「学校行きたくない」〜登校しぶりの背景〜

朝、子どもを起こすと「学校に行きたくない」と毎日のように言われます。保護者が「どうしたの」と聞いても「わからない」と答えるだけで「理由がはっきりしない」ということが起こります。また「学校に行こう」と促すと「お腹が痛い」「頭が痛い」という身体症状が出現することもあります。
多くの保護者は「この子は学校が嫌なのか」「いじめがあるのか」と不安を感じ「無理にでも登校させるべきか」「休ませるべきか」という判断に迷うようになります。しかし、実は子どもが「学校に行きたくない」と言う理由は複雑で多面的であり、表面的な理由だけでは判断できないのです。
保護者が「子どもの本当のニーズ」を丁寧に探り「学校と連携」することで「登校しぶりの背景」が見えてきてより適切な対応ができるようになっていきます。
子どもが登校しぶりを示す理由
学校での「人間関係の困難」がある
友達との関係が上手くいかない、からかわれている、いじめを受けているなど「学校での人間関係の困難」が「登校しぶりの最も一般的な理由」です。
ただし「子どもが『その理由を親に話さない』ことが多い」のため「親は『その困難の存在』に気づけていない」ことが多いのです。
学校での「学習面の困難」がある
授業についていけない、分からないことが多い、テストで失敗することが多いなど「学習面での困難」が「学校への不安」を生み出します。
子どもは、何度も『失敗する』という経験から学校に行くこと自体が『失敗の経験を重ねる場所』と認識し、登校を避けようとすることもあります。
「感覚過敏性」による「学校環境への不適応」
音に敏感、光に敏感、触覚が敏感というような「感覚過敏」がある子どもは、学校の『大きな音』『複数の人間の声』『複雑な環境』」に「心身が対応できず、登校を避けようとすることがあります。
子どもが「その敏感さ」を言葉で説明できないため親は『その理由』に気づきにくいです。
「見通しが持てない」ことへの不安
その日の予定が『不確定』」「『何が起こるか予測できない』という状況に直面すると、不安が高まり登校を避けようとすることがあります。
特に、発達支援が必要な子どもは見通しの立たない状況に「極度の不安」を感じることがあるのです。
「朝の支度の困難」がある
早起きできない、準備に時間がかかるなど「朝の支度そのもの」が「その子にとって困難」な場合、登校しぶりが見られることがあります。
この場合、学校が嫌なのではなく朝のルーティンが『ストレスフル』なのです。
「学校以外の場所への不適応」がある
学校そのものではなく「登下校の道」「朝の雰囲気」「保護者との別れ」など「学校周辺の環境」がその子にストレスを与えていることがあります。
子どもがその『ストレスの源』を言葉で表現できないため、親は『登校しぶりの理由』を理解できません。
「親への依存」が強い
「親との分離不安」を持っている場合「朝、親と別れることへの不安」が登校しぶりとして表れることがあります。
この場合「学校自体は嫌ではなく」「親からの分離」がその子にとって困難なのです。
「学校での『自分の役割』や『自分の場所』がわからない」
学校での『自分は誰なのか』『自分はどこにいるのか』という所属感や『役割感』を感じることができないと、登校することに『意味を感じず』登校を避けるようになることがあります。
子どもの登校しぶりへの対応
「無理に登校させない」ことを前提に考える
最初に大切なのは、登校しぶりが見られた時に『無理に登校させる』のではなくその背景を『丁寧に探る』という対応をすることです。
実践のポイント
- 「学校に行きたくない」という訴えを「全面的に否定しない」
- 「理由を聞く」という対話を最優先させる
- 子どもの「不安や困難」を『まず受け入れる』
保護者がこのような「受け入れ」をすることで「子どもが『親に本当のことを話しやすくなる』」のです。
「『何が嫌なのか』を丁寧に探る」
「学校に行きたくない」と言う時、その『理由』は『表面的には見えない』ことが多いため、丁寧に「何が嫌なのか」を探る必要があります。
実践のポイント
- 一度の質問で「理由を聞き出す」のではなく「複数の問いかけ」をする
