“絵本を最後まで聞けない”〜集中が続かない子への読み聞かせの工夫〜

絵本の時間が続かなくて困るとき
「最初の数ページで立ち歩いてしまう」
「めくることばかりに夢中で話を聞いてくれない」
「“もういい!”と途中でやめてしまう」
子育ての中で「読み聞かせをしたいのに最後まで聞けない」という悩みを抱える保護者は少なくありません。絵本は言葉や想像力を育てる大切な時間ですが、子どもによっては集中が続かずに苦労することがあります。
けれども、絵本を最後まで聞けないことは「落ち着きがない」「学びが遅れている」ということではなく、発達の段階や特性による自然な姿であることも多いのです。ここでは、絵本を最後まで聞けない理由と、家庭でできる工夫、具体的な声かけの方法を解説します。
第1章:なぜ絵本を最後まで聞けないのか?
言葉の理解が追いつかない
ストーリーが複雑だと、子どもは途中で意味が分からなくなり、集中が切れてしまいます。
興味が移りやすい
幼児期は注意の持続が短く、興味が別の刺激に移るとそちらに引っ張られてしまいます。
見る力・聞く力のバランス
絵に注目すると話が入らなかったり、話に集中すると絵を見逃したりと、同時処理が難しい場合があります。
感覚特性の影響
ADHDの子は注意が途切れやすく、ASDの子はストーリーよりも細部(絵の一部分など)にこだわってしまうことがあります。
第2章:絵本を最後まで聞けないのは自然な発達段階
「集中が続かないからダメ」ということではありません。
子どもの集中力は少しずつ伸びていくもので、年齢が上がるにつれて絵本を聞ける時間も自然と増えていきます。
大切なのは「最後まで聞けたかどうか」ではなく「絵本を楽しいと感じたかどうか」です。
第3章:家庭でできる工夫
① ページ数の少ない絵本から始める
まずは短く、分かりやすい絵本を選ぶことが成功体験につながります。
声かけ例
- 「今日はこの小さな絵本を読んでみよう」
- 「短いお話だからすぐに終わるよ」
② 興味のあるテーマを選ぶ
子どもが好きな動物や乗り物、食べ物が出てくる絵本は集中しやすいです。
声かけ例
- 「○○の好きな車が出てくるよ」
- 「次のページに大きな恐竜がいるんだ」
③ 一緒にページをめくる
「聞くだけ」では退屈になりやすいので、子どもに役割を持たせましょう。
声かけ例
- 「次のページをめくってくれる?」
- 「どんな絵が出てくるか一緒に見てみよう」
④ 質問を交えて読む
物語の途中で問いかけることで、能動的に関わることができます。
声かけ例
- 「この動物は誰かな?」
- 「次はどうなると思う?」
⑤ 読む時間を短く区切る
一度に全部読むのではなく、数ページずつに分けて読むのも効果的です。
声かけ例
- 「今日はここまでにしようね」
- 「続きは明日のお楽しみ」
第4章:絵本を楽しむ雰囲気づくり
リラックスできる環境
静かな場所で、膝に座らせて読むと安心感があります。
声かけ例
- 「ママのおひざで一緒に読もう」
- 「ここでゆっくり見ようね」
親の声の工夫
抑揚をつけたり声を変えたりすると、物語の世界に引き込まれやすくなります。
声かけ例
- 「おおきな声で“ガオー!”」
- 「小さな声で“しーっ”だよ」
読み終えたあとに褒める
最後まで聞けなくても「絵本を開いた」こと自体を肯定しましょう。
声かけ例
- 「今日はここまで聞けたね、すごいよ」
- 「一緒に見られてうれしかったよ」
第5章:園や学校との連携
園でも絵本の読み聞かせは日常的に行われます。先生と共有しておくと、子どもの様子を一緒に支援できます。
伝えておきたいこと
- 短い絵本だと集中できること
- ページをめくるなどの役割があると参加しやすいこと
- 質問ややりとりがあると楽しみやすいこと
第6章:絵本以外のアプローチ
絵本が苦手でも、言葉や想像力を育てる方法はたくさんあります。
- 歌や手遊びでリズムを楽しむ
- 絵カードで物の名前を覚える
- ごっこ遊びでストーリーを体験する
大切なのは「言葉の世界を楽しむ」こと。絵本にこだわらなくても、他の方法で育つ力があります。
第7章:相談を検討するサイン
- 絵本だけでなく会話も長く続かない
- 集団活動に集中できず生活に支障がある
- ことばの理解や発達に大きな遅れがある
こうした場合は、発達相談や療育センターで専門的な支援を受けると安心です。
最後に:大切なのは「最後まで聞くこと」ではなく「楽しむこと」
「絵本を最後まで聞けない」という姿は、子どもの発達段階や興味のあり方を表しているだけです。
- 短い絵本や好きなテーマから始める
- ページをめくる役割を持たせる
- 質問を交えながら読む
- 短い時間で区切って読む
- 終わったあとにしっかり褒める
こうした工夫を重ねていけば、子どもは少しずつ「絵本って楽しい」と感じられるようになります。
絵本は子どもと親が心を通わせる大切な時間です。最後まで聞けなくても、そのひとときが楽しい思い出になることが一番の価値なのです。