おじいちゃん、おばあちゃんに子どもの発達特性を理解してもらえない・・・

祖父母に子どもの発達特性を説明しても、昔はこんな子いなかった、甘やかしているからだ、もっと厳しくしつけるべきだと言われる。療育に通っていることを話すと、そんな必要ないでしょ、普通の子じゃないかと否定される。子どもが癇癪を起こすと、親の育て方が悪いと責められる。
このような祖父母の言葉に、保護者は深く傷つきます。理解してほしい、協力してほしいと思う一方で、何度説明しても分かってもらえない現実に疲れ果ててしまいます。祖父母との関係が悪化し、子どもを預けることもできず、孤立していく保護者も少なくありません。
祖父母は悪意があって言っているのではなく、その時代の価値観や知識の中で子どもを理解しようとしているのです。しかし、その言葉が保護者を追い詰め、親子関係にも影響を及ぼすことがあります。
保護者が世代間の理解の違いを知り、上手な説明の方法を学び、そして何より完全な理解を求めすぎない心の持ち方を身につけることで、祖父母との関係は少しずつ改善していく可能性があるのです。
世代間の理解の違い
発達障害の認知度の違い
現在では発達障害という言葉が広く知られ、早期支援の重要性も認識されています。
しかし、祖父母世代が子育てをしていた時代には、発達障害という概念自体がほとんど知られていませんでした。そのような子どもは、変わった子、育てにくい子と呼ばれ、親のしつけの問題とされることが多かったのです。
子育て観の違い
祖父母世代の子育ては、厳しいしつけ、我慢させる、言うことを聞かせるという価値観が主流でした。
現在の子どもの個性を尊重する、特性に合わせた対応をする、という考え方とは大きく異なります。この根本的な価値観の違いが、相互理解を難しくしています。
情報源の違い
現在の保護者は、インターネットや専門書、療育施設などから最新の情報を得られます。
しかし、祖父母世代は自分の経験や周囲の話が主な情報源であり、発達支援に関する新しい知識に触れる機会が少ないのです。
時代背景の違い
祖父母世代が子育てをしていた時代は、地域のつながりが強く、多くの大人が子どもを見守っていました。
現在は核家族化が進み、保護者が孤立しやすい環境です。この時代背景の違いも、相互理解を難しくしています。
善意からの言葉
祖父母の多くは、悪意があって否定的な言葉を言っているのではありません。
孫を心配して、保護者を楽にしてあげたいという善意から、自分の知っている方法を提案しているのです。しかし、その善意が保護者を傷つけることもあるのです。
祖父母の言葉が保護者に与える影響
自信の喪失
祖父母から育て方が悪いと言われると、保護者は自信を失います。
ただでさえ子どもの特性に悩み、自分の対応が正しいのか不安を感じているところに、経験豊富な祖父母から否定されると、深く傷つくのです。
孤立感の増大
理解されないという経験は、保護者の孤立感を深めます。
最も身近な存在である祖父母にさえ理解されないなら、誰が理解してくれるのか。そのような絶望感が、保護者を孤立させていきます。
子どもへの影響
祖父母の否定的な言葉は、間接的に子どもにも伝わります。
おばあちゃんは僕のことを変だと思っている、と子どもが感じれば、自己肯定感が傷つきます。また、保護者と祖父母の対立を子どもが感じ取ることで、子ども自身が罪悪感を持つこともあります。
夫婦関係への影響
特に配偶者の両親から否定的な言葉を受けた場合、夫婦間の問題に発展することがあります。
なぜあなたは両親に説明しないのか、なぜかばってくれないのか、という不満が募り、夫婦関係が悪化することもあるのです。
上手な説明の仕方
具体的な行動で説明する
抽象的な説明ではなく、具体的にどんな行動があるのかを示すことが大切です。
実践のポイント
- 発達障害という言葉だけでなく、具体的な困難を説明する
- 例えば、大きな音が苦手で耳を塞ぐ、服のタグが気になって着替えられない、など
- その困難が本人にとって本当に辛いことだと伝える
- 実際の場面を見てもらう
保護者がこのような具体的な説明をすることで、祖父母も理解しやすくなります。
脳の特性として説明する
育て方の問題ではなく、脳の発達の特性であることを伝えることが重要です。
実践のポイント
- 生まれつきの脳の働き方の違いだと説明する
- 誰が悪いわけでもないことを伝える
- 眼鏡が必要な人がいるように、支援が必要な子がいると例える
- 医師や専門家の言葉を借りる
保護者がこのような説明をすることで、祖父母の理解が深まる可能性があります。
療育の目的を説明する
療育が何のために必要なのかを、丁寧に説明することが大切です。
