』を少しずつ身につけていく」のです。
「繰り返しの経験」を通じて学ぶ
心の理論の発達は「一度の指導で完成する」ものではなく「繰り返しの経験」を通じて「段階的に進む」ものなのです。
実践のポイント
- 同じような場面が出現する度に「友達の気持ちはどうだったのか」と問いかける
- 長期的な視点で「共感能力の発達」を見守る
- 子どもが『小さな進歩』をするたびに「認める」
保護者がこのような「長期的なサポート」をすることで「子どもの共感能力は確実に発達していく」のです。
「親自身が『共感的な対応』をモデルとして示す」
子どもが「他者の気持ちを理解する力」を身につけるために「保護者自身が『共感的な対応』」をしていることが重要です。
実践のポイント
- 子どもが悔しい思いをした時に「そっか、悔しいんだね」と共感する
- 親が「友達の気持ちを配慮する」姿を子どもに見せる
- 親が「他者への思いやり」を言語化する
保護者がこのような「モデリング」をすることで「子どもは『自然と共感的な考え方』を学んでいく」のです。
「社会的なスキル」を段階的に教える
友達を傷つけないためには「社会的なスキル」(どのように友達に接したら良いか、という具体的な方法)を教えることが大切です。
実践のポイント
- 友達が悔しそうにしていたら「どう対応したら良いのか」を教える
- 「友達を傷つけない言い方」を練習する
- 「友達を喜ばせる言い方」を教える
保護者がこのような「スキルの教え方」をすることで「子どもが『具体的に、どう行動したら良いのか』を理解し始める」のです。
「学校や友達の側面」を把握する
子どもが他者の気持ちを理解できない理由が「心の理論の未発達」なのか「学校での特定の状況」が原因なのかを把握することが重要です。
実践のポイント
- 学校の先生に「子どもがどのような場面で、友達を傷つけているのか」を詳しく聞く
- 「その場面」での「友達の反応」を知る
- 学校と家庭が「同じ視点」で対応する
保護者が「学校と連携」することで「より効果的なサポート」が可能になるのです。
「焦らない」という親の姿勢
最後に大切なのは「心の理論の発達には『長い時間』が必要であり、保護者が『焦らない』という決意です。
実践のポイント
- 一度の指導で「完全に理解できる」ようにはならないと認識する
- 子どもが『小さな理解』をするたびに「認める」
- 「この子は『発達過程にある』」という視点を持つ
保護者がこのような「長期的な視点」を持つことで「子どもが『自分のペースで』共感能力を発達させていく」ことができるようになるのです。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが友達を傷つけるようなことを言った場合
❌保護者の悪い対応: あなたは意地悪な子だ、と子どもの人格を否定する
✅保護者の良い対応: その言葉を言うと、友達は悔しいと感じるんだよ。友達がどう感じたと思うと問いかけ、子どもが「視点を取得」する手助けをする
保護者のポイント
- 人格ではなく行動を指導する
- 友達の気持ちを言語化する
- 子どもに「視点を取得」させる
【場面2】子どもが「何で友達が怒ったのかわからない」と言う場合
❌保護者の悪い対応: あなたがどんなことをしたのか、自分で考えなさい、と親の指導を終わらせる
✅保護者の良い対応: あなたが○○のことを言った時、友達は「バカにされた」と感じたのかもね。あなただったら、そう言われたらどう感じると問いかける
保護者のポイント
- 因果関係を示す
- 友達の視点から考えさせる
- 共感させる
【場面3】子どもが「友達が泣いているけど、何で」と無関心にしている場合
❌保護者の悪い対応: 知らない、と子どもの無関心さを受け入れる
✅保護者の良い対応: 友達は、何か悔しいことがあったのかもね。友達が悲しい顔をしている時は「どうしたの」って聞いてあげると、友達が喜ぶよ、と教える
保護者のポイント
- 他者の感情に気づく手助けをする
- 具体的な対応方法を教える
- 「相手を思いやる行動」を提案する
【場面4】学校で「友達を傷つける言動」を繰り返す場合
❌保護者の悪い対応: 家庭だけで指導を続ける
✅保護者の良い対応: 学校の先生に詳しく聞き「どのような場面で、何が起こっているのか」を把握する。学校と家庭が「同じ視点」で対応する
保護者のポイント
- 学校との連携を図る
- 具体的な場面を理解する
- 一貫した対応をする
【場面5】保護者自身が「この子は共感能力が低い」と感じている場合
❌保護者の悪い対応: この子は『そういう子なんだ』と決めつける
✅保護者の良い対応: この子は「心の理論」が「発達過程にある」んだ。繰り返しの経験を通じて「共感能力は発達していく」と認識する
保護者のポイント
- 発達段階を理解する
- レッテルを貼らない
- 長期的な視点を持つ
「心の理論」は「段階的に発達する能力」である
ここで大切な理解があります。
友達の気持ちを理解できず、知らないうちに傷つけてしまうというのは「共感能力が欠けている」ことではなく「『心の理論』が『発達過程にある』」という証なのです。
保護者が「視点を取得させ」「友達の気持ちを言語化し」「繰り返しの経験を提供する」という丁寧なサポートをすることで、子どもは少しずつ『他者の気持ちを理解する力』を身につけていきます。
療育現場での実例
ある子どもは、友達が泣いていても『何で泣いているのか』がわからず、無関心にしていました。保護者は「この子は共感能力がないのでは」と心配していました。
保護者が「心の理論の発達段階」を学び「繰り返し『友達の視点』から『その場面』を考えさせる」という対応を続けると「子どもが『友達の気持ちに気づき始めた』」のです。
また「子どもが『小さな気づき』をするたびに『認める』」という対応を続けたところ「数ヶ月後に『友達が悔しそうにしていたから、声をかけた』という『自発的な共感的行動』が見られるようになった』」と保護者は報告してくれました。
重要だったのは「保護者が『長期的な視点を持ち』」「『繰り返しのサポート』を続けたこと」だったのだと思われます。
親の「辛抱強いサポート」が、子どもの共感能力を育む
友達の気持ちを理解できず、知らないうちに傷つけているという現象に直面した保護者は「この子には『何か問題がある』のでは」と不安を感じるかもしれません。
しかし、実は「多くの子どもが経験する『心の理論の発達過程』」であり「保護者が『視点の取得』を繰り返し促し」「『友達の気持ちを言語化して示す』」ことで「子どもの共感能力は確実に発達していく」ことができるのです。
保護者が「焦らず」「長期的な視点を持ち」「繰り返しの経験を提供する」という「辛抱強いサポート」をすることで「子どもの『他者への理解』は段階的に深まっていく」のだと思われます。
今日も「友達の気持ちが理解できず」「知らないうちに傷つけている」という子どもの姿を見て「何か問題があるのでは」と心配する保護者がいるでしょう。その時「これは『発達過程』なんだ」「『心の理論は発達するもの』なんだ」「『繰り返しのサポートで、確実に変わっていく』」という認識を持つことで「親の不安は軽くなり」「子どもは『自分のペースで』他者の気持ちを理解できるようになっていく」という良い循環が生まれていくに違いありません。