“なんでもママと一緒じゃないと嫌!”——安心と自立のバランスを育てる

「ママじゃないとダメ」「離れられない」——甘えすぎ?それとも大切な発達段階?
「保育園で泣いて離れない」
「トイレに行くだけで“ママも来て!”と言う」
「誰かが代わりにしても“ママがいい!”」
そんな“ママと一緒じゃないと嫌!”という姿に、
「このままで大丈夫かな」「甘やかしてるのかも」と不安になる保護者の方も多いのではないでしょうか。
でも実は、これは心の成長の中でとても大切なプロセス。
子どもが“安心できる人”を求めるのは、心の土台をつくっている証拠です。
この記事では、分離不安や依存的な行動の背景を「愛着(アタッチメント)」の観点からわかりやすく解説し、
「安心」と「自立」をバランスよく育てる家庭での関わり方を紹介します。
第1章:「ママと一緒じゃないと嫌!」は自然な発達段階
愛着(アタッチメント)とは?
愛着とは、「特定の人と結ばれる安心のきずな」です。
赤ちゃんは生まれながらにして、誰かに守られ、安心を感じながら育つようにできています。
そのため、1〜3歳頃の子どもが「ママがいい!」と強く求めるのは自然なこと。
大人でいえば、「信頼できる人がそばにいてほしい」と思う感覚に近いのです。
愛着関係が安定している子どもほど、やがて安心して親から離れ、自分の世界を広げていきます。
つまり、“ママと一緒じゃないと嫌!”は、自立への第一歩のサインでもあるのです。
声かけ例
- 「ママのことが大好きなんだね」
- 「ママがいないとさみしい気持ちなんだね」
否定せず、その気持ちを受け止めることが安心の土台になります。
第2章:なぜ「一緒じゃないと嫌!」が強く出るのか
① 不安や緊張が高まっている
新しい環境、初めての人、予定の変化など——
小さな子どもにとって、日常は“予測できないこと”の連続です。
そんな中で、“ママ”は自分を守ってくれる安心の象徴。
不安が高まるほど、「ママと一緒にいたい」という気持ちが強くなります。
声かけ例
- 「はじめての場所、ドキドキするね。ママがそばにいるよ」
- 「知らない人がたくさんでびっくりしたね」
不安を言葉にして代弁することで、子どもは安心を取り戻します。
② 「見通し」が持ちにくい
「ママはどこに行くの?」「いつ戻るの?」がわからないと、子どもの不安は倍増します。
まだ“時間”や“順序”の概念が未発達なため、「いなくなった=もう帰ってこない」と感じてしまうのです。
声かけ例
- 「ママはお買い物に行ってくるね。おやつのあとに帰ってくるよ」
- 「トイレに行くだけだよ。終わったらすぐ戻るね」
“いつ戻るか”を伝えることが、心の安心につながります。
③ 感覚が敏感で安心を求めやすい
音・光・においなどの刺激に敏感な子どもは、環境の変化を強く感じ取ります。
そのため、「ママの声」「ママのにおい」「ママのぬくもり」に包まれることで安心します。
対応の工夫
- ママのハンカチや匂いのついたぬいぐるみを持たせる
- お守り代わりに“安心グッズ”を作る
声かけ例
- 「ママのハンカチ、ポケットに入れておこうね」
- 「これがあると、ママがそばにいる気持ちになるね」
第3章:「離れられない」子への関わり方
① 「離れる練習」ではなく、「安心を貯める時間」を増やす
無理に離すよりも、まずは“ママがいるときの安心体験”を積み重ねることが大切です。
安心が十分にたまると、子どもは自然と「離れてみようかな」と思えるようになります。
声かけ例
- 「ママがここにいるから大丈夫だよ」
- 「見ててね」ではなく「見守ってるよ」のスタンスで関わる
子どもが安心できる環境で“ひとりでできた”体験を重ねると、少しずつ自信が育っていきます。
② 離れる前に「予告」をする
いきなり姿が見えなくなると、子どもは「ママが消えた」と感じ、強い不安を覚えます。
離れる前に短い言葉で予告することで、見通しが持てるようになります。