実践のポイント
- 子どもが生きやすくなるための支援だと説明する
- 早期の支援が将来の自立につながることを伝える
- 実際に療育でどんなことをしているか見せる
- 子どもが楽しんでいる様子を伝える
保護者がこのような説明をすることで、療育への理解が得られやすくなります。
資料を活用する
言葉での説明が難しい場合、資料を活用することが有効です。
実践のポイント
- 発達障害に関するパンフレットを渡す
- 分かりやすい本を紹介する
- テレビ番組や動画を一緒に見る
- 専門家からの説明を聞いてもらう機会を作る
保護者がこのような資料を提供することで、祖父母が自分で学ぶきっかけになります。
感謝を伝えながら説明する
祖父母の善意を認めながら、現在の対応の必要性を伝えることが大切です。
実践のポイント
- 心配してくれてありがとうと感謝を伝える
- 昔の子育ての知恵も大切だと認める
- その上で、今はこういう対応が必要だと説明する
- 一緒に孫を支えてほしいと協力を求める
保護者がこのような伝え方をすることで、祖父母も受け入れやすくなります。
タイミングを選ぶ
説明するタイミングも重要です。
実践のポイント
- 子どもが癇癪を起こしている最中ではなく、落ち着いている時に話す
- 祖父母がリラックスしている時を選ぶ
- 一度にすべてを説明しようとしない
- 少しずつ、繰り返し伝える
保護者が適切なタイミングを選ぶことで、祖父母も聞く準備ができます。
理解を求めすぎない心の持ち方
完全な理解は期待しない
祖父母に完全に理解してもらおうとすることは、保護者自身を苦しめます。
実践のポイント
- 100%の理解は難しいと受け入れる
- 少しでも理解してくれたら十分と考える
- 理解されなくても自分の対応は正しいと信じる
- 理解を求めすぎないことで心が楽になる
保護者がこのような心構えを持つことで、祖父母との関係のストレスが軽減されます。
距離を保つことも選択肢
どうしても理解が得られず、否定的な言葉が続く場合、適度な距離を保つことも必要です。
実践のポイント
- 会う頻度を減らす
- 子どもを預けることはしばらくやめる
- 電話やメールでの連絡に留める
- 自分と子どもを守ることを優先する
保護者が自分と子どもを守るために距離を取ることは、悪いことではありません。
理解者を他に見つける
祖父母以外に、理解してくれる人を見つけることが大切です。
実践のポイント
- 同じ境遇の保護者とつながる
- 療育の先生や専門家に相談する
- 理解してくれる友人を大切にする
- 孤独ではないと実感する
保護者がこのような支援者を持つことで、祖父母の理解が得られなくても心の安定を保てます。
祖父母の良い面に目を向ける
理解が得られないことにばかり目を向けず、祖父母の良い面も見ることが大切です。
実践のポイント
- 孫を愛していることは確か
- 昔の子育ての知恵も役立つことがある
- 完璧な理解者でなくても、存在自体がありがたい
- 否定的な言葉の背後にある愛情を感じる
保護者がこのような視点を持つことで、祖父母への感謝の気持ちも生まれます。
時間が解決することもある
最初は理解が得られなくても、時間とともに変わることがあります。
実践のポイント
- 子どもの成長を見て、祖父母も理解を深める
- 療育の効果を実感すると、考えが変わることもある
- 焦らず、長い目で見る
- 今は理解されなくても、いつか分かってくれるかもしれない
保護者がこのような長期的な視点を持つことで、焦りが軽減されます。
子どもへの配慮
祖父母の言葉から子どもを守る
祖父母の否定的な言葉が子どもに直接伝わらないよう配慮することが大切です。
実践のポイント
- 子どもの前では、祖父母の否定的な言葉を議論しない
- 祖父母が子どもを否定する場合、その場を離れる
- 子どもには、おじいちゃん、おばあちゃんもあなたのことが大好きだよと伝える
- 子どもが傷ついていないか確認する
保護者がこのような配慮をすることで、子どもの自己肯定感が守られます。
祖父母との関係を完全に断たない工夫
可能な範囲で、祖父母との関係を維持することも大切です。
実践のポイント
- 短時間の訪問にする
- 公園など外で会う
- 特別な日だけ会う
- 保護者が同席する
- 子どもが祖父母との時間を楽しめるよう配慮する
保護者がこのような工夫をすることで、子どもは祖父母との関係を持ち続けられます。
実際の場面での対応例
【場面1】祖父母が「昔はこんな子いなかった」と言う
❌保護者の悪い対応:感情的になって、時代が違うんです、と反発する
