子どもの分離不安、、、どう対応したらいい?

療育に通い始める、保育園や幼稚園に通う時間が増える、学童保育を利用する。発達支援を受けている子どもが成長するにつれて、親と離れて過ごす時間は自然と増えていきます。
しかし、その時に子どもがママと離れるのが怖い、ママがいなくなったらどうしようという強い不安を示すことがあります。朝の別れ際に泣く、療育に行くのを嫌がる、親の姿が見えなくなるとパニックになる。そのような姿を見ると、保護者自身もこの子をこのまま離していいのだろうか、まだ早いのではないかという迷いを感じます。
親子の分離は子どもの自立にとって大切なプロセスですが、その過程では子どもの不安と親の葛藤が生まれます。保護者が子どもの発達段階を理解し、適切な距離感を作っていくことで、子どもは少しずつ親から離れる時間を安心して過ごせるようになっていくのです。
親子分離不安の発達段階
乳児期(0〜1歳):母子一体感の時期
この時期の子どもにとって、母親は自分と一体の存在です。母親が視界から消えると、この世界から消えてしまったと感じます。
発達的には母親への絶対的な依存が必要な時期であり、この時期に十分に依存することが、後の自立の土台になっていきます。
幼児期前半(1〜3歳):分離不安のピーク
この時期の子どもは、母親が別の存在であることを理解し始めますが、その理解がかえって強い不安を生み出します。
母親が離れることに激しく抵抗し、後追いをし、少しでも姿が見えなくなると泣きます。これは発達の正常なプロセスであり、この不安を十分に受け止めてもらうことが次の段階への移行を助けます。
幼児期後半(3〜6歳):安心の内在化
この時期の子どもは、母親が今は見えなくても必ず戻ってくるという安心感を少しずつ内在化していきます。
短時間であれば親と離れて過ごすことができるようになり、保育園や幼稚園での活動を楽しめるようになっていきます。ただし、この移行には個人差が大きく、発達支援が必要な子どもでは時間がかかることも多いのです。
学童期(6歳以上):自立への歩み
この時期の子どもは、親以外の人との関係を広げ、親から離れた時間を楽しめるようになります。
しかし、発達支援が必要な子どもの中には、この時期になっても強い分離不安を示す場合があります。それは甘えているのではなく、心の発達において安心の内在化がまだ十分ではないことを示しているのです。
発達支援が必要な子どもの分離不安の特徴
見通しが持てないことへの不安
発達支援が必要な子どもの多くは、これから何が起こるのか、いつ親が戻ってくるのかという見通しを持つことが苦手です。
そのため、親と離れることが一時的なものであり、必ず再会できるという確信を持ちにくく、分離不安が強くなりやすいのです。
環境の変化への敏感さ
新しい場所、新しい人、新しい活動といった環境の変化に対して、発達支援が必要な子どもは敏感に反応します。
親という安全基地から離れて新しい環境に入ることは、その子にとって大きなストレスとなり、分離不安を強めます。
言葉で不安を表現できない
自分の不安な気持ちを言葉で表現することが難しい子どもは、泣く、暴れる、固まるといった行動で不安を表現します。
周囲からは問題行動と見られがちですが、実はその行動は私は不安です、助けてくださいというメッセージなのです。
過去の分離体験のトラウマ
過去に親と離れた時に怖い思いをした、嫌な経験をしたという記憶がある子どもは、再び同じことが起こるのではないかという不安を抱きます。
その不安が分離場面での強い抵抗となって現れるのです。
親が子どもを自立させる際の心理プロセス
この子を離していいのかという罪悪感
発達支援が必要な子どもを持つ保護者の多くが、子どもを自分から離すことに罪悪感を感じます。
この子は他の子よりも支援が必要なのに、私が離れたら誰がこの子を守るのかという思いが、親を離れることへの抵抗を生み出します。
子どもの不安を見ることの辛さ
子どもが泣いて別れを嫌がる姿、不安そうな表情を見ることは、親にとって非常に辛い体験です。
その辛さから、つい子どもと離れる時間を先延ばしにしたり、子どもの求めるままに一緒にいる時間を増やしたりしてしまいます。
自立は必要だが早すぎるのではという葛藤
保護者は、子どもの自立は必要だと頭では理解していますが、今の段階でそれを求めるのは早すぎるのではないかという葛藤を感じます。
この葛藤が親の決断を鈍らせ、子どもの分離不安への対応を難しくします。
自分がいないと不安という思い
保護者自身が、自分がいないとこの子は不安なはずだ、自分がいないとこの子は困るはずだという思いを持っていることがあります。
