“順番が守れない”のはなぜ?〜待つ力を育てるステップ〜

「待てない!」でトラブルになってしまうとき
「すべり台で割り込んでしまう」
「おやつの配布で“早くちょうだい!”と泣き叫ぶ」
「友達が遊んでいるのに横から奪ってしまう」
子どもが「順番を守れない」姿に悩む保護者は多いです。園から「待てなくてトラブルになる」と指摘されることもありますし、家庭でも兄弟げんかの原因になりやすいテーマです。
大人からすれば「順番を守るのは当たり前」と感じますが、子どもにとって「順番を待つ」ことは高度なスキル。脳や心の発達、環境の整え方によって、初めて少しずつ育っていく力なのです。
この記事では、「なぜ子どもは順番を守れないのか」という背景をひもときながら、家庭でできる待つ力を育てるステップと、具体的な声かけの工夫をご紹介します。
第1章:なぜ子どもは順番が守れないのか?
① 自己抑制機能が未発達だから
「自分のしたいことを我慢する」力は、脳の前頭前野の発達と深く関係しています。幼児期にはまだ未熟であり、「今すぐやりたい!」という気持ちを抑えるのは難しいのです。
② 時間の感覚が未熟だから
大人にとって「1分待つ」は短くても、子どもにとってはとても長く感じられます。時間の感覚が育つまでは「まだ?」と焦りが強くなります。
③ 見通しが持てないから
「次は自分の番」と分からないまま待つのは不安です。見通しが持てないと、割り込んだり泣き叫んだりしてしまいます。
④ 発達特性が関係していることも
ADHDの子は衝動的に行動しやすく、ASDの子はルール理解に難しさがあるため、「順番を守れない」姿が強く出ることがあります。
第2章:「順番が守れない=わがまま」ではない
大人から見ると「わがまま」「しつけ不足」と思われがちですが、順番を待つ力は「生まれつき備わっているもの」ではありません。育つためには経験とサポートが必要です。
「順番を守れない」のは性格の問題ではなく、「まだその力が育っていない」だけと理解することが、保護者の最初の一歩です。
第3章:待つ力を育てる家庭でのステップ
① 見通しを与える
「あとで順番が来る」と分かるだけで、子どもは安心して待ちやすくなります。
声かけ例
- 「このカードを渡したら○○ちゃんの番だよ」
- 「砂時計が落ちたら交代ね」
② 短い時間から練習する
最初から長時間待つのは難しいので、数秒〜数十秒から始め、少しずつ待てる時間を伸ばしていきます。
声かけ例
- 「10数えたら交代しよう」
- 「歌が終わったら順番だよ」
③ 視覚的に示す
順番カードやタイマーなど「見える工夫」があると、安心して待てます。
声かけ例
- 「このカードを持ってる人が次に遊べるよ」
- 「ピピッと鳴ったら交代ね」
④ 待つ間にできることを用意する
ただ待つのは退屈なので、小さな役割や楽しみを用意すると、気持ちが切り替えやすいです。
声かけ例
- 「待ってる間に応援しよう」
- 「次にやることを考えてみよう」
⑤ 成功体験を積み重ねる
「待てた!」という経験を重ねることが、順番を守る力の土台になります。
声かけ例
- 「順番をちゃんと待てたね、すごい!」
- 「待てたから楽しく遊べたね」
第4章:日常生活でできる工夫
食事のとき
配膳を「順番」で行うと自然に待つ練習になります。
声かけ例
- 「今日はママが配るから、次は○○ちゃんの番だよ」
- 「みんなそろったら“いただきます”だね」
遊びのとき
兄弟や友達と遊ぶときに「順番ルール」を入れると、遊びながら学べます。
声かけ例
- 「ボールを投げたら次は○○ちゃんね」
- 「順番にしないとみんな困っちゃうよ」
外出のとき
エレベーターやバスで「順番を守る」場面はたくさんあります。短い声かけでサポートしましょう。
声かけ例
- 「前の人が終わったら乗ろうね」
- 「次は○○ちゃんだよ」
第5章:園や学校との連携
順番を守れないことは、集団生活で目立ちやすい課題です。先生に「待つのが難しい」「見える工夫があると安心する」と伝えておくことで、一貫したサポートができます。
園や学校で取り入れられる工夫
- 順番カードを活用する
- 名前を呼んで「次はあなた」と伝える
- 交代タイムを歌や合図で知らせる
第6章:支援を検討するサイン
以下のような場合は、発達相談や専門機関に相談してみると安心です。
- 年齢が大きくなっても待てず、常にトラブルになる
- 順番を守れないことで集団活動に参加できない
- 強い不安やパニックが起きてしまう
早めに相談することで、待つ力を育てるための専門的な支援や具体的な工夫を一緒に考えてもらえます。
最後に:待つ力は少しずつ育つ
「順番が守れない」姿は、子どもがまだ待つ力を獲得していないということ。
- 見通しを伝える
- 短い時間から始める
- 視覚的に示す
- 待つ間にできることを用意する
- 成功体験を積む
これらを積み重ねることで、子どもは少しずつ「待つのもできる」と実感できるようになります。
順番を守ることは、社会の中で生きていくうえで欠かせないスキルです。焦らずに一歩ずつ、待つ力を家庭と園や学校で一緒に育んでいきましょう。