夫婦で意見が合わない。パートナーが子どもの特性を理解しない、、、夫婦で協力する関係の作り方

療育に通う必要があると思うけれど、パートナーは普通の子だから必要ないと言う。子どもへの対応について話し合っても、甘やかしすぎだ、厳しくしつければ直ると意見が合わない。私が子どもの特性を説明しても、パートナーは聞く耳を持たず、育て方の問題だと責める。
発達支援が必要な子どもを育てる家庭では、夫婦間の認識のズレが大きな問題になることがあります。一方が子どもの特性を理解し、適切な対応をしようとしているのに、もう一方がそれを理解せず、協力してくれない。そのような状況に、保護者は深く傷つき、孤独を感じます。
夫婦で意見が合わないことは、子どもにも影響を及ぼします。親が違う対応をすることで子どもは混乱し、夫婦の対立を感じ取って不安定になることもあります。そして何より、パートナーとの対立が続くことで、保護者自身が疲弊してしまうのです。
しかし、夫婦間の認識のズレには理由があり、それを理解した上で、適切な伝え方を学び、少しずつ協力関係を築いていくことで、夫婦で子どもを支える体制が作れるようになっていきます。
夫婦間の認識のズレが生まれる理由
子どもとの関わり方の違い
多くの場合、母親が子どもと過ごす時間が長く、子どもの特性や困難を日々目にしています。
一方、父親は仕事で家にいる時間が短く、子どもの困難な場面を直接見る機会が少ないのです。母親が子どもが癇癪を起こすと言っても、父親はその場面を見ていないため、実感が湧かないのです。
情報量の違い
療育施設や学校との連絡、医師との面談、専門書やインターネットでの情報収集など、主に関わっている保護者が多くの情報を持っています。
パートナーはそのような情報に触れる機会が少なく、発達障害についての知識が不足しているため、理解が難しい場合があります。
受容の段階の違い
子どもに発達の特性があると知った時、保護者は様々な感情を経験します。否認、怒り、悲しみ、受容という段階を経ます。
夫婦でこの段階が異なっていると、一方は受容して前に進もうとしているのに、もう一方はまだ否認の段階にいて、現実を受け入れられないということが起こります。
育ってきた環境の違い
パートナーが厳しいしつけを受けて育った場合、子どもにも同じように厳しくすべきだと考えることがあります。
発達特性への配慮という考え方が、甘やかしに見えてしまうのです。自分はそうやって育ったのに、なぜこの子だけ特別扱いするのかという思いが生じます。
プライドや面子の問題
特に父親の場合、自分の子どもに障害があることを認めたくないという思いがあることがあります。
周囲から見られる目、親戚からの評価、職場での立場など、様々な面子が絡んで、現実を受け入れられないのです。
責任を感じる辛さ
子どもの特性を認めることは、自分の遺伝や育て方が原因ではないかという罪悪感につながることがあります。
その辛さから、特性を否定したり、相手のせいにしたりすることで、自分を守ろうとするのです。
コミュニケーション不足
日々の忙しさの中で、夫婦でじっくり話す時間が取れないことも、認識のズレを生みます。
お互いの考えや思いを共有する機会がないまま、それぞれが独自の判断で動いてしまい、意見の対立が深まっていくこともあります。
パートナーへの上手な伝え方
感情的にならず、冷静に話す
パートナーの理解のなさに腹が立つこともありますが、感情的になると相手も防衛的になります。
実践のポイント
- 落ち着いた時に話す
- 責めるような言い方をしない
- 事実を淡々と伝える
- 相手を批判しない
- 協力してほしいという姿勢で話す
保護者がこのような姿勢で話すことで、パートナーも聞く耳を持ちやすくなります。
具体的なエピソードを共有する
抽象的な説明ではなく、具体的に何が起こっているのかを伝えることが大切です。
実践のポイント
- 今日こういうことがあったと具体例を示す
- 動画を見せる
- 学校からの連絡帳を見せる
- 療育の先生の言葉を伝える
- 実際の場面を見てもらう
保護者が具体的な情報を共有することで、パートナーも実感が湧きやすくなります。
専門家の言葉を借りる
保護者の言葉では聞かなくても、専門家の言葉なら聞くということがあります。
実践のポイント
- 医師の診断書を見せる
- 療育の先生からの手紙を渡す
- 面談に一緒に行ってもらう
- 専門書や信頼できる情報を渡す
- 講演会や勉強会に誘う
保護者が専門家の力を借りることで、説得力が増します。
パートナーの気持ちを受け止める
パートナーが否定的な反応を示すのは、辛い現実から逃げたいという気持ちの表れかもしれません。
実践のポイント
- あなたも辛いよねと共感する
- 一緒に悩もうと伝える
- 責任を押し付けない
- 二人で子どもを支えようと提案する