この思いは時として、子どもを自立させることへの無意識の抵抗となります。
子離れへの寂しさ
子どもが親から離れる時間が増えることは、親にとっても寂しい変化です。
特に発達支援が必要な子どもの保護者は、この子の世話が自分の生活の中心になっていることが多く、子どもが離れることで自分の存在意義を失うような感覚を持つこともあります。
親子のいい距離感の作り方
子どもの不安を受け止めながら、少しずつ離れる
子どもの分離不安を無視したり、甘えだと切り捨てたりするのではなく、その不安を受け止めながら、少しずつ離れる時間を作っていくことが大切です。
実践のポイント
- 子どもの不安な気持ちを言葉で確認する
- ママもあなたと離れるのは寂しいけど、必ず戻ってくるよと伝える
- 最初は5分、次は10分と、少しずつ離れる時間を延ばす
- 離れている間もあなたのことを考えているよと伝える
保護者がこのような段階的なアプローチをすることで、子どもは少しずつ安心して親から離れられるようになります。
見通しを伝える
子どもに、これから何が起こるのか、いつ親が戻ってくるのかを具体的に伝えることが重要です。
実践のポイント
- タイマーを使って、この針がここに来たらママは戻ってくるよと示す
- 視覚的なスケジュールを使って、活動の流れを見せる
- 療育が終わったら、おやつを食べて、そのあとママと会えるよと順番を説明する
- 繰り返し同じパターンで経験させることで予測可能性を高める
保護者がこのような見通しの提示をすることで、子どもの不安が軽減されていきます。
安心できるものを持たせる
親から離れる時に、親を思い出させるもの、安心できるものを持たせることが有効です。
実践のポイント
- ママの写真、ハンカチ、小さなぬいぐるみなど
- それを見たり触ったりすることで安心できると伝える
- 療育先の先生にも、不安な時はそれを使ってもいいと伝えてもらう
- その物が親とのつながりを象徴するものになる
保護者がこのような移行対象を用意することで、子どもは親がいない時間も安心を保ちやすくなります。
別れ際の儀式を作る
毎回同じ方法で別れることで、子どもに予測可能性と安心感を与えることができます。
実践のポイント
- いつも同じ挨拶をする、いつも同じハグをする
- 別れ際を長引かせず、明るく簡潔に済ませる
- 行ってらっしゃい、楽しんできてねと前向きな言葉で送り出す
- 迎えの時には笑顔で、おかえり、頑張ったねと迎える
保護者がこのような一貫した儀式を作ることで、子どもは別れと再会のパターンを学んでいきます。
再会を喜ぶ
親と離れた時間を過ごした子どもを、再会時に笑顔で迎え、頑張ったことを認めることが大切です。
実践のポイント
- 会えて嬉しい、待っていたよと伝える
- 離れている間何をしたのか聞く
- 頑張ったね、ママと離れても大丈夫だったねと肯定する
- 次もきっと大丈夫だよという期待を伝える
保護者がこのような再会の喜びを示すことで、子どもは離れても必ず再会できるという確信を深めていきます。
親自身の不安をコントロールする
子どもの分離不安に対応するためには、親自身の不安をコントロールすることが重要です。
実践のポイント
- 自分がこの子と離れることに不安を感じていないか確認する
- その不安が子どもに伝わっていないか振り返る
- この子は大丈夫、少しずつ自立できると自分に言い聞かせる
- 必要であればパートナーや専門家に自分の不安を話す
保護者が自分の不安をコントロールすることで、子どもに安心を伝えやすくなります。
段階的な自立を支援する
いきなり長時間の分離ではなく、子どもの状態に合わせて段階的に自立を支援することが大切です。
実践のポイント
- 最初は親が同じ部屋にいるが別の活動をする
- 次は親が廊下で待つ
- その次は建物の外で待つ
- 最終的には家で待つ
- それぞれの段階で子どもが安心できることを確認してから次に進む
保護者がこのような段階的なアプローチをすることで、子どもは無理なく自立への階段を上っていけます。
療育先や学校との連携
子どもの分離不安について、療育先や学校の先生と情報を共有し、連携して対応することが重要です。
実践のポイント
- 子どもがどのような時に不安を示すか伝える
- 効果的だった対応方法を共有する
- 家庭と療育先で同じアプローチを取る
- 子どもの変化を定期的に確認し合う
保護者と支援者が連携することで、子どもはより一貫した支援を受けられ、安心して分離に慣れていけます。
実際の場面での対応例