声かけ例
- 「ママは今から洗濯してくるね。終わったら戻るよ」
- 「ママはお料理してるけど、声は届くからね」
“いなくなる”ことより、“戻ってくる”ことを意識させるのがポイントです。
③ 「離れる練習」を遊びの中で取り入れる
遊びの中で“離れても戻ってくる”体験を積むと、安心感が育ちます。
おすすめの遊び
- いないいないばあ
- かくれんぼ(すぐに見つかる距離で)
- 「行ってきまーす」「おかえり」のごっこ遊び
声かけ例
- 「ママ隠れたけど、ちゃんといるよ〜」
- 「おかえり!ママ、待ってたよ!」
“離れる→再会する”経験を繰り返すことで、「いなくなっても戻ってくる」と理解できるようになります。
第4章:「一緒がいい」という気持ちを尊重しながら自立を促す
① 「ママがいなくても大丈夫」より、「ママがいなくても安心」
多くの保護者が目指しがちなのは「ママがいなくても平気な子」。
でも、発達心理学的には、「ママがいなくても安心できる子」を目指すほうが自然です。
安心を感じている子ほど、外の世界に興味を持ち、自分から挑戦していく力が育ちます。
声かけ例
- 「ママはここにいるから、やってみようか」
- 「離れても、ママはちゃんと見てるよ」
② “自立”は「自分でやりたい」気持ちから生まれる
「ママと一緒じゃないと嫌!」という子も、
“ママと一緒にやりたい”を繰り返す中で、“自分でやりたい”に変わっていきます。
そのためには、“一緒にやる時間”が必要です。
声かけ例
- 「一緒にやってみようか。次は〇〇ちゃんひとりでできるかな?」
- 「ママがそばで応援してるね」
安心の中で少しずつ距離を取ることが、自立への第一歩です。
第5章:親の気持ちもケアする
① 「ずっと一緒はつらい」という気持ちも自然
子どもが「ママと一緒じゃないと嫌!」と言うと、うれしさと同時に、
「少しでも離れたい」「疲れた」と感じる瞬間もあるでしょう。
それは、悪いことではありません。
むしろ、親子の距離を上手にとりながら育てていくためには、
保護者自身の心の余白が欠かせません。
声かけ(自分への言葉)
- 「ママもがんばってる」
- 「今日は少し休んでもいい日」
保護者が安心していると、子どもも安心します。
親の安定が、子どもの心の安定につながります。
② 周囲にサポートを頼む
「ママがいい!」の気持ちが強いときでも、
信頼できる大人(パパ・祖父母・先生など)が一貫した関わりをしてくれると、
子どもは“他の人にも安心できる”体験を重ねられます。
声かけ例(引き継ぎ時)
- 「ママは今からお出かけするけど、〇〇先生がいっしょに遊んでくれるよ」
- 「ママがいない間、先生と一緒におままごとしてみようね」
親の信頼が、子どもの安心へと伝わります。
第6章:相談を検討してもいいサイン
- 離れるたびに強いパニックを起こす
- 生活全般に強い不安が見られる
- 他者への信頼形成が極端に難しい
- 家族以外との関わりを強く拒む
このような場合は、発達支援センターや療育機関などで相談してみましょう。
臨床心理士・作業療法士などの専門職が、愛着や情動調整の観点から支援してくれます。
最後に:「一緒にいたい」は、自立へのスタートライン
“なんでもママと一緒じゃないと嫌!”という気持ちは、
自立を拒んでいるのではなく、安心を求めているだけです。
安心の基盤がしっかりできた子ほど、
やがて「行ってみよう」「やってみよう」と世界に向かっていきます。
- 離れる前に「必ず戻る」と伝える
- 「離れる練習」より「安心を貯める時間」を大切にする
- “ママがいなくても安心できる”経験を少しずつ積む
この積み重ねが、心のブレーキとアクセルをバランスよく育てます。
今日も「ママがいい!」と泣くその瞬間、
子どもの心は、“信じられる存在がいる”という最大の安心に包まれています。
それは、将来どんな場面でも自分を支える“心の安全基地”になっていくのです。