失敗が怖くて、新しいことに挑戦しようとしない子ども

子どもが「やってみたい」と言いかけても「できなかったらどうしよう」という不安から「やっぱりいい」と諦めてしまうことがあります。また「失敗するのが怖い」「間違えるのが嫌だ」という理由で「新しいことに挑戦することを避ける」という行動パターンが見られることもあります。
多くの保護者は「この子は臆病なのか」「自信がないのか」と心配し「もっと挑戦しなさい」「失敗することは誰にでもある」と励まそうとします。しかし、子どもの「失敗への恐怖心」は「単なる性格の問題」ではなく「子どもが『失敗の意味』を『ネガティブに解釈』している」という「考え方の問題」なのです。
保護者が「失敗に対する考え方」を一緒に変えていくことで、子どもは『新しいことへの挑戦』ができるようになりやがて『失敗を恐れず、成長に向かう子ども』へと変わっていきます。
子どもが失敗を恐れる理由
失敗を「自分の価値を否定されること」と捉えている
子どもが「失敗したら、自分はダメな子だ」と考えてしまう場合があります。この時、失敗は「単なる結果」ではなく「自分という人間の価値を否定されること」と解釈されているのです。
この解釈がある限り「失敗を避けることが『自分を守ること』と同じ」と子どもは考え「挑戦することを避ける」ようになります。
親からの否定的な評価を恐れている
親が子どもの失敗に対して「どうしてできないの」「ちゃんとしなさい」というような否定的な反応をしていると「失敗すると親に嫌われる」という不安が生まれます。
この不安が「失敗への恐怖心」を増幅させ「挑戦することを避ける行動」につながっていくのです。
失敗経験が蓄積されている
子どもが「何度も失敗する」「上手くいかないことが多い」という経験を積むと「自分は『成功できない子』だ」という信念が形成されるのです。
この信念が形成されると、新しいことに挑戦することが失敗を確認するプロセスと感じられるようになり避けようとすることがあります。
完璧主義的な傾向がある
「完璧にできなければ、やる意味がない」という考え方が強い子どもは「失敗することへの恐怖心」が大きくなりやすいのです。
完璧さを求める気持ちが「失敗への恐怖」と結びつき「挑戦を避ける」という行動につながっています。
周囲との比較をしている
「自分より『あの子の方が上手』」「自分は『できない子』」という比較的思考が「失敗への恐怖心」を強めていることがあります。
周囲との比較が「自分の失敗」を「より深刻」に感じさせてしまうのです。
失敗への考え方の違い
固定的マインドセット vs 成長的マインドセット
心理学者キャロル・ドゥエックが提唱した「マインドセット」の概念があります。失敗を「自分の能力の限界を示すもの」と考える「固定的マインドセット」と「失敗を『成長の機会』と考える「成長的マインドセット」の二つです。
固定的マインドセットの子どもは「失敗を避け」「新しいことに挑戦しない」傾向があり、成長的マインドセットの子どもは「失敗を恐れず」「むしろ失敗から学ぼうとする」傾向があります。
保護者の役割は「この『マインドセット』を『固定的』から『成長的』へと変えていく」ことなのです。
失敗への恐怖心を軽減させるための対応
失敗を「成長の過程」として再解釈させる
最初に大切なのは「失敗は『ダメなこと』ではなく『成長の過程』なんだ」という認識を「子どもに持たせる」ことです。
実践のポイント
- 失敗したことを「悔しいね。でも、ここから学べることがあるよ」と伝える
- 親自身の「失敗経験」を子どもに話す
- 失敗が「誰もが経験する自然なこと」だと示す
保護者がこのような「別の解釈」を繰り返し示すことで、子どもの『失敗観』が少しずつ変わっていきます。
親自身が「失敗を恐れない姿」を見せる
子どもが「親が失敗を恐れず、新しいことに挑戦する姿」を見ることで「失敗は『悪いことではない』」という認識が生まれます。
実践のポイント
- 親が新しいことに挑戦する時に「失敗するかもしれないけど、やってみようね」と言う
- 失敗した時に「失敗したね。でも、ここから学ぼう」と前向きに対応する
- 子どもに「モデル」を示す
保護者がこのような「姿勢」をすることで「子どもは『失敗への恐怖心』を軽減させていく」のです。
子どもの「小さな挑戦」を認める
