小学生の感覚統合療法:作業療法士以外の支援者による実施可能性と就学前の発達支援の重要性

小学生以降の就学児童が学校生活で直面するさまざまな困難に対して、感覚統合療法は非常に有効です。感覚統合療法は、特別な感覚処理の問題を抱えた子どもたちが、身体的・感覚的な情報を適切に処理できるようサポートする療法です。この療法は、従来作業療法士が中心的に実施してきましたが、児童指導員や学校教員もその基本的な理論と実践を理解すれば、学校現場や放課後等デイサービスなどで有効に活用できることがわかっています。
感覚統合療法とは?
感覚統合療法は、子どもたちが外界からの刺激(触覚、視覚、聴覚、 固有覚、前庭覚など)を効率よく処理し、適切に反応できるようにする治療法です。子どもが感覚情報をうまく統合できない場合、例えば運動がぎこちなくなる、集中できない、授業中に落ち着いて座っていられないなどの問題が生じることがあります。この療法は特に、学習障害(LD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)、発達協調運動障害(DCD)の児童に効果的です。
実施者の幅広い対応力:作業療法士だけではない
感覚統合療法は、作業療法士だけでなく、基本的な知識とトレーニングを受けた児童指導員や学校教員も実施できることが確認されています。特に、学校内や放課後等デイサービスにおいては、日常の支援者がこの療法を実施することで、子どもたちの日々の学習や生活がスムーズに進む手助けが可能です。研究では、視覚-運動の協応性を高めるトレーニングやバランス感覚の向上を図る方法などが効果を上げていることが示されています。
例えば、池田市の療育センターエコルドや放課後等デイサービスでは、専門的なトレーニングを受けたスタッフが、感覚統合療法を活用して子どもたちを支援しています。授業中の集中力の欠如や運動機能の低下に悩む子どもたちが、定期的な療育を通じて改善していく姿が見られます。
学校での具体的な困りごとと感覚統合療法の効果
学校生活において、感覚統合の問題を抱える子どもは多くの場面で困難に直面します。例えば、授業中にじっと座っていられない、ノートをうまく取れない、友だちと適切なコミュニケーションが取れないなどが典型的な問題です。以下に、感覚統合療法がどのようにこれらの困りごとを改善するか、具体的な例を紹介します。
- 視覚-運動協調の問題:書字障害(ディスグラフィア)を持つ子どもは、文字を書いたりノートを取ったりする際に困難を感じます。感覚統合療法では、視覚と手の動きを連動させるトレーニングを行い、これにより子どもたちは書字のスキルを向上させることができます。例えば、授業中にノートを書く際、以前は手が震えてしまい文字が読めなかった子どもが、感覚統合訓練を受けた後はスムーズに書字できるようになったケースが報告されています。
- 運動が苦手な子どもへのサポート:体育の授業で跳び箱や運動がうまくできない子どもは、バランス感覚やリズム感に問題があることがあります。感覚統合療法では、こうした感覚を訓練することで、運動能力の向上が図られます。バランスボールや跳び箱を使った療法によって、運動のぎこちなさが改善されたケースもあります。
- 集中力や衝動性の問題:ADHDの子どもは、授業中に集中が続かない、指示に従えないといった問題に直面します。感覚統合療法では、落ち着きを取り戻すための運動を取り入れることで、集中力を改善し、授業中に落ち着いて座れるようになるといった成果が確認されています。
就学前の発達支援の重要性
小学生以降の問題が顕在化する前に、就学前の発達支援が極めて重要です。早期の段階で感覚統合療法を取り入れることで、将来的な学習や社会性の問題を予防することができます。特に、3歳から5歳の間に適切な療育を行うことで、学校での不適応を防ぎ、二次障害を予防することが可能です。
池田市などにある児童発達支援センターでは、感覚統合の問題に早期に気づき、専門的な支援を提供しています。この支援により、子どもたちは自信を持って小学校に進学し、学習や社会的な場面での困難を最小限に抑えることができます。
放課後等デイサービスでの感覚統合療法
学校だけでなく、放課後の時間にも療育を継続できる場所として、放課後等デイサービスが重要な役割を果たします。感覚統合療法は、放課後等デイサービスでも実施され、子どもたちはリラックスしながら訓練に取り組むことができます。日中に学校で抱えたストレスを軽減し、放課後の時間を使って療育を継続することで、子どもたちは学校生活に前向きに取り組むことができるようになります。
まとめ
感覚統合療法は、学校生活や日常生活で困難を抱える子どもたちにとって非常に有効な支援方法です。作業療法士だけでなく、基本的なトレーニングを受けた児童指導員や学校教員も実施できるため、幅広い支援者が関わることで、子どもたちの発達を支えることが可能です。また、就学前の発達支援を早期に行うことが将来的な困難を予防する上で重要です。大阪府池田市にある療育センターエコルドでは、地域の中で療育を提供し、子どもたちの成長を支えています。
参考文献
- 池田歩美ほか(2003)『アスペルガー障害児に対する感覚統合訓練法の治療効果』大阪大学教育研究科学校教育専攻。
- 海塚敏郎・釘宮正次(1994)『学習障害に対する感覚統合療法の臨床的研究』特殊教育学研究。
- 白石純子ほか(2021)『発達性協調運動症のある子どもの書字困難の特徴と感覚統合療法の効果』学習障害研究。