ASD児の癇癪の原因と対策

自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもが日常生活で癇癪を起こす場面は、特に2歳から6歳の間においてよく見られます。これは、ASDの子どもたちが外界の刺激に対する感覚的な過敏さや言語による表現の難しさからくるストレスを抱えているためです。この時期は、発達段階的にも自己主張が強くなる一方で、まだ適切な表現や自制が難しいことが背景にあります。
癇癪は家庭内だけでなく、外出先でも発生することが多く、特に人が多く騒がしい場所や予定外の出来事に遭遇することで急激に不安が高まる場合が多いです。このような場面で、親御さんがどのように対応すべきかを知っておくことが重要です。
癇癪の原因
ASDの子どもが癇癪を起こす原因として、以下の要因が挙げられます。
- 感覚過敏と環境の変化:ASDの子どもは、聴覚や視覚、触覚などの感覚刺激に対して過敏であることが多くあります。人混みや騒がしい場所では音や光、匂いといった多くの刺激が一度に子どもの脳に流れ込み、パニックを引き起こすことがあります。また、環境の変化にも敏感であり、予定外の事が起こると強い不安を感じやすいことが報告されています。
- コミュニケーションの困難さ:ASDの子どもは、自分の思いや不安を適切に言葉で表現することが難しい場合があります。このため、感情の高まりやストレスが溜まると、癇癪という形でそれを表出することがよくあります。
- 自己コントロールの未熟さ:幼児期のASD児は、まだ自分の感情をコントロールする能力が十分に発達していません。これは、言語発達が未熟であることに加え、他者との関わりや社会的なルールの理解が難しいことが一因とされています。
外出先での癇癪への対策
外出先での癇癪を防ぐためには、以下の対策が効果的です。
- 事前の準備と予告:外出する際には、子どもが安心できるように事前にスケジュールや訪れる場所を伝えることが大切です。絵カードや写真を使って視覚的にスケジュールを示すことで、予定を理解しやすくし、予測不能な状況への不安を軽減することができます。
- 安心できる持ち物を準備:子どもがリラックスできるアイテム(例えば、お気に入りのおもちゃやブランケットなど)を持参し、癇癪が起きそうな時にそれを渡すことで気をそらすことが可能です。
- 静かな場所での休憩:外出先で子どもが過敏に反応しそうな場所では、定期的に静かな場所で休憩を取ることが重要です。人混みや騒がしい場所では子どもの不安が高まりやすいため、予め休憩スペースを確認しておき、子どもが落ち着ける場所を提供することが効果的です。
家庭での癇癪への対策
- ルーティンの安定:家庭では、ASD児が安心して過ごせるように毎日の生活に一定のリズムやルールを設定することが有効です。ルーティンを維持することで、子どもは次に何が起こるかを予測しやすくなり、不安が軽減されます。
- 感情表現の支援:子どもが感情を言葉で表現するのが難しい場合、感情カードや絵本などを活用して「嬉しい」「悲しい」「怒っている」といった感情を視覚的に示し、子どもが自分の気持ちを理解しやすくする工夫が効果的です。
- 感覚統合療法の利用:感覚過敏が癇癪の原因となる場合、感覚統合療法を取り入れることで、環境の変化に対する適応力を高めることができます。専門の療育センターや作業療法士による訓練が効果的とされており、親御さんが専門家と連携して取り組むことが推奨されています。
お母さんへのメッセージ
ASD児を育てるお母さんは、日常的に子どもの癇癪や不安定な状況に直面し、時には「どうしていいかわからない」と感じることもあるでしょう。子どもが癇癪を起こすたびに自分を責めてしまうこともあるかもしれません。しかし、癇癪は子どもが発する「助けてほしい」というサインの一つです。
外出先で癇癪が起きた時には、まずお母さんが深呼吸をして冷静になることが大切です。焦らずに子どもの気持ちに寄り添いながら、「大丈夫だよ」と伝え続けることが、子どもにとって最も安心できる支えになります。
まとめ
ASD児の癇癪は、感覚過敏やコミュニケーションの難しさから来るものであり、外出先や家庭内での適切な対策が必要です。お母さんの努力は、子どもの成長に大きな影響を与えます。どうしても難しいと感じた時には、一人で抱え込まず、ぜひ療育センターエコルドに相談してください。専門の支援者が、お母さんと子どもの未来を一緒にサポートします。