子どもが「ちょっとした新しいことに挑戦した」ときに「それを心から認める」という対応が有効です。
実践のポイント
- 結果がどうであれ「新しいことに挑戦した勇気」を褒める
- 挑戦に至るまでのプロセスを認める
- 親の喜びを子どもに伝える
保護者がこのような「認め方」をすることで「子どもが『挑戦することへの自信』を少しずつ獲得していく」のです。
「段階的な挑戦」を仕掛ける
子どもが「いきなり大きな挑戦」をすることは難しいため「小さな挑戦」から始めることが大切です。
実践のポイント
- 難度の低い課題から始める
- 成功体験を積ませる
- その成功を基に「次のステップ」へ進む
保護者がこのような「段階的な進め方」をすることで「子どもが『挑戦を積み重ねる』」ことができるようになり「自信が形成される」のです。
「失敗の後の対応」を工夫する
子どもが失敗した時「保護者がどう対応するか」が「子どもの失敗観を形成する」上で「最も重要」です。
実践のポイント
- 失敗しても「あなたの価値は変わらない」と伝える
- 何が上手くいかなかったのかを「一緒に分析」する
- 次の挑戦への「見通し」を立てる
保護者がこのような「前向きな対応」をすることで「失敗は『終わり』ではなく『始まり』」という認識が子どもの中に形成されるのです。
親からの「無条件の受け入れ」を示す
子どもが失敗することで「親からの愛情や評価が下がる」という不安がある場合「その不安を払拭する」ことが重要です。
実践のポイント
- 失敗しても「ママはあなたの味方だよ」と伝える
- 親の愛情が「成功」に基づいていないことを示す
- どんな状況でも「親は応援している」というメッセージを伝える
保護者がこのような「無条件の受け入れ」を示すことで「失敗への恐怖心は大きく軽減される」のです。
「周囲との比較」を減らす
子どもが「他の子と比較して『自分はダメ』と感じている」場合「その比較を止めさせる」ことが大切です。
実践のポイント
- 他の子との比較をしない
- その子の「昨日の自分」との比較を促す
- 「自分のペース」を尊重する
保護者がこのような「比較の軽減」をすることで「失敗への恐怖心」が軽くなり「挑戦へのハードルが下がる」のです。
「失敗から学べることがある」という経験をさせる
子どもが失敗した後「その失敗から『何か学べたこと』があるのか」を一緒に考える経験が「失敗観の変化」につながります。
実践のポイント
- テストで失敗した時に「何が理解できていなかったのか」を確認する
- 友達関係で上手くいかなかった時に「次はどう対応したら良いか」を考える
- 失敗を「学びの材料」として活かす
保護者がこのような「前向きな対応」をすることで「子どもは『失敗は『終わり』ではなく『学びの始まり』」という認識を獲得していくのです。
学校や習い事での「挑戦機会」を作る
子どもが「安心できる環境」で「小さな挑戦」を積み重ねるために「学校や習い事での『挑戦の場面』を活用する」ことが有効です。
実践のポイント
- 学校の先生に「この子が『失敗を恐れている』」ことを伝える
- 習い事の先生に「小さな成功体験」を積ませてもらう
- 学校と家庭が「同じ視点」で支援する
保護者が「学校や習い事の先生と連携」することで、より多くの『挑戦機会』が作られます。
焦らず「長期的な視点」を持つ
失敗への恐怖心の軽減と「成長的マインドセット」の形成には「長い時間」がかかることを認識することが大切です。
実践のポイント
- 一度の指導で「完全に変わる」ようにはならないと理解する
- 子どもが『小さな挑戦』をするたびに「認める」
- 数ヶ月単位で「その子の変化」を見守る
保護者がこのような「長期的な視点」を持つことで「子どもが『自分のペースで』失敗を乗り越えていく」ことができるようになるのです。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが「失敗するのが怖い」と言う場合
❌保護者の悪い対応: 失敗することは誰にでもある。頑張ればできる、と励ます
✅保護者の良い対応: そっか、失敗が怖いんだね。その気持ちはよくわかるよ。失敗は『学びのチャンス』なんだ。ママも失敗している。でも、そこから学んでいるんだよ、と伝える
保護者のポイント