【場面1】療育施設の入り口で子どもが泣いて親から離れようとしない場合
❌保護者の悪い対応:仕方ないから今日は一緒にいようか、と子どもの要求に応じて療育をキャンセルする
✅保護者の良い対応:不安なんだね、ママと離れるのは寂しいよね、とまず気持ちを受け止める。でもママは必ず迎えに来るよ、この時計の針がここに来たら会えるよと見通しを伝え、短時間から始めて少しずつ慣れていこうと提案する
保護者のポイント
- 不安を受け止める
- 見通しを示す
- 段階的に進める
【場面2】保育園の朝、別れ際に子どもが激しく泣く場合
❌保護者の悪い対応:泣く子どもを見て自分も泣きそうになり、もう少し一緒にいようかと躊躇する
✅保護者の良い対応:泣いていても動揺せず、行ってらっしゃい、楽しんできてね、必ず迎えに来るからねと明るく伝えて、先生に託して立ち去る。迷いを見せないことで子どもに安心を伝える
保護者のポイント
- 親が動揺しない
- 別れを長引かせない
- 明るく前向きに送り出す
【場面3】親が少し離れただけで子どもがパニックになる場合
❌保護者の悪い対応:パニックを避けるために、常に子どもと一緒にいるようにする
✅保護者の良い対応:まずは同じ部屋の中で、子どもから見える距離で別の活動をする。ママはここにいるよ、見えるよと声をかけながら、少しずつ距離を広げていく
保護者のポイント
- 段階的に距離を広げる
- 見える範囲から始める
- 声かけで安心を与える
【場面4】子どもが不安そうな表情を見せた時
❌保護者の悪い対応:不安そうな表情を見て、ママも不安だから一緒にいようと言ってしまう
✅保護者の良い対応:不安なんだね、と気持ちを受け止めた上で、でもママはあなたなら大丈夫だと思っているよ、一緒に頑張ろうと子どもの力を信じる姿勢を示す
保護者のポイント
- 不安を受け止める
- 子どもの力を信じる
- 親が安心を伝える
【場面5】再会時に子どもが頑張ったと報告してくれた場合
❌保護者の悪い対応:そう、よかったねと軽く流してしまう
✅保護者の良い対応:すごいね!ママと離れても頑張れたんだね!と大いに喜び、抱きしめる。次もきっと大丈夫だよと伝える
保護者のポイント
- 大いに喜ぶ
- 頑張りを認める
- 次への自信につなげる
療育現場での実例
ある5歳の子どもは、母親と離れることに強い不安を示し、療育施設の入り口で毎回激しく泣いていました。母親も子どもの泣く姿を見るのが辛く、何度も療育をキャンセルしていたのです。
私たちが母親に提案したのは、まずは母親も一緒に療育室に入り、子どもが活動している様子を見守ることから始めようというものでした。
最初の1週間は母親が部屋の隅に座って見守り、子どもは時々母親の方を振り返りながら活動に参加しました。次の週は、母親は療育室のドアのところで待ち、その次の週は廊下で待つようにしました。
そして1ヶ月後には、子どもは母親に行ってらっしゃいと手を振り、自分から療育室に入っていけるようになったのです。
母親は後に、あの時無理に離そうとしていたら、この子の不安はもっと強くなっていたと思います。段階的に進めたことで、この子も私も安心して分離できるようになりましたと語ってくれました。
大切だったのは、子どもの不安を受け止めながら、無理なく段階的に分離を進めたことでした。
親子の距離感は、急がず焦らず育てていくもの
子どもが親と離れることへの不安を示すとき、保護者はこの子はいつまでこうなのだろう、自立できるのだろうかと焦りを感じるかもしれません。
しかし、親子の適切な距離感は、一日で作られるものではありません。子どもの発達段階に合わせて、少しずつ、無理なく育てていくものなのです。
子どもの不安を受け止めながら、見通しを示し、安心できる環境を整え、段階的に分離の時間を作っていく。その積み重ねが、やがて子どもの心に親はいなくても大丈夫、必ず戻ってくるという安心感を育てていきます。
そして、その安心感こそが、子どもが将来自立していくための最も大切な土台になるのです。
保護者が焦らず、子どもの不安に寄り添いながら、いい距離感を作っていくことで、子どもは少しずつ親から離れる時間を楽しめるようになり、やがて自分の世界を広げていけるようになるでしょう。
今日も、子どもの分離不安に悩んでいる保護者がいると思います。その時、この不安は子どもの成長の一部であり、今は無理に離さなくていい、段階的に進めていけば必ず子どもは安心して離れられるようになるという視点を持つことで、親の焦りは和らぎ、子どもへの関わり方も優しくなり、親子の関係はより安定したものになっていくに違いありません。