- パートナーの思いを聞く
保護者がパートナーの気持ちに寄り添うことで、対立ではなく協力の関係が築けます。
小さな協力から始める
いきなり大きな理解や協力を求めず、小さなことから始めることが有効です。
実践のポイント
- 療育の送迎を一度だけお願いする
- 週末に公園に連れて行ってもらう
- 子どもと遊んでもらう時間を作る
- その時の子どもの様子を観察してもらう
- できたことを感謝する
保護者が小さな協力を積み重ねることで、パートナーも徐々に関わるようになります。
役割分担を明確にする
お互いに何をするのか、役割を明確にすることで、協力しやすくなります。
実践のポイント
- 療育の送迎はどちらが担当するか
- 学校との連絡はどちらが主に行うか
- 週末の子どもとの時間はどう分担するか
- お互いができることを確認する
- 無理のない範囲で分担する
保護者が役割を明確にすることで、パートナーも動きやすくなります。
あなたの力が必要だと伝える
パートナーに、あなたは必要だ、一緒に子どもを支えてほしいと伝えることが大切です。
実践のポイント
- 一人では限界だと素直に言う
- 二人で協力すればできると伝える
- あなたの存在が子どもにとって大切だと言う
- 感謝の気持ちを伝える
- 非難ではなく協力を求める
保護者がこのような伝え方をすることで、パートナーも協力する気持ちになります。
夫婦で協力する関係の作り方
定期的に話す時間を作る
子どものことについて、夫婦でじっくり話す時間を定期的に持つことが重要です。
実践のポイント
- 週に一度、30分でもいいから話す時間を作る
- 子どもが寝た後など落ち着いた時間に
- お互いの考えや思いを共有する
- 責め合いではなく、一緒に考える場にする
- 今週の出来事、来週の予定などを共有する
保護者が定期的な対話の場を作ることで、認識のズレが小さくなります。
情報を共有する
パートナーが知らないことが、認識のズレを生みます。
実践のポイント
- 療育の様子を伝える
- 学校からの連絡を共有する
- 医師からの説明を伝える
- 子どもの成長を共有する
- 困っていることを共有する
保護者が情報を共有することで、パートナーも状況を理解できます。
一緒に療育や面談に参加する
可能であれば、パートナーにも療育の様子を見てもらったり、面談に同席してもらったりすることが有効です。
実践のポイント
- 年に数回でもいいから一緒に行く
- 専門家の話を直接聞いてもらう
- 子どもが療育でどう過ごしているか見てもらう
- 他の保護者とも話す機会を持つ
- 実際に見ることで理解が深まる
保護者がパートナーを巻き込むことで、当事者意識が高まります。
お互いの役割を認め合う
夫婦で役割が違っても、それぞれの役割を認め合うことが大切です。
実践のポイント
- 直接的な育児と経済的支援、どちらも大切
- 相手の役割に感謝する
- 完璧を求めない
- できる範囲で協力する
- 相手を責めない
保護者がお互いを認め合うことで、協力関係が築けます。
ストレスを共有する
子育ての大変さ、将来への不安など、ストレスを共有することで、連帯感が生まれます。
実践のポイント
- 辛いことを素直に話す
- 相手も辛いことを理解する
- 一緒に乗り越えようと確認する
- 相手のストレスにも配慮する
- お互いを支え合う
保護者がストレスを共有することで、孤独感が軽減されます。
第三者の助けを借りる
夫婦だけで解決できない場合、第三者の助けを借りることも選択肢です。
実践のポイント
- カウンセラーに相談する
- 親の会で他の夫婦の話を聞く
- 療育の先生に仲介してもらう
- 信頼できる友人に話す
- 夫婦カウンセリングを受ける
保護者が第三者の力を借りることで、新たな視点が得られます。
子どもの成長を一緒に喜ぶ
子どもができるようになったこと、成長したことを、夫婦で一緒に喜ぶことが大切です。
実践のポイント
- 小さな成長を共有する
- 一緒に喜ぶ
- 子どもを褒める時、パートナーの前でも褒める
- 写真や動画を共有する
- ポジティブな話題を増やす
保護者が成長を共有することで、夫婦の絆が深まります。
どうしても理解が得られない時
完全な理解を求めすぎない
パートナーが完全に理解することを期待しすぎると、自分が苦しくなります。
実践のポイント
- 少しでも理解してくれたら十分と考える
- 完璧な協力は期待しない
- できることだけでもありがたいと思う
- 理解されなくても自分の対応は正しいと信じる
保護者がこの心構えを持つことで、心が楽になります。
距離を置くことも選択肢
どうしても協力が得られず、対立が続く場合、一時的に距離を置くことも必要かもしれません。
実践のポイント
- 子育ての話題を減らす
- それぞれが別々に対応する
- 深刻な対立を避ける