- 「友達の話」「勉強の話」「朝起きることの話」など「複数の角度」から聞く
- 子どもが「自分のペース」で話すのを待つ
保護者がこのような「丁寧な対話」をすることで子どもの『本当の困難』が見えてくるのです。
「子どもの『言葉にならない訴え』を読み取る」
「お腹が痛い」「頭が痛い」という身体症状を訴える場合、その症状が『子どもの心理的な不安の表現』であることが多いです。
実践のポイント
- 身体症状を「単なる病気」と判断しない
- 身体症状の『背後にある心理的な困難』を探る
- 小児科を受診してから「心理的な側面」を考える
保護者がこのような「読み取り」をすることで、身体症状の『本当の意味』が理解できるようになります。
「学校の先生に『詳細な情報』を求める」
家では『理由を話さない』場合、「学校での様子」を先生に詳しく聞くことが有効です。
実践のポイント
- 学校での「その子の友達関係」を詳しく聞く
- その子が「どのような場面で『困っているのか』」を聞く
- 学校での「その子の『得意と困難』」を理解する
保護者が「学校の先生と連携」することで、その子の『複雑な状況』が見えてきます。
「その子の『小さな訴え』を見逃さない」
毎日『学校に行きたくない』と言うようになるまでに、その子は『何度も小さな訴え』をしていた可能性が高いです。
実践のポイント
- 子どもの「普段の『ちょっとした言動の変化』」に気づく
- 「学校の話をしなくなった」「友達の名前を言わなくなった」など「小さなサイン」を見る
- 早期に「その子の『小さな訴え』に応答する」
保護者がこのような「早期発見」をすることで、登校しぶりが『深刻化する前に対応できる』のです。
「登校しぶりが『その子の『信号』である」と認識する」
子どもが「登校しぶりを示す」のは、その子が『何か困っている』ということを『親に知らせている』のです。
実践のポイント
- 登校しぶりを「悪い行動」と捉えない
- 登校しぶりを「その子からのSOS信号」と捉える
- その『信号』の『意味』を探ることに注力する
保護者がこのような「新しい視点」を持つことで「登校しぶりへの対応」が前向きなものへと変わります。
「学校と『連携した対応』をする」
登校しぶりへの対応は「家庭だけ」「学校だけ」では不十分であり、学校と家庭が『同じ情報を共有』し『同じ方向を向いて対応する』ことが重要です。
実践のポイント
- 学校の先生に「その子の『登校しぶりの状況』」を伝える
- その子が「学校で『どのような困難』を抱えているのか」を一緒に探る
- 学校と家庭で「できる対応」を相談する
保護者と学校が「連携」することで、より『包括的で効果的な対応』ができるようになります。
「短期的な『強制』ではなく『長期的な『サポート』」を重視する」
登校しぶりが見られた時「短期的に『無理に登校させる』」のではなく、その子の『困難を軽減させる』という『長期的なサポート』を重視することが大切です。
実践のポイント
- 登校しぶりが強い場合「数日間『休む』ことを許可する」ことも選択肢
- その間に「『その子の『困難』を『詳しく探る』」
- 「『困難が改善する』ための『具体的な対応策』」を立てる
保護者がこのような「長期的な視点」を持つことで、登校しぶりが『自然と改善される』ことがあります。
「保護者自身の『不安』を軽減させる」
子どもの登校しぶりに対して、保護者が『強い不安』を持っているとその不安が子どもに伝わり、登校しぶりが『悪化する』可能性があります。
実践のポイント
- 登校しぶりは「珍しいことではない」と認識する
- 自分の「不安の『根拠』」を問い直す
- 必要に応じて「専門家のサポート」を受ける
保護者が「自分の不安」を軽減させることで、その子への『より冷静で『前向きな対応』ができるようになります。
実際の場面での対応例
【場面1】子どもが毎日「学校に行きたくない」と言う場合
❌保護者の悪い対応: 理由も聞かずに「学校に行きなさい」と無理に登校させる
✅保護者の良い対応: そっか、学校に行きたくないんだね。何が嫌なのか、ママに教えてくれない、と聞く。子どもが話すまで「丁寧に待つ」
保護者のポイント
- 訴えを受け入れる
- 理由を丁寧に探る