- 子どもの気持ちを受け止める
- 失敗を「成長の過程」として再解釈する
- 親のモデルを示す
【場面2】子どもが失敗した時
❌保護者の悪い対応: どうしてできないの、と責める
✅保護者の良い対応: 失敗してしまったね。悔しいんだね。では、何が上手くいかなかったのか、一緒に見てみようか、と前向きに分析する
保護者のポイント
- 責めない
- 失敗した気持ちを受け止める
- 学びに変える
【場面3】子どもが新しいことに挑戦しようとしている時
❌保護者の悪い対応: 上手くできるから、やってみなさい、と保証する
✅保護者の良い対応: 新しいことに挑戦してみるんだ。素晴らしいね。上手くいくかどうかは関係なく、挑戦する勇気が大事なんだよ、と挑戦そのものを認める
保護者のポイント
- 結果よりもプロセスを褒める
- 挑戦する勇気を認める
- 失敗への恐怖を軽減する
【場面4】子どもが「あの子の方が上手」と比較している場合
❌保護者の悪い対応: あなたも頑張れば、同じくらいできるようになる、と期待を上げる
✅保護者の良い対応: あの子は、その子のペース。あなたは、あなたのペース。大事なのは『昨日のあなたと比べて』『今日のあなたが』『少しでも成長しているか』だよ、と伝える
保護者のポイント
- 周囲との比較を止める
- 「自分の成長」を基準にさせる
- その子のペースを尊重する
【場面5】子どもが「失敗したら、ママが怒る」と思っている場合
❌保護者の悪い対応: 怒らないから、やってみなさい、と言うだけ
✅保護者の良い対応: ママは、あなたが失敗しても怒らないんだよ。ママが大事なのは『あなたが挑戦したこと』なんだ。失敗しても『あなたの価値は変わらない』んだよ、と何度も伝える
保護者のポイント
- 無条件の愛を示す
- 失敗への不安を払拭する
- 繰り返し伝える
「失敗への恐怖心」は「考え方の問題」である
ここで大切な理解があります。
子どもが失敗を恐れるのは「臆病だから」ではなく「失敗を『自分の価値の否定』と考えているから」なのです。
保護者が「失敗の意味」を「成長の過程」へと再解釈し「モデルを示し」「挑戦を認める」という対応をすることで子どもの『マインドセット』は『固定的』から『成長的』へと変わっていきます。
療育現場での実例
ある子どもは「失敗することへの恐怖心が強く」「新しいことに全く挑戦しようとしない」という状態がありました。保護者は「この子は自信がない」と心配していました。
保護者が、失敗への恐怖心は『考え方の問題』」だと学び親自身が『失敗を恐れない姿』を見せるという対応を始めると子どもの『失敗観』が少しずつ変わり始めました。
また「失敗した時に『責める』のではなく『学びに変える』」という対応を続けたところ「数ヶ月後に『小さな挑戦』をし始め」「その成功体験が積み重なり」「やがて『失敗を恐れず、新しいことに挑戦する子ども』へと変わっていった」と保護者は報告してくれました。
重要だったのは「保護者が『長期的な視点を持ち』」「『モデルを示し』」「『失敗の意味を変えていく』」という『複合的なサポート』を続けたことだったのだと思われます。
親の「姿勢の変化」が、子どもの「失敗観」を変える
子どもが失敗を恐れ、挑戦を避けるという現象に直面した保護者は「この子には『勇気が足りない』のでは」と感じるかもしれません。
しかし、実は「その子が『失敗をネガティブに解釈』しているだけ」であり「保護者が『その解釈を変える』」ことで「子どもは『新しいことへの挑戦』ができるようになる」のです。
保護者が「失敗を『成長の過程』と捉え」「モデルを示し」「挑戦を認め」「失敗後も前向きに対応する」という「複合的で根気強いサポート」をすることで「子どもの『マインドセット』は確実に変わっていく」のだと思われます。
今日も「失敗が怖くて、挑戦しない」という子どもの姿を見て「この子に自信がない」と心配する保護者がいるでしょう。その時「これは『性格の問題』ではなく『考え方の問題』なんだ」「『親のサポートで、その考え方は変わる』」「『親自身が『失敗を恐れない姿』を示すことが最も大切』なんだ」という認識を持つことで「親の不安は軽くなり」「子どもは『自分のペースで』失敗を乗り越え『成長的マインドセット』を獲得していく」という良い循環が生まれていくに違いありません。