- 自分と子どもを守ることを優先する
保護者が自分を守ることも、時には必要です。
専門家に相談する
夫婦関係が深刻に悪化している場合、専門家に相談することが重要です。
実践のポイント
- カウンセラー・心理師に相談する
- 夫婦カウンセリングを受ける
- 必要なら別居も検討する
- 子どもの福祉を最優先に考える
保護者が適切な支援を求めることで、状況が改善する可能性があります。
実際の場面での対応例
【場面1】パートナーが療育は必要ないと言う
❌保護者の悪い対応:何も分かっていない、この子には必要なの!と感情的に言い返す
✅保護者の良い対応:あなたがそう思うのも分かる、でも一度療育を見に来てもらえないかな、専門家の話も聞いてほしいと冷静に提案する
保護者のポイント
- 感情的にならない
- 実際に見てもらう
- 専門家の力を借りる
【場面2】パートナーが子どもに厳しく叱る
❌保護者の悪い対応:子どもの前で、そういう叱り方はダメでしょ!と批判する
✅保護者の良い対応:後で二人きりの時に、この子にはこういう対応が効果的だと専門家が言っていたと穏やかに伝える。一緒に勉強会に行こうと誘う
保護者のポイント
- 子どもの前では対立しない
- 後で冷静に話す
- 専門家の言葉を借りる
【場面3】パートナーが育て方のせいだと責める
❌保護者の悪い対応:あなたが協力しないからでしょ!と責め返す
✅保護者の良い対応:そう言われると辛い、でも誰のせいでもないんだよ、一緒に子どもを支えていこうと伝える。医師の説明を見せる
保護者のポイント
- 責め合いをしない
- 協力を求める
- 医学的な説明を示す
【場面4】パートナーが子育てに無関心
❌保護者の悪い対応:もういい、一人でやるから!と突き放す
✅保護者の良い対応:私一人では限界だから、週末だけでも子どもと遊んでもらえないかなと具体的に頼む。小さな協力から始める
保護者のポイント
- 突き放さない
- 具体的に頼む
- 小さなことから始める
【場面5】夫婦で意見が対立し、喧嘩になる
❌保護者の悪い対応:子どもの前で激しく言い合う
✅保護者の良い対応:今は冷静に話せないから、後で話そうと提案する。子どもがいない時に、お互いの思いを聞き合う時間を作る
保護者のポイント
- 子どもの前では喧嘩しない
- 冷静になる時間を取る
- お互いの思いを聞く
療育現場での実例
ある家庭では、母親が子どもの発達特性に気づき、療育に通い始めました。しかし、父親は普通の子だ、療育なんて必要ないと反対し続けました。
母親は何度も説明しましたが、父親は聞く耳を持たず、甘やかしすぎだ、厳しくしつければ直ると言い続けました。夫婦の対立は深まり、会話も減り、家庭の雰囲気は悪化していきました。
療育の先生に相談すると、一度父親にも療育を見に来てもらうことを提案されました。母親は半信半疑でしたが、父親を誘ってみました。
最初、父親は乗り気ではありませんでしたが、仕事を調整して一度だけ療育に同行しました。そこで、専門家から子どもの特性について説明を受け、他の子どもたちの様子も見ました。
その日の夜、父親は初めて、この子には本当に支援が必要なんだな、と言いました。実際に見て、専門家の話を聞いたことで、やっと現実を受け入れられたのです。
それからは、父親も少しずつ協力するようになりました。週末に子どもと公園に行く、療育の送迎を時々手伝う、母親の話を聞くようになる。完璧な理解や協力ではありませんでしたが、以前よりずっと良い関係になりました。
母親は、あの時諦めずに療育に誘って良かった、実際に見てもらうことが大切だったと語ってくれました。
大切だったのは、感情的に対立せず、実際に見てもらう機会を作り、専門家の力を借りたことでした。
夫婦で協力できることが、子どもにとって最良
子どもにとって最も大切なのは、両親が協力して自分を支えてくれることです。
夫婦が対立し、家庭の雰囲気が悪いことは、子どもに大きな不安を与えます。逆に、夫婦が協力し、温かい雰囲気の中で育つことは、子どもの心の安定につながります。
パートナーの理解が得られないことは辛いことですが、感情的に対立するのではなく、冷静に、具体的に、専門家の力も借りながら伝えることで、少しずつ理解と協力が得られる可能性があります。
そして、完全な理解を求めすぎず、小さな協力から始め、お互いの役割を認め合い、一緒に子どもの成長を喜ぶ。そのような関係を築くことで、夫婦は子どもを支える強いチームになれるのです。
今日もパートナーとの関係に悩んでいる保護者がいるでしょう。その時、感情的にならず、小さな協力から始めよう、完全な理解は求めすぎない、一緒に子どもを支えるチームになろうという視点を持つことで、保護者の心は少し軽くなり、パートナーへの関わり方も変わり、夫婦関係は少しずつ改善していくに違いありません。