- 子どものペースを尊重する
【場面2】子どもが「理由はわからない」と答える場合
❌保護者の悪い対応: 理由がないなら行きなさい、と判断する
✅保護者の良い対応: そっか、理由がわかりにくいんだね。では「友達のことはどう」「勉強のことはどう」「朝起きることはどう」と複数の角度から聞く
保護者のポイント
- 複数の問いかけをする
- 異なる視点から探る
- 粘り強く対話する
【場面3】子どもが「お腹が痛い」と身体症状を訴える場合
❌保護者の悪い対応: 本当に体調が悪いと判断し、医者にだけかかる
✅保護者の良い対応: 医者に診てもらい、医学的な問題がないことを確認した上で「学校に行きたくない気持ち」が「お腹の痛みとなって表れているのかもしれない」と考える
保護者のポイント
- 医学的な診断を受ける
- 身体症状の背後にある心理を探る
- 複合的に対応する
【場面4】学校の先生に相談したい場合
❌保護者の悪い対応: 学校に「この子が登校しぶりをしているから対応してほしい」と一方的に伝える
✅保護者の良い対応: 学校の先生と「一緒に」その子の「学校での様子」「友達関係」「学習面での困難」を「詳しく」聞き、学校と家庭で「何ができるか」を一緒に考える
保護者のポイント
- 学校と連携する
- 情報を共有する
- 一緒に対応策を探る
【場面5】登校しぶりが強く「この状況がずっと続くのでは」と不安になる場合
❌保護者の悪い対応: その不安から「無理に登校させ続ける」
✅保護者の良い対応: 登校しぶりは「珍しいことではない」と認識する。「その子の困難が何か」を丁寧に探り「その困難が改善される」までは「家庭と学校で『できるサポート』をする」と決めて「長期的に対応する」
保護者のポイント
- 親の不安を軽減する
- 長期的な視点を持つ
- その子に必要なサポートに注力する
「登校しぶり」は「子どもからのSOS信号」である
ここで大切な理解があります。
子どもが「学校に行きたくない」と毎日言うのは、その子が『何か困っている』ということを親に知らせているのです。
保護者がその『SOS信号』に気づき、丁寧に『その子の困難』を探り学校と連携して対応することでその困難は『改善される可能性が高い』のです。
療育現場での実例
ある子どもは毎日『学校に行きたくない』と言い、保護者は『その理由がわからず』『とにかく登校させていた』のです。その結果、子どもの『不安』は『増幅され』やがて『不登校』へと発展してしまいました。
保護者が、その時『どうして行きたくないのか』を丁寧に聞いていたらという後悔を感じていました。
別の保護者は子どもの『小さな訴え』に早期に気づき、学校の先生と『詳しく対話』しその子の『困難が「友達関係にある』ことを発見したのです。
その後、学校と家庭で『連携した対応』をした結果、子どもの『不安が軽減され』数週間後には『登校しぶりが見られなくなった』と保護者は報告してくれました。
重要だったのは、保護者が『早期に気づき』『学校と連携して対応した』ことだったのだと思われます。
親の「丁寧な対話」が、子どもの「登校しぶり」を改善させる
子どもが「毎日『学校に行きたくない』と言う」という現象に直面した保護者は、この状況が『ずっと続くのではないか』と不安を感じるかもしれません。
しかし、実はその子が『何か困っている』ということを『丁寧に探る』・学校と連携して『その困難を改善する』ことで登校しぶりは『改善される可能性が高い』のです。
保護者がその子の『小さな訴え』に気づき、丁寧に『その子の困難』を探り、学校と『同じ方向を向いて対応する』という「複合的なアプローチ」をすることで子どもは『学校へ向かう不安』から『少しずつ』解放されていくのだと思われます。
今日も「学校に行きたくない」という子どもの訴えに「どう対応したら良いか」と迷う保護者がいるでしょう。その時、これは『その子からのSOS信号』なんだ、とその信号の意味を丁寧に探ることが最も大切、学校と連携することで『その困難は『改善する可能性がある』という認識を持つことで、親の不安は軽くなり子どもの『登校しぶり』は親と学校の『丁寧な対応』の中で『少しずつ改善されていく』という良い循環が生まれていくに違いありません。