✅保護者の良い対応:そうですよね、昔は発達障害という言葉もなかったですよねと受け止める。でも今は研究が進んで、こういう特性があることが分かったんです、早期の支援で子どもが生きやすくなるんですと穏やかに説明する
保護者のポイント
- 一度受け止める
- 感情的にならない
- 穏やかに説明する
【場面2】祖父母が「甘やかしているからだ」と言う
❌保護者の悪い対応:甘やかしてなんかいません、と怒る
✅保護者の良い対応:心配してくれてありがとうございますと感謝を伝える。甘やかしているのではなく、この子に必要な対応をしているんです、専門家もそう言っていますと説明する
保護者のポイント
- 感謝を伝える
- 誤解を穏やかに解く
- 専門家の言葉を借りる
【場面3】祖父母が子どもを叱りつける
❌保護者の悪い対応:祖父母の前で、叱らないでください、と言う
✅保護者の良い対応:その場では何も言わず、後で落ち着いて話す。この子はこういう理由でできないんです、叱っても改善しないんですと説明する。どうしても理解が得られない場合は、距離を取る
保護者のポイント
- その場では対立しない
- 後で落ち着いて話す
- 必要なら距離を取る
【場面4】祖父母が「療育なんて必要ない」と言う
❌保護者の悪い対応:必要なんです、と強く主張して対立する
✅保護者の良い対応:そう思われるのも分かりますと受け止める。でも実際に療育に通うようになって、子どもがこんなに変わったんですと具体的な変化を伝える。良かったら一度見学に来ませんか、と誘う
保護者のポイント
- 一度受け止める
- 具体的な変化を伝える
- 見学を提案する
【場面5】何度説明しても理解してもらえない
❌保護者の悪い対応:もう疲れた、二度と会わない、と関係を断つ
✅保護者の良い対応:完全な理解は難しいんだな、と受け入れる。理解されなくても、自分の対応は正しいと信じる。会う頻度を減らし、距離を保ちながら関係を維持する
保護者のポイント
- 完全な理解を諦める
- 自分を信じる
- 適度な距離を保つ
療育現場での実例
ある保護者は、義理の両親から常に子育てを批判されていました。この子は普通じゃないか、療育なんて行かせるから変な子になる、もっと厳しくしつけろ、と言われ続けていました。
保護者は何度も説明しましたが、理解してもらえませんでした。そのストレスで、保護者自身が体調を崩してしまったのです。
療育で相談すると、無理に理解してもらおうとしなくていいですよ、と言われました。完全な理解は難しいこと、それでも保護者の対応は正しいこと、必要なら距離を取ってもいいことを伝えられました。
保護者は、義理の両親に完全に理解してもらうことを諦めました。そして、会う頻度を減らし、子どもを預けることもやめました。
最初は罪悪感がありましたが、距離を取ったことで保護者の心は楽になり、子どもへの対応も改善しました。義理の両親との関係も、距離を保つことで逆に悪化せずに済んだのです。
数年後、子どもが成長し、療育の効果が目に見えて分かるようになると、義理の両親も少しずつ理解を示すようになりました。やっぱり療育は必要だったんだね、と言ってくれたのです。
保護者は、あの時無理に理解してもらおうとせず、距離を取ったことが正解だったと語ってくれました。
大切だったのは、完全な理解を求めすぎず、自分と子どもを守ることを優先したことでした。
理解されなくても、あなたの対応は正しい
祖父母に理解してもらえないことは、保護者にとって大きな悲しみです。
しかし、理解されないからといって、あなたの対応が間違っているわけではありません。専門家と相談しながら、子どもに必要な支援をしている、それは間違いなく正しいことなのです。
祖父母世代との価値観の違いは、簡単には埋まりません。完全な理解を求めることは、保護者自身を苦しめます。
できる範囲で説明し、理解してもらえたら感謝し、理解されなくても自分を信じる。そして必要なら、適度な距離を保つ。そのような柔軟な対応が、保護者の心を守り、結果として子どもも守ることになるのです。
そして、時間が経てば、祖父母の理解が深まることもあります。今は分かってもらえなくても、いつか分かってもらえる日が来るかもしれません。
保護者が自分の対応に自信を持ち、理解を求めすぎず、適度な距離を保つことで、祖父母との関係は保たれ、子どもも保護者も安心して過ごせるようになっていくでしょう。
今日も祖父母との関係に悩んでいる保護者がいると思います。その時、完全な理解は難しい、でも自分の対応は正しい、理解されなくても大丈夫という視点を持つことで、保護者の心は少し軽くなり、祖父母への対応も柔軟になり、家族全体の関係が少しずつ良い方向に向かっていくに違いありません。